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異世界勇者より地元の重装片手剣の方が強いに決まってるよね! ~巻き戻り脳筋兵士は堅実に最強戦力を育てる~  作者: 無職無能の素人


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第27話 クソガキ

 翌日。今日は朝からオークの巣を探して討伐するつもりだった――のだが。


「なあガルド、お前……装備、無いじゃん」

 フォルクが眉をひそめて言う。確かに、俺は今日も普段着に荷物入れだけという軽装だった。小さいナイフならあるぞ。

「オークくらい素手で問題ない」

「緊急時ならともかく、自ら素手で赴くとは……正気の沙汰とは思えん」


 ……なんだ? 昨日は何も言ってなかったくせに。


「それじゃあ、お姉さんが代わりに参加してあげよう!ガルドくんはウィーちゃんをよろしくね!」

「え?いや、しかし」

「ガルド、いてくれると嬉しいな……」

 ウィーがぽつりとつぶやく。

「昨日、頑張ってレバーたくさん食べたから……朝もレバーだったし……」

「関係ないだろ!?」


 結局、なし崩し的に置いていかれることになった。

 別にウィーの面倒を見るのが嫌なわけじゃない。だが――


(戦闘しなきゃ、レベルアップの検証ができないじゃないか)


 一方で、俺が関わらずに他の誰かが戦ってもレベルアップするかどうかの実験にはなる。

 そう考え直して、俺は静かに溜め息をついた。



「じゃ、行ってくる。オークくらい楽勝だよ」

 片手を挙げて、軽く笑いながら馬車を操るフォルク。

 その背中を少しばかり恨みがましい目で見送ってしまった。


 ……こいつら、昨日のうちに俺抜きで根回ししてたんじゃないか?

