#17 みんなの休日
12月23日、いつもの取り巻きはそれぞれ有休を取り、大和くんはリビングでバットを振るっている。俺ら5人はそれぞれ部屋でぐーたらしている。強いて言えばカナヘビくんが取り巻きに加わったことぐらい。「おい大和、部屋でバット振るな、鮫井行ってこい」「行ったらみんなお通夜になるでしょ」その通り。俺はたまたまそこにあったパンを口に加え、テレビを見ながらぐーたらする。大和がバットを下げて、テレビ前に集結する。今日の特集、寝台列車。俺は寝台列車なんて乗ったことがない。寝たことあるのは成田に行く時に乗った飛行機ぐらい。
寝台列車のモックアップが海佐車庫にあるという。車両の中には布団が敷かれ、窓もある。ルームランプという豪華な物まである。まず、俺らの口から乗ってみたーいっていう言葉が出た。俺は晴哉に1番列車を予約するよう言った。「大和、そう言えば、強化練習は?」聞いてない。「大和、部活は?」あー、有休。と言った。次シーズンからバードフェニックスなのに。
カナヘビくんもいるし、本当に休日のようだ。晴哉が開けたポテチにみんなでつつく。うまい。カナヘビくんが俺に、カナヘビじゃないの?って聞いてくる。そういうカナヘビくんはニホントカゲなのねっていう。2人して混乱する。部屋でグータラする時間はまだある。のんびり過ぎていけば、それはそれでいい。取り巻きのカナヘビくんも、大和と長い付き合いなので、バードフェニックスに移籍するとかなんとか。
ふと横を見るとカナヘビくんが持っているユニホームを見た。2番 GAMNO ウォーターズと書かれていた。ユニホームにはトカゲが刺繍されている唯一のオリジナルみたい。カナヘビくんはカナヘビであってニホントカゲだ、下の名前がカナヘビだっていうことらしい。テレビを流し見をする。大和は最後のポテチを食い終わって、コーラを飲んでいる。「誰だよ最後に食ったやつ、パーティサイズ買ってこい」ハルトと大和は一緒に買い出しに行った。とたんに静かになる。「カナヘビくんって好きな物何?」やきゅーとごろ寝。だって。「そうだ俺、大和帰ってきたらみんなで鮫井行こ?」やっぱりバッテングセンターかな。「じゃーカナヘビくん、大和の豪速球の設定でキャッチできるの?」うなずくカナヘビくん。「やっぱりタトゥーフリーな元春駅の温泉行こ?」それなら大和も入れるし、いいね
「おかえりー」ハルトと大和が帰ってきた。「カナちゃん、キャッチボールしよー」カナヘビくんと大和がベランダでキャッチボールをする。ポンって音が響いている。「おい2人とも、外の道路でやってこい。うるせー」俺はそういうと、晴哉の隣に腰掛ける。「こーき、コーラ持ってきて」俺は炭酸の抜けたカラメル色のコーラを晴哉に注いだ。ハルトが外に行く。カナヘビくんは大和の相手。カナヘビくんと3人は戻ってきたよう。「じゃーみんな、温泉行く道具揃えて」俺らはタオルはレンタルできそうなので、フリーで行く。みんなは財布とスマホだけ持って出発。
大和なんて市販のユニホームを着てるし、しかも自分の。と、カナヘビくんを見ると同じく市販のユニホーム。流石にトカゲの刺繍はなかった。今日もまたダイヤ乱れのようだ。来た電車に乗り、降ろされた駅で乗り換え。キハ150系の運用の山田川行き。例に漏れず橋本駅止まりだ。今一度、列車からもう一度車両を見渡す。逆の先頭車両に、2ガンノと書かれている。そのうち2人はウォーターズトレインから除籍され、英雄かな。カナヘビくんは自分のステッカー通りの格好をする。モフッターに晒しあげの刑だ。#山田川ウォーターズ 今日は岩野くんが来た、とモフーした。「この前は甲斐さんなのに今日は岩野さんなの?」といわれそうだ、大和ののんびりした写真もついでに投稿した。周りからきっと友達なんだなって思われていそう。
山田川に到着し、南港まで移動する。この時間帯は普通電車が多く運行されているようだ。南港に到着。俺らは下から山の上を見る。相変わらずの景色だ。ふと横を見る。「あれ、大和とカナヘビくんは?」どこ行っちゃったかな。メッセージが届いた。「駅で切符買って待ってるよー」俺らはのんびり階段を登る。
