表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

入道雲

作者: 鴨鷹カトラ

晴天の夏空には、入道雲が在った。


それはただ大きく、風を吞み込み、流れに任せ空を漂っていた。


空をじっと眺める。


すると、空に浮かぶ雄大なその姿に見惚れ、感嘆するだろう。


商店街。喧騒や歓声。時折子供の泣き声。


人。喜びや悲しみ。そして怒り。


波。寄せて返す。時偶荒れる。


風。吹いて消える。


入道雲は漂って、それを大きく吸い込む。


風に運ばれ、波を眺め、人に眺められ、睨まれ。


感情の対象の理想形。


話はしないものの、その全てを受け止める姿は、人の心を。


入道雲。何処かに流れてゆく。


何処かに。


人の感情を推進力に変え、何処かに流れていく。


何処に行くのだろうか。


時偶考える。


入道雲が姿形を変えながら、動き、消えることもある。


感情も、その『材質』を変えながら、『動く』。そのまま忘れ去ることだってある。


あの日見た朝の入道雲。

あの日の昼に燦燦と輝く太陽に照らされる入道雲。

あの日の夕方に見た橙に染まる入道雲。


あの人と見た空高い入道雲。

あの子と見た夕暮れの入道雲。


入道雲は、記憶になる。


入道雲を見る。


すると、西瓜を食む記憶、自転車を一生懸命漕いだ記憶。

さらに、忘れかけていた人との記憶。何十年の前の記憶さえ蘇ってくるかもしれない。


記憶。それは思い出すことで固定化される。


入道雲は記憶の媒体となり、人々の目に焼き付けられる。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