 誰だ。誰が仕組んだ。


 ともあれ、今日はまるっと一日空いてしまった。

 さて、何をするか――。


 剣でも振っておきたいところだが、そもそも武器が無い。

 この辺りの村では武具店などないし、ウィーを放ってふらふらするわけにもいかない。


 ……料理でもするか。


 最近すっかり、料理が趣味みたいになってしまった。

 スキルの影響か、食材を見ているだけで次々と調理法が思い浮かぶ。

 昨日のレバー尽くしはちょっと不評だったようだし、今日は何か美味いものを作ってやろう。


 まずは、調理料や食材を入れているストレージの整理からだ。

 このストレージ、俺の“知力+魔力”の合計値がその容量に関係している。

 レベルアップに伴って少しずつ拡張されてきたが……俺の場合、魔力の伸びが鈍い。

 もともと異様に高かったのは、おそらく勇者の力を奪ったせいだろう。

 現在の数値は1069mm。

 それを割り当てて、高さ200mm × 奥行き200mm × 幅669mmの、小さな棚くらいの空間にしてある。

 容量こそ限られているが、中の物は腐らないし、どこでも即座に取り出せる。

 主に調味料入れと財布代わりに使っていて、実に便利な代物だ。

 しっかり整理してスペースを作った。余分に出来たらここに入れておく予定だ。


「ウィー。何か食べたいものはあるか。栄養を付けるためのレバーも必要だが、甘いものとか食べたくないか?」


 俺が声をかけると、ウィーはぱっと顔を明るくした。


「いいの?じゃあ……ガルドが作ってくれた、あのプルプルした卵のやつが食べたいな」

「あれか。気に入ってくれて嬉しい。任せとけ」


 ミルクと卵を混ぜた物に、蜂蜜で甘さをつけて蒸し固めたやつだ。

 ウィーが気に入ってくれたなら、作り置きしてストレージに詰めておこう。今は何でも食べるだけで偉いのだ。

 村の商店と牧場を周って、たっぷりと素材を仕入れた。結局村の中をふらついてしまったが仕方ない。ウィーだけじゃなく、あいつらもたまには甘いものを食いたいだろう。

 特にアルシア。俺がウィーの食事を作っていると、何も言わずに圧をかけてくる事があるんだよな。


 買い物を終え、昼食も簡単に済ませた後、銀貨を1枚渡して厨房の端を借りた。今日はガッツリ作るぞ。


 鍋に卵を割り入れ、しっかり混ぜる。そこにミルクを注ぎ、ざっくりと合わせた後、一度濾して滑らかに。

 蜂蜜をたっぷり、香りづけに砕いた香草をほんのひとつまみ、さらに溶かしバターを少量。

 後はこれを器に入れて蒸すだけだ。


 蒸し始めてすぐ、甘い香りが辺りを包む。きっと上の部屋まで香りが届いてるだろうな。ふふふっ、楽しみにしておけよ。


 蒸している間に水を汲んできて、汚れた物を洗い流して布で拭いていく。そうしていると、食堂の方から大きな声が聞こえてきた。


「すげぇイイ匂いするじゃん!食べたい!ちょっとくらい出せよ!」

「だから!ありゃあ客が作ってるって言ってんだろ!売りもんじゃねぇ!」

「はぁ!?だったらそいつに言うわ、どけ」


 揉めてるみたいだな。聞こえる内容からするとズバリこれが問題の種なのでは?

