食べる
僕は今日野菜のクズを食べた。
僕は今日パンくずを食べた。
僕は今日残飯を食べた。
僕は今日仲間の死体を食べた。
悲しくはない。涙はでない。
何かを食べることで今を生きている実感が得られるから。
その日を必死に生きているという感覚が得られるから。
僕は悲しくない。
僕は明日も明後日も何かを食べるだろう。
決して美味しいとは言えないが、何かを食べるだろう。
ある日、目を覚ますといつもと違うところにいた。
とっても暖かい。
これは夢なのかな。
そう思っていると、ヒトがどこかから出てきた。
僕はヒトは嫌いだ。弱いものをいじめるから。
僕も僕の仲間のこいつらにいじめられたから。
僕に触ろうとしてきたから噛み付いてやった。
そのうちヒトは僕の目の前に何か真っ赤な塊を置いて出ていった。
お腹が空いてたからそれを食べた。美味しかった。
久しぶりに食べた気がする。
今日もヒトがやってきた。
触ろうとはしなかったけど、また僕の目の前に赤い塊を置いていった。
今日も食べた。やっぱり美味しかった。
それからどのくらい時間が経ったかわからない。
毎日毎日僕は赤い塊を食べた。
優しくしたらもっとくれるのではないかと思った日もあり実際やってみたこともあった。
逃げようとした日もあった。でも沢山壁があって毎回逃げ切る前に捕まった。
ある日、ヒトは僕のところにこなくなった。
いつもなら塊をくれる時間なのに一向に来る気配がない。
お腹がすいてきたので、ヒトが居そうなところへ歩いていった。
しばらく歩くと、部屋にヒトがちらっと見えたので入った。
僕の目にヒトの姿が映った。座ったまま全く動かないヒトの姿が。
部屋を見渡すと真っ赤な缶があった。空だった。
なんて書いてあるのか僕にはわからなかったが、いつもの塊が入ってたものだと思った。
僕はヒトに近づき、噛み付いた。
痛がってない。
触った。
冷たい。
そのヒトが僕の仲間の様になったと気づくまで時間はかからなかった。
お腹が空いた。
どうしようもなくお腹がすいた。
僕はその日初めて人を食べた。
突然涙がでてきた。
なんでだろう。いつもだったら泣かないのに。悲しくないのに。
心の中は懺悔の気持ちでいっぱいだった。
人はとっても美味しかった。
あのあと僕は部屋から出た。
そこはあの時の光景。
いつも野菜やパンクズを食べあさってた時の光景だった。
僕は今日も何かを食べる。
明日も明後日も何かを食べる。
今を必死で生きるために。




