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#07 結局薬に吞まれた

天井を見上げる。俺のふっさふさなゴワゴワした手でコンクリート作りの天井を見る。「ヤマトクン」what? 「ユウショクノジカン」外国からやってきたらしい、白いたぬきはそう言っている。


ことの発端は一年前。会員制クラブにまさかのガサ入れが入った。たまたまいつメンの2人がいなかったのが良かった。俺は近くの警察署に運ばれて、そのまま監察室に通され、裁判を受けさせられた。事実を認め、今度こそ断薬を決意。何回も、晴哉にやめろって言われたのを思い出し、言うこと守っていればこんなことにはならなかったのに。「ダイジョウブ?」そうだ俺は今刑務所なんだ。


ユウショクノジカンと言った43番はカタコトな公用語を話し、一緒に出発する。いろんな人がご飯を食べる。俺もご飯を食べた。「シャワーの時間だ」全員監視官の前でマッパになり、シャワーを浴びる。短い時間じゃあ、ササっとしか体を洗えない。「大丈夫、ここを出れば全部笑い話になる」今頃みんなは何してるんだろ。


そのあとは離脱症状に対抗するために眠剤を飲む。眠剤を飲めば薬のことが忘れられる。


「大和」「やまちゃん」ふと、夢の中でみんなが泣いている。高校の先生、ろくに話さなかった高校の同級生。親戚のれされさ達。ごめんなさい。自分が悪いので懺悔は自分にしか言えない。


目が覚め、43番はうんちをしているようだ。変なの見たな。「大和、面会だ」と言われ、手錠をしたまま、面会室に来る。大体来るのはハル達だ。毎週本を持ってくる。鉄格子の中で精神が参らないのは彼らがきてくれるから。退所したら温泉連れてってね。と一人言ったが、絶対いけないのは確かだった。まずはクスリを辞めることから始めないと、みんなにまたやり玉に投げられちゃう。「オ、チョウショクノジカンダ」と43番は言う。


質素な食事が出て、ちょっとはやせた。50番お腹すいたか、もってこい、お代わりしてやる。おかわりは何度も頼める。最近決めようなんて思わなくなった。朝の薬を飲むと、部屋に戻った。 適当な考えをし、気を紛らわせる。


43番と会話する、俺はとジェスチャーで注射を刺す真似をした。すると43番はうなずいた。それとオーバーステイをしたらしく、この国の牢屋にいるみたいだ。そろそろ退所だってね。よかったじゃん。


刑務所附属病院の医師が見回りと診察に来た。「大和さん、調子はどう?」この牢屋で唯一とも言える本名で呼んでもらえるいい機会。今なら、みこ、いとこ、ハル達に会いたい。


「俺はー」と諸症状を伝え、薬が出た。定期的な採血をし、診察が終わった。


毎日昼ごはんが終わったとき、医師の診断が必要な人が社会奉仕をする時間だ。高速道路の草刈りだ。護送車に乗り海佐環状線に向かい、1キロな道を草刈り機で刈っていく。とても暑い。43番が「アツイネー」と言う。そりゃそうだろ。しろいたぬきは俺と一生懸命時間が過ぎるのを待ち通しにした


どれくらい時間がたったのかわからないまま、43番は帰国の手筈が整い、俺は独りになった。「ボコクデ、マタケイムショニハイル」と悲しげだ。初めて見る43番の私服姿は、なんか昔の俺のライブスペースに行くときの服装に似ている。「43番、手錠」と言われ、尻尾がさようならと言っている気がする。俺も見つからないように手を振った。


たぶん少しして、60番と言う、赤いドラゴンが投獄された。「初めてまして」「よろしくね48番」「実は俺大和っつーんだよ」「ヤマトネ??オレ、ノボル。」のぼるはどうして?「タイマスッテタダケ ヤマトハ、タイマスッタコトアル?」うなずいた。「お薬飲んでいる?」「アルヨ」といっている。「これから夜ごはんなんだけど、その後シャワ―あるよ」「オレ、ウロコブラシモッテナイ」借りれば?と聞く「マエニツカッテタ、ヤワラカイノガイイ」


