第7話 相談という名の確認
その夜、女友達にメッセージを送った。
内容は短かった。
「ちょっと、話したい」
すぐに返事が来る。
「今から?」
電話越しに聞く声は、いつもと変わらない。
それが、少しだけ救いだった。
最初は、どうでもいい話をした。
授業のこと、バイトのこと、最近見たドラマ。
本題に入るまでの時間が、必要だった。
「この前言ってたカフェの人なんだけど」
ようやく、口にする。
女友達は何も言わず、続きを待っている。
その沈黙が、逆に逃げ場をなくす。
「最近、ちょっと距離を取られてる気がして」
言いながら、変だと思う。
距離も何も、もともと何もなかったはずなのに。
「それで?」
促される。
「……なんか、さみしかった」
その言葉が口から出た瞬間、
自分でも驚いた。
思っていた以上に、はっきりした感情だった。
電話の向こうで、小さく息を吸う音がした。
「それ、もう答え出てない?」
女友達は、ためらいなく言った。
「出てない」
即座に否定する。
「恋とかじゃないし。年上だし。店員さんだし」
「うん、条件は全部そうだね」
女友達は淡々としている。
「でも、条件じゃなくて、気持ちの話してるんだけど」
言い返そうとして、言葉が見つからない。
「ねえ」
少しだけ声のトーンが変わる。
「何も起きてないのに、傷ついてるのってさ」
胸が、ぎゅっとなる。
「それ、もう十分だと思うよ」
電話を切ったあと、しばらく動けなかった。
部屋の天井を見つめながら、考える。
何も起きていない。
それは事実だ。
でも、何も起きていないからこそ、
この気持ちをどう扱えばいいのかわからない。
眠る前、スマホを置いて目を閉じる。
あのカフェの静けさと、
彼の視線を思い出す。
明日、行くかどうか。
その答えを、
まだ出せずにいた。




