第23話 優しさの形
女友達とは、夜に電話をした。
声を聞いた瞬間、
なぜか、少しだけ安心してしまった。
話す相手を、ずっと探していた気がする。
「で?」
一通り聞いたあと、女友達は短く言った。
「どうだった?」
カウンターでの会話。
期間が決まっていること。
これ以上は話せないと言われたこと。
全部、順番に話した。
電話の向こうで、少し沈黙があった。
考えているのが、わかる。
「それさ」
女友達が、慎重に言葉を選ぶ。
「優しさだと思う?」
「……思ってた」
正直に答える。
「でも」
続けて言われる。
「それ、優しさ“だけ”かな」
胸の奥が、少しざわつく。
「だって」
女友達は言う。
「あんたに選ばせてないじゃん」
言葉が、まっすぐ刺さる。
「話さないって決めたのは、向こうでしょ」
淡々と続く。
「全部わかった上で、距離を保つかどうか、決めるのは本来あんたでしょ」
何も言えなかった。
「それってさ」
少し声が低くなる。
「傷つけないため、って言いながら、実は一番安全な位置にいるだけじゃない?」
安全。
その言葉が、頭に残る。
「嫌な言い方するけど」
女友達は続ける。
「責任を取らない優しさって、あるからね」
電話を切ったあと、
しばらく、動けなかった。
怒りたいわけじゃない。
責めたいわけでもない。
でも、
何も知らされないまま、
納得する役を引き受けるのは、
違う気がしてきた。
あのときの「すみません」。
あれは、本当にわたしのためだったのか。
考えれば考えるほど、
胸の奥に、別の感情が混ざってくる。
寂しさでも、悲しさでもない。
少しだけ、悔しい。
知りたい。
それだけじゃない。
ちゃんと、向き合ってほしい。
そう思ってしまった自分に、
もう、嘘はつけなかった。