「朝だ」「オハヨ」「そういえばノボル君ってどこ住んでるの?」「ハネダ」あー遠い国だね。俺は通りかかった監視官に俺のブラシ貸してと言った。48番ね。「オレ、トショシツイッテクル」いってらっしゃい。突然警報が鳴る。「あー誰か脱走したんだな、」俺は横になった。その後は何しよう。晴哉とハルトは月曜日来たし、暇だなぁ。


ノボル君が日本語辞書を持ってきた。「ニホンゴオシエテ」LSDで、「エルエスディ? タイマミタイナモン?」そー。腕を見せる「イタイノキライ」


またある時が過ぎた。「オレ、ライシュウタイショ」いいねー!俺はあと半年。夕食の時間は番号順だ。ある時そろってハンガーストライキが始まったが、俺は空腹に耐えられなかったのでみんなに凝視されてもなお食べた。「なんでおめー食ってるんだよ」え、ハンガーストライキなんて聞かされてないよ。「ゴハンノトキ、ナンデダレモ、タベナカッタンダロウ?」シャワーの時間だ。トリミングに行ってないのでもこもこの極みだ。「なんで俺の部屋にはニホンゴが下手な人たちが集まるんだろう。


「さよなら、ノボル君、元気でね」


それと入れ違いに40番の部屋に移された。「初めまして」「よかったー言葉通じるじゃん!」「俺大和で48番」「あれ?前のがさ入れの時居なかった奴だよな?」「なんかごめん」「あなたはどうしてここに?」「フツーに薬機法違反」ああ、そっか。「おめーはどうなんだよ」俺らは変なところでつながってしまった。いろんな好きな薬を言いあったりし、楽しい日が過ぎていった。「ここでたらイイとこ教えてやる」えー、確か「もしかして、薬に呑まれちゃった?」


電話使っていいの?「退所間際の人は何時間でも通話していいんだよ」と言われたのでかろうじて覚えている晴哉の電話に電話した「どちらさま?」「おれ!大和!」あー


そして、退所の流れになった。刑務所で過ごしたことを忘れないでねと、一ヶ月分の抗不安薬をもらった。ゲートの前で晴哉とハルトがバイクに乗って待っていた。俺が居ないうちに、、


神殿駅から特急餅鍋号に3人で乗車し、向きを変えて座る。「今日は退所祝いにホテル2泊3日だ。大和が背中に傷あるから前もって個室風呂を予約した」なんて暖かいんだ。刑務所の中にも外にもなかった優しさに包まれている「大和って大学入る?」いや、土木のおっさんの仕事が見つかったから、来週から職場見学だ。と伝えた。懐かしい海佐中央を越し、餅鍋温泉駅で下車する。今度はまともに周りを見る。「今度は物が美味しく食べれる」


部屋に付き、リュックを部屋に置き、お風呂に向かう。「おっふろー」「ねえ、俺寝てないよね?」なんで聞くの?って感じに見られた。「いや、前に風呂の中に金魚いて2人に釣ってもらったから」2人はしらん、という顔をした。「そう言えばけ、」「その話禁止」俺は今の暖かい世界が大好き。3年も鉄格子の中で過ごしてたから。「ふー。色んな意味で暖かい」


「薬は飲む物、呑まれるな」と誰かが言った気がする。風呂の中で寝てしまった。「ふご」やっぱり風呂の中で鼻を摘むハルトは変わってない。目を覚まし、風呂をちょっとだけ掃除して、シャワーを浴びて出る。コース料理だ。ここはどこにも負けを取らない明るい暖かい世界。親友と一緒。「大和、そんなにまずかったか?」いや、もう未練はないかな。


携帯は新しく契約しなきゃいけないし、新居の布団買わなきゃ。「そう言えば俺ら同棲してるんだ」とハルトが。俺は大和が来てくれればいいんだけどね。どう?と晴哉が言う。


コース料理を食べたあと、部屋に戻る。今日の主役は俺、大和。3人で酒を飲む。「もう俺たち大手を張ってお酒が飲める年齢なんだよなぁ」酔った。ちょっとしか飲んでないのに。「お酒無理になった。」鬣を解かす晴哉、グルーミングをするハルト。オレもー。


