#09 幸せの渦中
朝、大和が大の字で寝ている。そのままゆっくりベッドから下ろす。「ふご」「やっぱり俺、床で寝てたっしょ」いや、ベッドから下ろしたなんて言えねー。今日はお互いの休みだ。俺は大卒からの山田川鉄道の駅員をやっている。なんでも、山田川駅に採用された。と言うことで、2人は毎朝同じ列車で同じ目的地まで行くのだ。
「ちょっとー俺の股間もみもみしないでよ」俺は大和の手をちょっとだけずらし、股間に平穏を取り戻した。俺は、起きて朝食を食べる。「朝の一服しよ」と大和が言う。「雨降ってんねー」タバコ吸うだけの空間はある。火消し皿で火を消して、部屋に戻る。今日はお互いの休みなのでモーニングティーとは言わず、モーニングコーヒーだ。お砂糖ひとさじ。大和はブラックのようだ。季節外れの大雨で、道路は混んでいる様子。山田川海浜鉄道は一部列車に遅れが出ているようだ。
俺は、額縁に、ジャンキーだった頃の大和と、家で紙を食べる画像がはまってる。その下には「もう絶対しない」と書かれている。梅雨空の毎日。石野川が規定雨量を超えたらしく、山田川海浜鉄道の一部区間が運転見合わせとテロップが流れる。そのほか、俺と大和で餅鍋温泉の足湯入ってる写真も飾った。毎月10日が恋愛記念日。毎月、幸せになれますように、と勝手に想像する日。
「ハルト、お腹すいた」あぁ、飯作るから待ってな。俺は昨日の残りカレーをご飯によそった。「2日目カレー」と言うレシピだ。テキトーに酒をみつくろって、俺と大和の分が注がれる。アルコール特有のツンとした匂いが鼻をさす。ちびちび飲んでモーニングタイムだ。休日の日はこれが最高。何考えてるのかなこの熊猫。「そうだ!」また突拍子のないことを。「写真館行って家族写真撮ろうよ」いや、あの額縁のままでいいだろって言ったら、「まあ、無駄な消費だね」とわかってくれた。相変わらずの雨。
お互いの休みの日は病院付き添いってことにして、毎週水曜日がお互いのんびりできる日だ。タバコの2本目を吸いに行く。「待って、」振り返ると抱かれた。「どしたの?」「そう言えば、転勤で離れ離れになっちゃう夢見た」多分ないと言い切れないが、大丈夫と言いった。「ちょっと寝るね」と大和が言い、ソファーで寝転んだ。大和の携帯が鳴ってる。電話元はいとこのようだ。いとこ兄と書かれている。一旦通話が切れ、また掛かってくる。それが3回続き、いい加減起こさなきゃと思い、大和の鼻を摘んだ。「もーハルト、酸欠になっちゃう」おい、電話がかかってるぞと言い携帯を渡した。「もしもし?カイト?ああ、今日は家にいる。なんだって?神殿駅で足止めくらってるから会いたいだと?ちょっと待ってね。」俺はいいよと言い、電話に戻る大和。「あー同居人もいーよって言ってるしおいで。」
やっぱり寝るんかい!親戚くんぞ!「やれやれ、もう一回起こさなきゃいけないのか。」もう一回鼻をつまむ「ねえ、起きてるから」あーそう?ごめんな。15分後。インターフォンが鳴った。「今行きまーす」と大和を外に連れ出した。「初めまして、いとこのカイトです。大和何オスと同棲してるんだよ、てっきり彼女だって思ったわ!」聞こえてる聞こえてる。玄関で立ち話してるより、部屋に連れ込んだ。「お邪魔しまーす」俺はテキトーなコップにコーヒーを注ぎ、砂糖と牛乳を一緒なお盆に乗せて机に持ってった。カイトさんコーヒーです。「ああ、ありがとう」「兄さんなんで来たんだよ」「来ちゃわりーか、みこと親父に切られたか心配してきたんだけど」大和といとこのカイトは背丈がとても似ているが、身振りで大体わかる。「兄さん、散歩でも行く?」「アホか、外は大雨だぞ」「そう言えばアカリとみずほは?」家で待ってるって言う。
俺はカイトさんがコーヒーを飲まさそうなので、残りのコーヒーを俺のコップについだ。こうやって大和が年上の人と話してるの久しぶりに見たな。あれは46億年前、いや、仕事中くらいだな。「あ、ハルトさん。コーヒーいただきますね」と言い、コーヒーを飲むカイトさん。手頃ないい写真が撮れそう。後ろからこっそり、自分のカメラでパシャ。俺のカメラはチェキだよ!ジーっ現象ができた。壁に貼っておこう。「カイトさんが遊びに来た」カイトさんはあれこれ大和を質問詰めする。ほら、アカリは彼女できたぞと言っている。俺の好きな人はもういるから。誰だよ。後ろでチェキ見ながらにっこりしてるハルト。えー!