 だが知らない相手に分けてやる理由はない。


「おい、何か揉めているようだがこれは――」

「おぉアンタが作ってんのか!分けてくれよ、な?全部奪ったりしないからさ」


 そこにいたのは、黒い外套に不釣り合いな装飾をあしらい、傲慢な態度を取るクソガキ。無理やり気取ったポーズまでとっているのが痛々しい。


「……遺跡で会ったな。こんなところでふらふらしているとは」

「あぁ?えっ、お前あの時のやつか!?なんで生きてんだ!?」


 顔色を変え、引きつった声を上げるガキ。見た目通り頭が弱そうだ。

 こっちは今、武器もなければウィーの護衛もいない。ここで敵対しても面倒だ。まずは話を聞き出せないかと、柔らかく切り出してみる。


「そんなことより腹が減っているんだろう?俺のスペシャルスイーツがもうすぐ完成なんだ。食ってみろ、飛ぶぞ」


「な、なんだよ。えらく自信があるみたいじゃん。……まぁいいや、お前なんか敵じゃない。食ってからどうするか決めるわ」


「そうか。じゃあ少し待っていろ」


 とりあえずいきなり戦闘というのは避けられたようだ。

 魔石の魔物を出されても負ける気はしないが、どれだけ出せるかわからない。こんな村の中で大量に出されたら守り切る事は難しい。

 隙を見てこいつを仕留める事も考えておこう。情報よりも安全だ。

 決意を固めておく。やるとなったら躊躇いなく最速で殺す。



 料理もそろそろいいだろう。蒸し上がった料理を火から外して冷ましておく。一番小さい器を食堂に運んだ。

 上手く情報を引き出すにはテクニックが必要だ。兵士時代には色々な所に応援に行ったが、取り調べなんて眺めた事しか無い。それでもなんとかするんだ。


「待たせたな。本当は冷まして食べる物だが、このままでも柔らかくて美味いぞ」

「おぉ!すげぇうまそうじゃん!」


 まるっきりガキじゃねぇか。


「う、うめぇ!これどこかで売ってんのか!?」


「知らんな、俺の考えた料理だ。俺も美味いと思うんだがあまり評判がよくなくてな。お前は色々美味いものを知っていそうだ」


「いやいや!これすげぇうめぇぞ!大したもんだって!俺は任務で色んなとこ行かされるんだけどさ、こんなのは初めてだわ」


 任務?やはり組織として動いているんだな。人手不足なのか、それともこのガキが信頼されているのか。……その割に馬鹿っぽいが。


「そうなのか。羽振りも良さそうだし、悠々と旅が出来るのはいいよな。俺なんか依頼をこなした報酬でその日暮らしだからよ、羨ましいわ」


「はぁ?違う違う!行けだのやれだの言われてばっか!何のためにかも教えてくれねぇし、ボスが何考えてるかも分かんねぇ!金だけは出るけどよ!」


「へぇ、どこも大変なんだな。そう言えば前に会った時、本当なら連れて行くって言ってたよな。俺も金もらって色々旅してみてぇな。南の方とか行ってみたいんだよ」


「はんっ、甘い甘い、候補はいっぱいいんだよ。その中から選ばれた俺みたいなのが力をもらえる。お前なんかじゃ無理だね」


「いやいや、俺はお前の出した魔物も倒してるんだぜ?そんなの滅多にいないんだから、目をつけといて損はさせないぞ」


「あぁ!?候補なんて召喚獣を倒せるやつなら誰でもいいんだよ!もう何人も見つけてるわ!舐めたこと言ってるとぶっ殺すぞ!」


「そうなのか。じゃあさ、俺も候補ってことにしてくれよ。仲間も夜になったら戻って来るしさ」


「いやだね。誰がお前なんか連れて行くか。それよりお代わり持ってこいよ」


「仕方ねぇな、まぁ喜んでもらえるならよかったよ」


 新しい皿を出すと、ガキは目を輝かせて飛びついた。

 ……やっぱり馬鹿だ。でも助かった。

 組織、召喚獣、選別、力を与える……、力を与えるとは?


「そういや遺跡の魔物、最悪だったよな。強いくせに魔石しか残らねぇ。戦い損だったわ」


「ふんっ!お前らはそうだろうな。だけど俺達は違うんだ、戦う事に意味がある」


 おいおい、それってもしかして……


 これ以上は深入りしない方がいい。

 後は相手に合わせて、上機嫌のまま帰らせる。もっと貰って帰るといい出した時は戦いになるかと思ったが、あっちもあまり目立ちたくないようで助かった。


「次会ったらまた作れよ!」


 友達かよ。


          ◇◆◇◆◇


「どうだ?今回もうまく出来たと思うんだが」


「うん、すごく美味しい。ありがとう、ガルド。私のために……」


「おやすい御用だ。よく食べて偉いぞ。夜には肝料理があるからな、そっちもちゃんと食べるんだぞ?」


「う、うん…がんばる」


 どうにも肝は苦手なようだ。美味いのにな。


「と、ところでガルド。みんなは、まだ戻らないのかな?」


「ん?まだしばらく掛かるだろう。フォルクならオークの痕跡くらいすぐに見つけるだろうが、あそこまで往復するだけでもそれなりにかかる」


「そうなんだ……」


 なんだ?ウィーの顔が赤い。少し汗ばんでいないか?


「おい、どうした。体調が悪いのか?我慢するな、言え」


「あの…その……えっと……」


「どうした?遠慮なんてするな。何かあったのか?」


「う、うぅ……、お腹が……」


「腹?腹痛か!火の通りが甘かったか!?」


「そ、そうじゃなくて……その……お、おしっこ……」


「!!」


「うぅっ……あんなこと言うんじゃなかった………」


「よし!大丈夫だ!俺だって負傷兵の世話くらいしたことがある!男ばっかりだったが…同じようなものだ!気にするな!!」


「ガルド……」


「イクゾー!」




 その後、ぎりぎりで最近覚えた「清浄」を思い出し、事なきを得た。











 ――――――――――

「えーと、こちらが「清浄」スキルで、不浄なものを・・・」

「うーん。「清浄」じゃ余りに平凡じゃない?」

「はい?」

「ピュリフェクス・オブ・サンクトゥスでどう?」

「ですね」

「ですねじゃねんだよカスが!くらえい!飛翔脳天撃!」

 やっぱり技名は日本語だなと思った方は高評価・ch登録をお願いします。

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