眠りにつく。「バンバンバン!開けてくれーママー!」「鎮静剤」「やめてー!!」「ヤマトクン、カゾクッテイル?」「信頼できる家族よりダチならいる」「トモダチ」「ここでたらイイとこ教えてやる」


ふと、昔刑務所であったことが夢に出てきた。2人は俺にとって優しい寝息を立てて寝ている。この日常、守らなければ。


朝、ハルトの鼻つまみから朝は始まった。「ねーねー、鼻摘まれなくても起きるよー」嘘だけど。朝食会場に進む。おいしーご飯しあわせー。ついつい泣いてしまった。「どしたん?」なんかしあわせすぎて。「変なの」3人はおやつを買いに街中を散歩する。ドン、誰かとぶつかった。「あ、やまちゃん」「くそババァじゃん」隣には腕組みしてるアルトさん。大和に注射まだやってん?と言われる。「いくよ大和、あんな大人相手にしちゃダメ」はぁはぁ言いながらホテルに走って戻ってきた。「たまにはいいかも、って言って変なことしないでよ、昔の思い出が戻ってきても」俺は今の心地よい生活が好き。


井草の匂いを感じるため、横になった。久しぶりに感じるものはしあわせだ。親友の体臭、石鹸の匂い、汗ばんだ服。


「大和、昼飯いくよ」昼飯は空が見れるテラス席だ。「学校でもよく太陽がさす場所座ってたねー」笑い合い、そんな毎日がいい。「てーだして」は?「はいよ」タバコだ。依存性があるけど注射よりはマシか。「いいの?」3本ライターと初めてのタバコのメビアースという名前のタバコだ。かっこいい。


「俺はこれ、」いろんなタバコあるんだ。ホテルの飲み放題を頼んだ。客席でタバコが吸える。「昔の記憶掘り返すけど、大麻って吸ったことある?」あるよ、すげーまずかったけど。タバコを吸いながらアルコールで煽る。昔より耐性は低くなったが、飲めるアルコールは、今はノンアルコールだけだ。と言うことで飲み放題はハルトと晴哉だけだ。


客室。「お風呂いこー」と俺がいう。「大和、お風呂は20時から」というので尻尾を垂らす。ベランダで外を見ながら煙を焚く。隣の部屋の人も煙を焚いているようだ。


灰皿がいっぱいになる。「じゃー何しよっか」「大和の刑務所思い出話」「いやだよ」灰皿を机の上から持ってくる。「もしかして前の家、、」いやなんでもない。契約が切れた携帯を見る。ここはどこにもない暖かい世界


タバコを吸ってたら客間の電話が鳴った。「警察?」「しもしも」夜ご飯だって。今日のコース料理は肉だ。「この肉何?」「日本酒の勝山剣二つ、オレンジジュース一つ」「大和お酒飲めないもんね」


「はーうまかった」空っぽになるたびに注がれていくからねえ。「ふー」晴哉が笑顔だ。酒飲んだ影響かな。


客間に戻る。「これから風呂」着替えを持ってきて、お風呂に向かう。漆黒の空。お風呂が心地よい。「寝るね」待て大和!と言われるが寝息の方が先だった。ん?なんかつめて!「わぁ」やっと起きたーと2人が言う


部屋に戻り、みんなそれぞれマッパになり、布団を抱くなり、かけるなりした。ハルト、フワフワに見える。どこからともなくいびき声がくる。眠剤と抗不安薬をを飲み眠りにつく。


晴哉のかけたアラームで3人は起きる。退出までごろごろ。俺は神殿市に行き、住所と新居を契約しにいく。付き添いに2人が来る。


はー新居。ついに誰にも邪魔されない部屋が手に入った。3人で寝具を買いに出発した。「やっぱり王道はこれじゃない?」背中痛くなるからダメ。じゃあ低反発、高そう。


「やまちゃん、元気?」


振り向いても晴哉とハルトしかいなかった。「どした大和?」晴哉が心配する。「クスリが抜けきらなかったとか」「いちいち煽らなくいい!」


「ちょっと先に帰るね」と俺がいう


「観察ターイム、いくぞハルト」200m後ろから俺を追いかける。コンビニに入ったようだ!「飲めやしないお酒をなんで買ってるんだろう」


「やっぱり薬に呑まれちゃったか」


「いや、タバコだけだから」

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