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叶わぬ恋〜女子大生に恋したおじさんに、恋の神さまのちょっとしたいたずら〜  作者: ふぁい(phi)


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第25話 語られた理由

カフェを出ると、夕方の風が思ったより冷たかった。


並んで歩く。

それだけのことなのに、

不思議と足取りが揃わない。


少し先の公園まで来て、立ち止まる。

ベンチに腰を下ろすのは、自然な流れだった。


彼は、少し間を空けて座った。

近すぎず、遠すぎない距離。


「どこまで、知りましたか」

彼のほうから聞いてきた。


「肩書きの一部だけです」

正直に答える。

「詳しいことは、何も」


彼は、うなずいた。

逃げる様子はない。


「隠していたつもりは、ありません」

そう前置きしてから、続ける。

「でも、話す必要もないと思っていました」


「どうして?」


即座に返す。

今日は、曖昧に終わらせるつもりはなかった。


「ここでは」

一瞬、言葉を切る。

「肩書きがあると、余計なものが混ざるからです」


余計なもの。

その言い方が、少しだけ苦しかった。


「ここでは」

彼は続ける。

「ただ、コーヒーを出す人間でいたかった」


それは、嘘じゃないとわかった。

あの落ち着きも、距離感も、

全部、その延長線にある。


「それに」

少し間を置いてから、続ける。

「期限があるとわかっている場所で、説明するのは、誠実じゃない」


胸が、少しだけ締めつけられる。


「じゃあ」

問いかける。

「今も、誠実じゃないと思ってますか」


彼は、すぐに答えなかった。

視線を、遠くに向ける。


「……正直に言えば」

低い声。

「今は、線を越えないために、話していません」


線。

はっきりした言葉だった。


「越えたら、戻れないからです」


その言葉で、全部が腑に落ちた。

優しさ。

安全な位置。

責任。


全部、同時に存在していた。


「ありがとう」

しばらくして、そう言った。


彼が、驚いた顔をする。


「理由を話してくれたから」

続ける。

「それだけで、十分です」


嘘ではなかった。

でも、本当でもなかった。


ベンチを立ち、歩き出す。

カフェとは反対方向。


並んで歩きながら、

言葉にしなかった問いが、

胸の奥に残る。


――それでも、どうして、わたしだったんですか。


それだけは、

まだ、聞けなかった。

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