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第四話

翌日、朝食を終えた私は母に挨拶をして父とギルドに向かった。父は出勤、私は兄の情報を得るためだ。


ギルドのロビーで待っていると、父が兄の情報を持ってきてくれた。兄が依頼を受けたのは王都の南に5日ほどにあるテルミアの町。

依頼内容は『魔剣マニュデットの討伐または封印。ランクB。期限は半年』だった。

ランクBの平均依頼期限は3ヶ月なので、かなり長い。これは、依頼が特殊なせいだろう。この魔剣は能力がわかっているうえ、両親が依頼を受けてから二十年近く経つのに、未だに依頼がはいる。

これは、非常にやっかいな特性があるからだ。

その特性とは、【逃走】である。魔剣が身の危険を感じたら、直ぐ様逃げるのだ。しかも、逃げた後は森や土の中、墓地などに隠れ、しばらく活動しない。元が魔剣と死体なので睡眠や食事を必要としない。そして、騒ぎか完全に収まり人々が忘れ始めた頃を見計らって行動を開始するのだ。一度危険を感じたら完全に、逃げに徹する。大量の手下の死体を足止めに回し、本体は逃げる。母は無理に本体を追いかけようとし、その隙をつかれた。


だから、この魔剣を倒すには逃げ道を完全に潰すしかないのだが……

王国軍が過去に二回ほど物量作戦で挑んだ事があった。

一度目は、二千人で包囲したが兵士が魔剣に切られ敵になり包囲網が崩れて逃げられた。

二度目は、実力者千人で包囲したが、その時、魔剣が操っていたのは魔法使い。見事、転移魔法で逃げれた。

過去の例からわかるように、非常に厄介なのだ。だから逃げられて半年が経ったら当分現れないだろうと考え依頼終了となり、ギルドに報告するのだが……兄は報告に来ていない。

さらに、兄はパーティーで依頼を受けているが、パーティーメンバー6人、誰も帰ってきていない。


私は父に礼を言い、明日の朝、テルミアに向かい兄を探す旨を伝えた。父は静かに、「わかった」とだけ言った。

家に帰り母にも言うと、心配そうにしながらも、許してくれた。午後は旅の準備をし、私の好物ばかりの夕食を終えベッドに入る。

昨日とは違い、今日はすぐに眠りにつく事ができた。




翌朝、両親に「必ず兄を見つけて帰って来る」と言うと、父は何も言わずに頷き私を撫で、母は「必ず帰って来なさい」と抱きしめて言った。しばし両親の温もりを味わい、私は家を出た。


ここからテルミアまでは1週間かかる。願わくは、それまでに兄が連絡をくれればいいのだが。






テルミアには問題なく着いた。途中、補給に寄った村で行商人に会い、護衛をする代わりに馬車の隅に乗せてもらえたのは行幸だった。


商人のおじさんに礼を言い別れ、ギルドに向かう。

ギルドの扉を開けると、その音に反応して中に居た人達が一斉に私を見た。驚いて固まってしまった私を確認すると、ため息をついてそれぞれの作業を再開した。

私はなんとか、気を取り直して受け付けに向かい、ギルドカードを出して、兄の情報を求めた。受付嬢はカードを確認し用件を聞くと、目を見開き、大声をあげた。

その声に再び注目を浴びてしまったが、受付嬢がロビー全体に聞こえるよう大声で私が兄を探している事をと言うと、ロビーに居た冒険者が全員集まって来た。皆が口々に言う情報をまとめると、次のようになる。


一つ、兄はこの町を拠点としていた。


一つ、ここに居るのは兄の知り合いばかり。


一つ、皆が兄と連絡が途絶えて心配している。


一つ、兄はここから更に3日ほど南に離れた場所に向かった。


一つ、兄はその場所に誰も近づかないよう言った。



以上だ。


…知りたかった情報は直ぐに集まった。


余りに早く情報が入った事に、拍子抜けしながらも、情報を分析する。

この町で兄が皆に慕われているのはわかった。妹としても喜ばしい。

後、ここから南に3日と言う事はサウスエンドの手前、迷いの森に大分近い。あまり町の近くで戦わないだろうから、町を避けての西か東。

しかし、兄が近づかないように言ったのは何故か。

何か罠を仕掛けたのか、

無駄に被害を出さない為か、



…魔剣が迷いの森の魔物の死体を操っている場合を考えてか。






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