カイトさんが振り向く。どうかうちの大和を大事にしてください、とのこと。そのあとは流れに乗ってカイトさんが帰っていった。「爆弾発言するなや、大和」
2人はタバコを吸いに外に出る。転落防止の窓の隙間から雨が降っている。外には車が渋滞している。2人はのんびりタバコを吸っている。幸せだな。「ああ俺も」
そのあとはソファーに座って昼寝だ毎週水曜日の定番だ。昼は食わず寝るってね。「あれ、大和、メチルフェニデート飲んだ?」その声は虚しく空へ消えた。鼻息が耳につく。俺も眠くなった。
ふと目を覚まし、時計を見る。16時半だ。大和の鼻をつまむ「もー言ってくれれば起きるってばー」言い訳しないで。2人は寝起きのルイボスティーを飲む。テレビを垂れ流し、俺は夕食を作る。「たまには大和が夕食作ってよー」大和は部屋に戻っている。寝直したんかな?チャーハンを炒めながら、時計を見る。まだ水曜日だ。オレンジ色の瞳は可愛いので目潰しする。そんなことしたら前見えなくなっちゃうよーとか聞こえそうだ。「ハルト!」後ろから抱かれた。身長的には俺の首あたりに大和のマズルだ。ちっちゃいね。「俺もハルトみたいにでかくなりたい」明日は仕事だ。部屋にテープでさっき撮った写真を張り付けた。部屋が大和で一杯になる。「チャーハンできたー?」ああ、お待たせ。「明日は前住んでた家の、荷物を引き受ける日だけど、どう?」「だめ。部屋にまだ覚せい剤あるでしょ。」そりゃーそうだけど、と大和が。スリップして今度こそ実刑判決になっちゃうのは俺として嫌。チャーハンを机の上に置き、一緒に食べる。「たぬたぬは、何の料理が好き?」え、この家に住んでから俺が飯作ってるんだけど。
19時「じゃータバコでも吸いに行くか」大和のちっちゃい体を追いかけて、外に出る。洗濯は洗濯機が脱水から乾燥させてくれる。空は漆黒。二人はタバコを吸い、ベランダから出た。お風呂の前に、部屋に設置したパソコンを二人で見る。ようつべを見る。「ゲームほしいね」二人は幸せな時間を過ごす。あくびを一つ。「じゃあ、お風呂入ろ」と、俺はマッパになり、大和と風呂に入る。またウィンナーの話ししてるし。とっとと全身あわあわになり、着替えて出る。「そろそろ寝よっか」今日は俺の部屋だ。まあ、その日のルールとして貸した部屋の人は壁沿いじゃなく、その隣だ。
「ん、」背中が冷たいので目が覚めた。寝相悪っ!。もふもふがベッドの上でスース―寝ている。朝四時半、まだ外は暗い。「やまと、起きろ」「やまちゃん」布団を押しのけ、びっくりしたように飛び起きる。「てっきりクラブの中かと思ちゃった」そっか。今度からやまちゃんで起こそう。もう言い分けつけられるのはかわいいが、手っ取り早いのはやまちゃんって呼ぶに限るな。「ハルトー」俺は朝の一服をしに、ベランダに行く。「ねー6時に起きて、それから仕事に行けばいーじゃん」お前が起きないからだろ。とりあえずコメが炊けたようなので、食べに移動する。「やまっち」「なんだそれ」知らないと思うが、高校ではやまっちって大和は呼ばれていた。
「じゃーいこっか」仕事場に行くために、快速山田川行きに乗車する。手をぎゅっとつないだ。いつか、俺がお前の事幸せにしてやるよ。どんなに情勢が、俺らの体を蝕むとしても。