ぜーぜー言いながら駅に到着。「そう言えばやまちゃん」ん?って感じに聞いている。「たまに体力付けでここくるよね」俺らは大和から切符をもらい、駅の改札を入る。昔ながらの改札だ。600円の切符を駅の人に渡す。
特急町川西行き。特急券はいらないみたい。前2両は三陸ドーム行きらしい。ライブがあるようだ。車内に入る。座席下のヒーターが稼働している。俺と晴哉は対面、大和とハルトとカナヘビくんは隣のボックス。「まもなく3番線から、可部方面行きが発車します」ごーんごーんごーん。駅の発車メロディは鐘の音みたいだ。
特急町川西行きは定刻通り発車した。10:25いざ南岸を西へ。しばらく海の景色を見ている。可部駅につき、乗客の入れ替わりをする。けっこー乗ってきた。俺らの空席に人が座る。大和たちが立ち客で見えなくなる。可部駅も鐘の音だ。「ただいま、前2両は混雑のため、北原神宮駅にて接続する、後続の快速ドームにお乗り換えください」
少し経ち、北原神宮駅。あっちという看板があったのを思い出す。ぐー。なんの音だ?大和の寝息かな。反対側の席から、「大和おきて」という声が聞こえた。北原神宮駅にて1番線からの快速ドームが接続している。このまま継続乗車。車内は閑散としている。三陸上田駅にて、球場行き前2両を切り離し、反対側ホームから緑行き、今乗ってる電車が町川西行きの3種類の列車が11:00にそれぞれ各方面へ出発する。
ディーゼルの振動で眠くなる。「こーき、寝たら寝過ごすよ」晴哉が俺を起こす。やっぱり晴哉のことが好きになっちゃう。本人は俺の事、ただの同棲相手だと思っている。川上駅で自動放送が付いた。この先は車掌がいないみたい。この車両は100系の25番と40番の連結のようだ。今度は晴哉とハルトが入れ替わる。「ねー、路線図見たらこの電車元春駅通過しちゃうじゃん」俺の声でみんなは顔を見合わせる。おりよっか。
川上駅で時間を潰す。喫煙所と書かれた区画の中で、タバコを吸う。なんか駅名標の路線図案内に川上駅からの町川西駅までの区間が各駅停車になるようだ。その後は俺らは快速急行に乗り換え、元春駅まで行く。俺らは来た1両の町川西に乗り込む。三陸上田駅を出たばかりなので、空いている。150Fはロングシートなので、それぞれ向かい合って座る。
「カナちゃん、これからもよろしくね」「おうよ!」俺らはこんな日常を見ながら元春駅で下車する。大和君の背中の絵で俺らは行く場所が大体固定される。駅の高台から温泉街に降り、風呂を探す。いろんな絵をつけた人がいっぱいいる。タトゥラウンジなんてある。ここの周りは下界から隔離され、ニホン国憲法が通用しないみたいだ。「ん、嗅いだことのあるにおい」ハルトが大和の鼻をふさぐ。「もーハルト、一酸化炭素中毒になっちゃうよ」3人は見てて楽しいなとそれぞれいう。
おんせんみーっけ。俺らはエントランスをくぐり、お風呂に漬かる。
温泉の山野菜の食べ物を食べる。ご飯がおいしい。大和なんて何も言わずにがぶがぶ食べている。俺らはスマホで仲間たちの写真を撮る。おっさんだけどな。俺らはご飯を食べ終え、駅まで歩いて行く。何やら駅の方が騒がしい。いろんな人が改札前に立っている。踏切事故みたいだ。元春から町川西まで16時まで運休なよう。俺らは次にどんな列車が来るのかわからないので、改札口で待機。駅のホームは安全のため列車到着5分前まで閉鎖されている。駅で案内放送が流れる。三陸上田行きが入線。それに続いて俺らはホームに移動する。列車の構内入れ替えが完了し乗車案内が始まった。
ぞろぞろと俺らが乗っていく。あいにく席はうまっていた。俺らはコーラを回し飲みをする。でかいやつが二人いるから、俺は顔を見上げないといけない。吊革につかまる。川上まで各駅に止まり、車内放送が車掌の声に変わる。「次は終点、三陸上田です」三陸上田駅で、ライブ真っ盛りな三陸ドームからの特急が到着し、それぞれ乗った。#いつめん #山田川ウォーターズ と写真を取り、貼り付けた。モフーをする。瞬く間にいいねや、リモフや、フォローが増える。みんなのスマホがピコピコなる。三陸上田でぞろぞろと特急電車に乗り換える客がいる。この先南港まで、各駅停車に化けるって言ってたの聞いてないの?
