第一章 灼熱の天王星 2
『それは?』
続きを催促するように目線を合わせるが、なかなか言い出してくれない。
それどころか、意味の分からないクイズを出してきた。
「さあて、ではここでもんだ~い。ウラヌス君の依頼において悪い癖はなんでしょうか?」
「俺の悪い癖!?」
「そ。今まで何回か私と依頼に行ったことあるだろ?」
ナオミの言うとおり、ウラヌスは過去に数回彼女と依頼に赴いている。
だが、特といった悪癖は無かったと思うのだが…。
「…なんだよ」
「俺は何となく分かるぞ」
「はーい、フェンリル君どーぞ」
「とにかく寝起きが悪い」
「任務関係ねぇよ!?ナンだよ、これでもいつもより三時間早く起きたんだけど!?」
「…その話についてはあとでじーっくり聞かせてもらうよ、ウラヌス君♪」
「し、しまったぁあぁあああぁッ!!」
「何自分で墓穴掘ってんだよ…」
哀れな未来を確定されてしまった少年に対し、その災厄の種の姉は淡々と告げる。
「正解は、単独行動グセがついてることだ。離れるなといっても聞かないし…。その調子だといつかヘマして死ぬぞ、お前」
「う……」
彼女の言うことはすべて事実だった。今までの依頼において、ウラヌスは集団行動を実行したことはない。どころかどんどん一人で突き進んでいた。一人、という言葉には誤りがあるのだが。
「そこで、だ。お前にも集団で行動するってことを覚えてもらうために…アルテミス~」
「はあ~い」
ナオミが声をかけると、いつの間にか消えていたアルテミスが手に書類を持って出てきた。
何かのリストのようだが…。
「これで合ってるかなぁ、ナオミぃ」
「お、合ってる合ってる。ありがとさん」
ナオミはそれを受け取ると、ウラヌスとフェンリルの前に置いた。
「なんだ、これ」
フェンリルが訝しげに問うと、アルテミスがいつもの口調で答える。
「これねぇ、今度の依頼で一緒に組む人たちのリストなんだよぉ」
「は?」
ウラヌスが間の抜けた声を出すが、ナオミは気にせずに続けた。
「今度の依頼はパーティを組むんだよ。どいつもこいつもお前と同じ15歳だ」
「えっと…それってフェンリル以外にも人が来るってこと?」
「愚問だな、当然だろ」
「いや、そんなのまだはやいんじゃ…。なぁ、フェンリル?」
「いいんじゃないか?お前のクセを治すにはちょうどいい」
「な…そんなぁ」
「そう嫌がるな、全員名前の通ったやつばかりだし、きっといい影響を受けれる」
リストには彼とフェンリル以外に三人の顔と名前が載っていた。
アルテミスが一人ずつ説明してくれた。
「この女の子はユーリ・フォリアっていって、魔法使いなんだよぉ。そして、こっちの日焼けした男の子はヴァイ・ラウズ。機関銃使いの騎士だってさぁ。最後にこの黒髪の女の子はライト・テレジア。彼女くらいは……さすがに知ってるよねぇ」
「くう…。クセのあるやつばかりじゃないか」
これから組む人間たちの情報を知って思わず頭を抱えてしまう。
特に、最後に紹介された少女、ライト・テレジアについてはなおさらだ。彼女はこの国で、異形として通っているのだから。
「ま、もう決まったことだし。今更やめられないぞ。素直に行って来いよ」
「……はい」
こうして、ウラヌスとフェンリルは初のパーティ制の依頼へと赴くのであった。