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異世界勇者より地元の重装片手剣の方が強いに決まってるよね! ~巻き戻り脳筋兵士は堅実に最強戦力を育てる~  作者: 無職無能の素人


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第42話 大切なお話があります。

 宿の一室。カリオナ王女と対面するのはフードを深く被った男。


「……姫……さま?」


 男の声が震えた。薄暗い空間の中、カリオナは何の感情も見せず、そこに立っていた。ただ静かに、男の目を見返す。


「久しいな、ベリアス。よく生きていた」


 その言葉を聞いた瞬間、男は膝をつき、顔を伏せた。

 声を殺して肩を震わせる。男泣きの姿があった。


「すまないが、今は素早く動く必要がある。お前には、町を通る獣人達を引き込んでもらいたい。王女はここにいるんだ、もはや奴隷に甘んじる必要はない」


「……姫様のご命令とあらば」


 俺が言っても駄目か。カリオナに視線を向ける。


「侯爵家との交渉までに奴隷たちを集め、騒ぎを起こさせたい。弱気を見せていたら、全ての奴隷解放など不可能だ」


「ガルドさんの思いのままに。ベリアス、頼んだぞ」


「ははぁっ!」


 男が片膝をついたまま両拳を床に突いた。知らない作法だが洗練された動きだ。王女の知り合いの様子だし、これは当たりを引いたな。


 カリオナの顔を覗き込むが、まるで仮面をつけたように無表情だった。


          ◇◆◇◆◇


 王女との面会の後、一旦子供たちのところに戻った。

 彼らの世話は元獣人奴隷ベリアスに任せる。


「侯爵家の使者との交渉で獣人の生活する場を手に入れるつもりだ。それまではお前が、世話をしてくれ。もっとも、獣人では店が使えないだろう。昼と晩に必要な物は俺が運ぶ」


「ザラディアに戻るのではないのか」


「戻らない。それは絶対だ。詳しくは落ち着いてから王女に聞くんだな。王女は国の事よりもお前たちの開放を第一に考えている。それに従えないなら自分だけ国に帰れ」


「ふん、俺は王女に従うのみ。他の奴隷たちを集めればいいんだな?」


「そうだ、片っ端から集めろ。集まったら騒ぎを起こせ。ただし今だけだ。王女の立場が明確になった後は、部下として上品にしろ。奴隷は合法的に譲渡させる」


「分かった」


 こっちはこれでいいな。俺の方は侯爵家との交渉に備えて情報を整理しておこう。


「おい!肉はどうなるんだよ!」


「あん?仕方ないな。お前の演技はカスだったが、今晩は全員分の肉を持ってきてやる。楽しみにしておけ」


「やった!いや、カスってどういうことだ!」

「お肉―!お肉ー!」


「やかましい。これからは大人の獣人がお前達を守ってくれる。食い物は持ってくるから、自分たちで調理する準備をしておけ」


 長く話して情が移るとよくない。こいつらの保護者は獣人であり、トップはカリオナであるべき。俺はそれに力を貸し、カリオナを通じて信頼を集めればいい。


          ◇◆◇◆◇


 子供たちと離れて宿に戻った。


 カリオナは相変わらず、時間があればフォルクと打ち合いをしているようだ。

 身体能力の圧倒的な差だけじゃなく、実戦経験とスキルの効果を積み上げたフォルクの動きは実に見事。

 派手な動きをしても無駄がなく、静かな動きで先を取る。100回組打ちをすれば、100回ともフォルクが勝つだろう。

 しかし残念な事に、フォルクには指導力が無いようだ。


「あのーそうするとこっちはこう、こうするから、あんまり意味なくて。こっちからにゅっとやる方がましかも?」


「なるほど」


「いや分かってないだろ」


 案外似たもの同士なのかも知れない。


「カリオナ。あのベリアスという男は何者なんだ?」


「私の直接の部下、元将校です。こちらの国で言えば、中隊規模の部隊を任された将と言ったところでしょうか。わが祖国にはその様な区分ではありませんでしたが、羊族の部隊を率いておりました」


