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第三話


〜Sideミラ〜



私の両親は元冒険者だった。寡黙な父と明るい母の2人だけのパーティーで、そこそこ名前も売れていたが、依頼の最中、母が大怪我を負い引退。

父は他のパーティーからの勧誘もあったらしいが、母以外とパーティーを組む気はないと、そのまま引退。ギルドに就職し、冒険者時代の知識と経験を活かして新米冒険者の育成をする傍ら、母の看病に心血をそそいだ。母の怪我が治ったのは一年後。その間、父は不満一つ言わず看病を続け、その姿に母が惚れるのも無理はない。私も、そんな事されたら惚れる自信がある。ともあれ、母の行動は早かった。友人知人に根回し、完治祝いで父を酔わせ美味しく頂く、プロポーズ、翌日には結婚。父には考える暇を与えなかったそうだ。

私が母からこの話を聞いた時、母の隣で父が遠い目をしながら

「あの時の母さんは、竜種並みのプレッシャーだった」

と言っていたが、結婚して長いのに、未だに2人っきりになると甘い雰囲気になるので、初めから父も母のことを少なからず思っていたのだろう。



2人が結婚して一年後、兄が産まれ、その三年後に私が産まれた。母が言うには、兄は父に似て寡黙だったが、私が泣くと、すぐに傍に寄り宥めていたらしい。

私はそんな兄が好きで、いつも兄と一緒にいた。兄が寝れば私も眠り、本を読めば、私も読み。剣を習い始めれば、私も習った。兄が十五歳で冒険者になり家を出た時は、絶対私も十五歳で冒険者になっると密かに誓った。


兄が旅立ってからの時間は、ひどく長く感じた。何をしても物足りなく感じ、剣の腕も伸び悩んでいた。たまに兄から手紙が来るものの、寡黙な兄は手紙でも寡黙らしく、簡素な内容だった。


そんな、三年間を過ごし冒険者になった時、ようやく兄に追い付いたと思った。

まずは新米冒険者として町の近くで活動していたが、その時、私が伸び悩んでいた理由がわかった。

私は兄を競争相手に選んでいたのだ。周りに歳の近い子どもが居ないなか、一番近くにいた兄と対等でいたかったのだ。冒険者になり、同じ新米冒険者と競うなか、それを自覚した私は、今まで伸び悩んでいた分を取り戻すかのように実力を付けていった。


ランクもFからDになり、新米として扱われることもなくなった頃、一度家に顔を見せに帰った。

笑顔で迎えてくれた両親だったが、少し顔に陰りがあった。

久し振りに母の料理を食べ、近況報告をするなか、兄から手紙が来てないことを知った。

決して筆まめとは言えない兄だが、最後に来た手紙が手紙だけに両親も心配していた。


最後に手紙がきたのは半年前。

内容は、母が大怪我を負った依頼と同じ依頼を受けたと言うことのみ。

両親のが心配するのも当然だ。実際に戦った2人だからこそ相手の強さを知っているのだ。


両親にどんな依頼か聞くと、私は二つの衝撃を受けた。

一つは依頼のランクがBだと言うこと。それは、即ち兄はすでにBランクになっているということ。また、差が開いた事がショックだった。

もう一つは、相手が【魔剣】だということ。魔剣とは負の感情の結晶。正確な製法は失われているが、激しい怒りや恨み等を抱いて死んだ人間や亜人の遺体を材料に使うと言われている。その力は凄まじく、さまざまな能力が備わっている。切った相手の体力や魔力を奪う。怪我が治らない。死体を操る。さらには、即死効果があったり…

両親が戦った時は、肉が腐り落ちた死体が魔剣を持っていて、魔物や動物、果ては冒険者と見られる死体を操っていたそうだ。



兄の事はギルドに勤めている父にも情報が入っていないらしい。私は言い様の無い不安を感じたが、兄なら大丈夫と自分に言い聞かせベッドに入った。

久しぶりに寝た布団は母が干してくれたのか、暖かくいい香りだったが、なかなか眠りにつけなかった。

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