第13話 違和感の正体
女友達とは、就活の情報交換という名目で会った。
大学近くのファミレス。
騒がしい場所を選んだのは、深く考えなくていいと思ったからだ。
エントリーシートの話。
説明会の話。
どこも似たようなことを言っている、という愚痴。
一通り話して、ドリンクバーの前で立ち止まったとき、
ふと思い出したように口を開いた。
「そういえばさ」
なるべく軽い調子で。
「例のカフェの人、就活の話したら、ちょっと変で」
女友達は、すぐに反応した。
「変って?」
「知ってそうなのに、知らないふりする感じ」
自分でも曖昧だと思いながら続ける。
「名前出しても、反応薄くて」
「ふーん」
ストローをくるくる回しながら、考える素振り。
「それさ」
顔を上げて言う。
「本当に“ただの店員さん”なの?」
胸が、少しだけ跳ねる。
「どういう意味?」
「だって」
女友達は肩をすくめた。
「興味なかったら、そもそも聞かないでしょ。就活とか」
言われてみれば、そうだった。
「しかも」
追い打ちをかけるように続ける。
「知ってる感じで、引いてるの、いちばん怪しい」
怪しい、という言葉に、
少しだけ抵抗を覚える。
「怪しいってほどじゃ……」
そう言いかけて、止まる。
違和感。
噛み合わなさ。
言葉を選ぶ沈黙。
全部、つながる気がした。
「まあ、でも」
女友達は急に軽い口調になる。
「正体が何であれ、あんたが気にしてるのは事実でしょ」
否定できなかった。
「気をつけなよ」
前と同じ言葉。
でも、今回は意味が違う。
「期待しすぎないように、ね」
帰り道、一人で歩きながら考える。
正体を知りたいわけじゃない。
詮索したいわけでもない。
ただ、
知らないままでいるのが、
少しだけ怖くなってきただけだ。
あのカフェで、
次に会ったとき、
どんな顔で話せばいいんだろう。
そんなことを考えている時点で、
もう、ただの客ではいられない気がしていた。




