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菫 「あり得ない」
辰美 「動機もありませんし」
菫 「そんなはずはない」
辰美 「もちろん、遺書も何にもありません」
菫 「そんなはずは……」
辰美 「ですが、密室なんですよ」
亜紀 「すべて内側から鍵のかかった部屋で、彼はみずからをアヤめました」
菫 「違う」
亜紀 「窓にもドアにも、鍵がかかっていたのに?」
菫 「あり得ない」
亜紀 「それとも、もう一度あらためて、依頼すべきなのでしょうか」
菫 「えっ」
亜紀 「彼をアヤめた犯人を探してください、と」
菫 「わたしは……」
亜紀 「とうとう、お会いできませんでしたね」
菫 「えっ」
亜紀 「あなたの助手」
菫 「用事で出ていたのです」
亜紀 「それはどんな用事ですか」
菫 「……」
亜紀 「それはどんな……」
辰美 「けっこう骨が折れたけど」
亜紀 「うん」
辰美 「わかっていたんじゃないの?」
亜紀 「そうかな」
辰美 「こうなることは、最初から」
亜紀 「そうかもね」
亜紀 「私はこれで失礼します。ありがとうございました」
菫 「……違う」
亜紀 「え?」
菫 「違う、違う、違う! カレはあなただ!」
亜紀 「彼はもう……」
菫 「そうじゃない。カレは実在しない。カレはあなただ。あなたのもう一つの人格だ。だから」
亜紀 「だから?」
菫 「だから……」
辰美 「用事を頼んだんですよね」
亜紀 「もう一人の自分に」
菫・亜紀・辰美 (歌う)
菫・亜紀・辰美 「ええ、犯人は私です」(不敵な笑みを残して、幕)




