第五話
……最悪の考えが思い浮かんでしまった。
もし、あの森の魔物を使っているならパーティー全滅も十分考えられる。
私が考え至った事は、この場に居る全員が一度は考えた否定してきた事だろう。けど、私は目を逸らすことはできない。妹として、どうなったのかを確認したい。だから私は…
「明日、サウスエンドまで行ってきます。」
「「「「「なっ!?」」」」」
「どんな結果だろうが、私は受け入れます。ただ、きちんと確認しておきたいんです」
「「「「「「…」」」」」「それでは、皆さん、ありがとうございました」
一礼してギルドを出ようとすると、後ろから声がかかった。
「わかった。俺等もついてくぜ」
「えっ!あの、でも」
戸惑う私を無視して一人、また一人と声をあげる。結局、総勢十五人で向かうことになった。
翌朝。町の南門に集まった十五人の冒険者。
ここからサウスエンドまでは3日。ランクDの私一人だと、もっとかかるだろうが、ここに居るのはランクC〜Bのベテランばかり。途中、襲ってきた魔物も鎧袖一触。三日目の早朝に問題なくサウスエンドまで着いた。
サウスエンドとは文字通り南の果て。ここまでは人が暮らせると言う目印であり、ここから先は人が立ち入る事は出来ないと言う境界線でもある。町は高い防壁に囲まれ、住んでいるのは5割が王国軍の辺境部隊、後は犯罪を犯し、サウスエンドで農業従事を言い渡された受刑者だ。
魔物が攻めて来たときは、この町で時間を稼ぐ為、一般人は住んでいない。
門番にギルドカードを見せ、事情を話す。すると、兄たちと思われる冒険者が、ここから西の方で戦闘するかもしれないと報告があったそうだ。
私達は礼を言い、直ぐさま西にむかった。
迷いの森に近いので単独行動は控え、五人ずつ三つのパーティーに分かれて、正午に集合となり捜索を始めた。
私達が捜した範囲には特に何も無く、正午になったので集合地点に戻る。
集合地点近くでもう一つのパーティーに会ったが、その顔を見るかぎり収穫はないようだ。
集合地点に着き残る一つのパーティーを待ちながら、情報交換をしていると、最後のパーティーが戻って来た。
だが、様子がおかしい。何か困惑しているような…
「たぶん、見つけたぞ!」「本当ですか!?」
「あぁ、最近戦闘した跡が残っていた」
「それで!?兄は!?」
「落ち着け。先ずは、その場所まで案内してくれ」
「あぁ、こっちだ!」
案内された場所は、異様な光景だった。
今まで、ずっと草原だったのに、目の前には草が焼け、土が掘り起こされ、時間が経ち黒ずんだ血の跡。
「ひでぇな。ここまで大規模の戦闘は滅多にねぇぞ」「………」
「取り敢えず、何かないか探すぞ」
「……はい」
胃が重い
声が出なかった。
こんな戦闘跡初めて見た。覚悟はしていたが、これじゃあ兄はもう……
戦闘跡を捜してみるが、特に何もなかった。両親の為にも、何か見つけたかったのだが……
そんな気落ちしている私の周りでは、この戦場跡の違和感に気付き始めた人たちが顔を険しくしていた。
そして、その中の一人が、ついに口に出した。
「おい。こりゃ、おかしいぞ」
「何がですか?」
私にはわからなかった。
いつもなら、気付いただろう違和感。
むしろ、気付かない方がおかしい。
それは…
「…………死体が無い」
読んでくださり、ありがとうございます。
ミラの兄の名前を出すタイミングを逃したままです。
次話には捕まえたいと思っております。