すべての駅は南口がなく、北口だけだ。谷には高架橋。山にはトンネル。だけど電化はされていない。それぞれ各駅に止まり、南港駅に到着。乗換階段で、俺はカナヘビ君、ハルトが大和の腕を掴んだ。「なー、二人でどっちが早いか降りようとしてたんだけど」俺らは、みんな一緒の休日なんだし、みんな一緒に過ごしたいと言った。二人は納得。南港駅の乗り換え階段をゆっくり降りる。途中にビッツと言う名の自販機がおいてある。ゴミ箱からペットボトルがあふれて、ゴミだらけだ。テキトーに俺らは市販のユニホームを着ているが、多分みんなは俺らだと認識している。
乗り換え階段を降り、海浜鉄道の南港駅に到着。三陸リアス鉄道の車両はどうやって輸送したんだろう。「さーめーがーい」と言うが、おうち帰るぞと言った。15時前後。俺はパスネットを改札に通し、大和の腕をつかみ八雲方面の乗り場に移動した。1時間に2本、南港発新町空港行きが運転されている。間合い運用で、キハ150系が入る時もある。まあ考えたくもないが、来ました。乗車位置150だって。しかも2両編成。晴哉と目を合わせると二人で笑った。
進行方向向いた車両なのでそれぞれ眠りに入った。ねー、寝過ごすよ。まー寝過ごしたんだけどね。みんなが起きると橋元口駅に到着した。あれから八雲発海快速に化けた150系の中で皆は爆睡を決め込んでいた。帰りは快速急行だな。今度は起きて列車に乗る。球場発着の列車は橋元口まで全列車快速急行っていう。
神殿駅に戻ってきた、まー隣の駅は新田って読むんだけどな。俺らは駅を降りて、自動改札にパスネットを通したら、エラーが鳴った。駅員がいるところで全員の事情を説明し、下車をさせてもらった。夕飯に困ったらワクドナルド。お腹が空いたらワクドナルド。街角のワクドナルド。大人数でワクドナルド。宴会もワクドナルド。庶民的ワクドナルド。ジャンキーなワクドナルド。
もーそういう看板を見ると呆れてくる。今日は大和が夕食を作る。俺らはその間にテレビを見る。カナヘビ君なんて、寝てる。晴哉は尻尾を抱いて寝ている。トカゲも寝る。
「おーいできたぞー」目を開けると、いい匂いで目が覚めた。俺らはテーブルに付き、みんなで夕食にする。もぐ、フツー。「ねーおいc?」とりあえずおいcと言っておく。本当はおいcんだけどな。夜のみんなのコーヒータイム。俺はオレンジ色のコップにアツアツとしたコーヒーが注がれる。なんかこの家、コーヒーの極めをしているのか、コーヒーセットだけは充実している。
テレビでは三陸リアス鉄道の西野川駅でのトラックと普通電車が衝突し、救助活動に難航して、いまだに運転再開をしていない。区間快速急行も、快速も、フツーも元春駅折り返し、とっきゅーは三陸上田から緑まで。
夜8時、それぞれ風呂に入り、それぞれ帰宅をする。「またね」俺はハルトと大和の家のアパートの玄関前に蜂とニンzを止めておいたので、それに乗って元口まで行く。
家に到着。「じゃー光輝、寝よっか」と俺たちはそれぞれの寝室に入り、夜を終わらせる。