仕事先に到着。ロッカーで服に着替える。「なんでお前ビンビンなんだよ」「しらん」俺はとっとと着替え、簡易食堂で毛並みを整える。引継ぎの時間まで待機だ。「そういえばハルトってなんで大和と一緒に通勤してるの?」こいつ、昔から持病持ちで、面倒を見てるんだ。言い訳が言えた。「え?」おい大和、そんな顔するな。ウソがばれちゃうじゃない。あ、大和、薬飲んだのに寝やがった。「大和とハルトってどんな関係?」こいつ、生まれたときに、親が病死して、仲良かった俺の家族に引き取られたんだ。
9時。むにっ「もーハルト、窒息しちゃうよ」それぞれ勤務先の朝礼を受けに移動した。俺は入社試験の時に全種別全駅を覚えていたので、フツーに試験を受かった。俺はスタッフオンリーの部屋で筋を受け取り、駅のホームに立った。
「温泉行きたいんだけど」特急券は持ってますか?えーっと奥の券売機で発売してますよ。
列車設定画面を見る。30分に一本の餅鍋号は、リッチな指定席は切符が閑散している。「あのー」車いすに乗った人が、来た。「引継ぎします」上田駅まで。「神殿接続の各駅停車でお願いします」
休憩。「ハルト。ご飯冷めちゃうよ」こちとら大和がかわいいから、仕事に熱中できなかったんだぞ。なにラウンジで尻尾振ってお客さんの世話してるんだよ。「あ、ラウンジ限定の、コンソメジュースだ」お昼ご飯とスープを飲む。昼間のひと時を窓のない部屋で過ごす。
引継ぎだ。「連絡事項なし。自動改札機の早期導入を求める」駅長と日勤の人たちはそれぞれ連絡事項を述べている。更衣室で、服に着替える。「ハルトー帰るよ」まって、ズボン履き替えてない。俺は、職員割引な自販機で、あたたかいコンソメスープを買って、定期乗車券で、ホームライナーに着席する。社員証を駅の券売機でかざすと、無料になるので、俺と大和が無料で獲得する。純正な1000系がホームにやってきた。「ふー」買ったコンソメスープを座席に座り、飲む。仕事終わりの日課だ。
神殿駅に到着。いまだに、定期券と切符は印刷される紙でできている。改札はラッシュの時以外、信用乗車だ。大きな駅では切符を拝見する人がいたり、餅鍋号は不正乗車を防ぐために、乗車したらすぐ、乗務、販売兼任者が切符の確認に来る。
定期券を駅員に見せて、「お疲れ様です」と、声掛けされ、系列のバスに乗車。山田川グループ共通乗車券のようだ。よーしついた。
「じゃー、俺が今日は夕食作る。カレーでいい?」ああ、お願い、俺は風呂入ってるから。「俺と入るんだよ。ダメ」全員ここで死ぬんだよ的なノリで言わないの。キッチンで大和の後姿を見ていたら眠くなってきた。
「んー!」「大和やめい、窒息しちゃうんだけど」俺だけ鼻つままれて、起きるのは許せないと言う。フツーなカレーが机に置いてある。「どお?」うまい。「やった!」俺は食器を片付け、布団に横になった」
ーーーハルトの事好き。
眠りに入った瞬間、俺の携帯が鳴る。電話相手は晴哉のようだ。「どしたー?」ああ、来月海開きだろ、懐かしの4人で海行こうぜ、とのこと。後ろに座ってる大和も行きたいと言っている。
