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信じていないのに

作者: 一飼 安美

 学校の隅の空き部屋。授業にも使われず、物置にもならず、必要なときに使うだけで鍵もかけられていない。電球が切れたって誰も替えず、散らかり放題の汚れ放題、天井なんて隅っこが欠けて隙間ができていた。その隙間は、覗いてはいけない、らしい。隙間からは妖怪がこっちを見ていて、こちらに気がついたら舌を伸ばしておでこを舐められる。だから何?って思っていたけど、その妖怪は正確には妖怪じゃないらしい。悪魔におでこをなめられると、地獄に落ちる。それが正確な話だと、卒業間際になって初めて知った。妖怪も悪魔も全然正確な話じゃないと思うけど、それが本当……?らしい。だから、空き部屋の天井の隙間を、覗いてはいけない、らしい。


「私、見にいったよ!」


 嬉しそうに話す変わり者の同級生は、こんなのをなんでもやってみる子だった。ホントかなあ、なんて中学に入ってすぐにやってみたらしい。ホントなわけないじゃん。雨漏りの滴でも落ちてきたら、まだまともな方の話だったんだなって思う。もちろん何も見ているわけはなくて、なーんにもなかった!と頭悪そうに言っていた。私はそこまでバカじゃないから、バカらしくてしなかった。進学して、就職して、家庭も持たずに働いていると、大学の友人に呼び出された。学生時代に使っていた研究室の模様替えに居合わせた友人は、手が足りないと知り合いに声をかけて回っているらしい。偶然近くにいたから、仕方なく足を運んだ。


 研究室の棚を動かしてぜえぜえ言う学生たちに混じって、壁を拭いていた。天井を見ると、隙間。塞いだ方がいいな、と言っていた友人をよそに、目をそらす。あんまりいい気がしない。ああいうの、バカらしいし。友人は不思議そうだったから、中学時代に聞いた噂話を教えた。怖いんじゃないわよ、バカバカしくてくだらない。だから見たくないの。そう教えたのに、友人は私にバカみたいなことを聞いてきた。


「風邪を引いて、額に梅干しを貼ったことはあるか?」


 ……あるわけないじゃない、市販の風邪薬を飲んで寝ていればそのうち治る。でもこの友人は、やったことがあるらしい。曲がりなりにも大学にいたのに、なんてバカなことをするのか。でも友人は、ふざける様子もない。雷がなったら、へそを隠さないと取られる。トイレで上を見たら、悪魔が覗いているから見上げてはいけない。そんなことを本気で言うヤツが、たくさんいる。少しだけ考えてみるといい、何か見えるかもしれないぜ。そう言って天井の隙間を見上げていた。何もないに決まってる、あの子だって言っていた。なんにもなかったって。私は……見る必要ない。たくさん仕事があって、全部しなきゃいけないのに、見てる暇なんてないもの。

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