「ほう、それは本当に当たりだったな。働きに期待しよう。元兵士がもっと集まればいいんだがな」


「ご存知ではなかったのですか?この国で奴隷にされているものは、すべて元捕虜。すなわち、全員兵士です」


「なに?では民間人は?」


「停戦の折、彼らは我が身と引き換えに解き放たれました。民を護るは王家の責務。それを果たしたまでのことです」


 なるほど、それが強い忠誠心を維持している理由か。

 そしてあの子供たちは、民間人の解放時に取り残されたわけだ。


「しばらくは一目会いたいと言う奴が増えるだろう。相手してやってくれ」


「心得ております」


 獣人の子供を利用するためにボロ倉庫で寝起きさせているのは黙っておこう。




 それから三日。ベリアスは精力的に動いてくれた。

 元奴隷達は30人を越え、自分たちで食料店を襲って食料を確保している。立派な盗賊団だ。


 町人の不満も高まっているだろう。だが取り押さえたくても侯爵領内は治安維持すら出来ない状態だ。どうにも出来まい


 そしてついに待っていた知らせが届いた。


 宿屋の受付に使者が現れる。手には侯爵の紋章が押された書状。


「明日の午後、町の庁舎にて、侯爵の使者カルロ様との会合を求むとのことです」


 いよいよだ。面倒をかけやがって。こちらの要求を最大限飲ませてやる。


          ◇◆◇◆◇


 庁舎の応接室は、陽の差さない石造りの部屋だった。無駄に広い机、磨かれた椅子、壁際に控える兵士たち。圧をかけたいのが見え見えだ。


 俺は椅子に腰を下ろした。遠慮するつもりはない。同席しているカリオナも同様だ。


「まずはお礼を。混乱を最小限にとどめていただき、感謝いたします」


 やけに丁寧な言葉が逆に耳につく。どうせ腹の内は決まってる。


「王女殿下、あなたの立場として――」


「私は交渉する立場にありません。すべてガルド様にお任せしております」


 静かだが鋭い声だった。カルロが言葉を失うのが見て取れた。


「そちらの要求は?」


 俺が切り出すと、カルロは軽く頷いて文書を広げた。


「侯爵閣下のお考えは明快です。王女殿下の身柄については追及いたしません。獣人奴隷の解放についても、準備が整い次第、順次お引き渡ししましょう。ただし――」


 本題はここからだ。


「――あなた方はそれぞれ爵位を受けていただく。これに伴い、今後は侯爵領の配下として正式に籍をおいていただくことになる。ガルド殿、あなたも指揮下に入っていただく。ザラディアへの移動は禁止です。そして今行われている行為――すなわち、奴隷を強引に集めているのは、明確に犯罪行為。すぐに引き渡していただきたい。」


 爵位を寄越すのは思い切ったな。だが他は想像通りだ。


「それではこちらの要求も言っておこう」


 俺は椅子の背に身体を預け、静かに息を吐いた。


「王女はどの国にも属さない。未開拓地を開拓して、そこを獣人の自治領とする」


 言葉を区切るたび、周囲の兵士たちの視線が鋭くなる。


「侯爵家とは協力関係にありたい。我々は武力を提供しよう。そちらが望めば労働力も派遣する。報酬は金と獣人奴隷の引き渡しだ。獣人奴隷たちが手に負えなくなってきているんだろう?しかし直ぐには手放せないほど依存している。我々がそれを受け入れてやろう。王女が声明を出せば、引き渡しまで奴隷達は大人しくなる」


 カルロは黙って俺を見ていた。笑顔が消えている。


「引き換えに、王女はザラディアと決別する。正式に宣言しよう。更に、もしもザラディアが侵攻してきた場合には、侯爵領に付くことも宣言しよう」


 そして、最後に。


「奴隷集めているとは何のことだ?我々は宿で時間を潰していただけだ。きっとどこかで王女が自由になっている事を知ったんだろう。俺達とは関係無い、勝手に起こったことだ。きっとこれからも広がっていくんだろうな」


 カルロは黙って考え込んだ。感情が読み取れないのは流石だな。


 ザラディアと決別するなんて、そんな宣言は人間にとってそれほど重要ではない。必要に応じて裏切るだけだ。

 だが、獣人にとってはそうではない。彼らの忠誠の拠り所が国・王家であるなら、それを断つことは大きな意味を持つ。カリオナ個人への忠誠であるなら、侯爵側についてザラディアと対立するのもあり得る。


 問題は信用だな。奴隷の引き渡しが済むまでは奴隷が仮の人質にはなるが弱い。全てを引き渡すには何か大きな一手が必要だろう。


 やがてカルロが呟く。


「……わかりました。ただし最後に一つ、一番重要な条件です。これを受けていただけるなら、そちらの望むままで構いません」


「言ってみろ」


「自治領の代表。王女殿下ではなく――あなた、ガルド殿が就くこと。それが侯爵の意向です」


 何を言い出すかと思えば。そんなことをして獣人達がついてくるわけが――


「最初から、そのつもりでしたわ。その条件をお受けいたします」


 ………は?


          ◇◆◇◆◇


 会合が終わり、俺達は庁舎を出た。


 結果は拍子抜けするほど譲歩された物だった。向こうの思惑が見えない。不気味だ、何か企んでいるのだろうか。


 広間を出ると、外はもう日が傾いていた。夕陽が石畳を赤く染めていて、町のざわめきも少し遠く感じる。


 カリオナが俺の隣に立つ。ふと、顔を見ると、彼女は空を見上げていた。


「……あれでよかったのか?」


 俺が尋ねると、少しだけ首を傾げた。


「あなたの思う通りに、と言ったでしょう?」


「なぜ俺がトップになるんだ。あんたの民だろう」


「これからはあなたの民です。あなたが彼らを見捨てることはないでしょう」


 なんだそれは。侯爵も、こいつも、何か理由を隠している気がする。


「行くぞ。仕事は山積みだ」


「はい。勇者様」


 後ろで小さく笑う声がした。


 商会長から聞いたのか?勢いで言ってしまったが、自分で勇者を名乗るなんて恥ずかしいわ。



 とにかく山場は越えた。王女のザラディアとの決別、奴隷の段階的解放、自治領の設立などの宣言についても日程が決められた。


 疲れた。今日は宿で蜂蜜のプディングでも作ってウィーと食べよう。













 ――――――――――

「ふぅ、この章も後1話なのじゃ」

「19時35分、食事前。ギリギリですね博士」

「晩飯を食ってから校正じゃぞ!」

「もう一つの方は1話10分でかけてるのに」

「次は軽くて雑な章にして楽するぞい!」

 ステータス君が一度も載ってない件。

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