時は海の日。たまたま四人は俺らの休みに合わせて、神殿駅で合流した。「お久しぶり」四人はそのまま、餅鍋号に乗り、山田川に向かった。海浜鉄道に乗換え、南港駅で降りる。海シャトルに乗り換えをする。海に来た。「わぁ」大和が口をこぼす。それぞれ海の家の着替えスペースで着替え、浮き輪を借りて海に出る。浮き輪をひっくり返したり、透明度が高い海の中を潜ったり。BBQなんてやったり、俺含め4人は楽しんだ。
5時を表す防災無線が流れた。それぞれ家に帰るために、海シャトルに乗り、山田川駅に向かった。4人は結構な料金を海に費やしたので帰りは快速で帰る。
キハ150+1080系の快速運用だ。夜も更けたので、列車は空いている。と言うことで、神殿で俺らは下車。
「楽しかったね」うん。「刑務所の中より自由で恋人と過ごせる時間が幸せ」恋人じゃなくて夫では?夫夫かな?ラーメンをすする。醤油ラーメンだ。「恋っておいしい味」なんだそれ。海でじゃりじゃりなのでお風呂に入り、体を蒸かす。「ねえ」なんだよ大和。「明日から仕事か―」
朝。大和を布団から突き落とす所から始まる。「ちょっと、落とさないで。」起きたようだ。朝四時を告げる置時計。オレンジ色の瞳が輝いている。じゃータバコ吸いに行こう。
「今日は休みだぞ。もうちょっと寝かせて」そういって昼まで寝てるだろ。俺は大和を起こし、朝食にする。大和をどんなように起こすか。水を目にたらすのはいいと思う。
テレビは特に面白い話はやってる。大和の携帯が鳴った。「えーそうなんですね、わかりました、出勤します」大和は勤務先の人が欠勤したから代りに来いと、せっかくの木曜日が台無しじゃん。
大和は部屋からよれよれのスーツを着、仕事に行ってくるねと言った。玄関まで行ってキスをした。「やべえ、ウィンナーかたくなちゃった」おいおい。二人はそれぞれ部屋と、仕事に向かった。
「洗濯干さないと」大和の服と俺の服を干し、ベランダに干す。今日は晴天だ。俺の部屋に戻り、ビールを飲む。
8時間後。「ただいまー」俺は部屋で爆睡を決め込んでいる。「あ、ハルト」寝ている俺の腕に暖かい特急餅鍋号のラウンジ限定のスープをほっぺにあてられる「こら!フツーに起こせないのか!」その顔をするハルトも好きだよと、俺に言われた。「ごめん、今日はワクドナルドの飯だけどいい?」と聞いてきたので了承した。袋の中から、チーズバーガーがたくさん出てきた。「ダブルチーズバーガーにしようと思ったんだけどなぁ、ハルトそんなにがっつかないと思ってさ。」俺はコンソメスープを飲みながらワクドナルドを食す。「ねー、ほっぺにケチャップついてるよ」ふと、気付くと確かに、ほっぺについていた。
シャワーの栓をひねる。掃除をする。「掃除終わったら風呂だぞ」俺が洗剤をぶちまけてるところに大和が現れる。「えっちしよ」ふと後ろを見ると、やまとがぐるぐるしている。「なんか決めたろ」と俺が言う。「なーにも」腕を見て新しい傷がないか確認。そのまま抱かれた。
「ねー、もうちょっとましな起こし方ないの?」大和が勝手にエッチした後体力を使い果たしたのか、風呂釜で寝た。「おぼれるよ」
ーーーこんな日常が続いてくれますように
ーーーきっと続きます、と願掛けをした。
「ハールト、大好き!」