表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/31

#16 わずかな休暇

しばしの休暇。俺らが大和のやきうを観戦した後、仕事とやきうがお互い休みになり、俺は休日の使い道を考えた。そうだ、大和を起こさなきゃ。朝四時半。「おーい大和」「ん、起きるよ」、、、起きねえし。寝言かよ。尻尾をもんで起動しよう。「ひ!」なんだーハルトか、びっくりした。重石につぶされる夢見ちゃったよ。だって。


俺は朝ご飯に怠惰を覚え、大和に作ってもらう。「いいよー」自前の中華鍋を振って、何か作ってる。「チャーハン?あさから?」そんなこと言うと食べちゃうぞ、だって。「やまと、ユニホーム着て遊びに行こ」休日はハルトの恋人として遊びたいって。俺は晴哉と光輝を呼び、家に呼んだ。


「ハルちゃん、朝早いよ」と晴哉が言う。俺たち早起きなので。「早くしないと、大和が鮫井行っちゃう」部屋でブンブンバットを振る大和。寝巻のまま。最近、切符レスカードが導入されたよう。


「やっほー、あ、大和鮫井行っちゃった?」いるよーと部屋から出てきた。玄関にはバスケシューズと、スパイク、大きな靴の3足が置いてある。どれも履きつぶされている。拾ってみる。「KAI」と印字されている。なんだこれ、オーダーメイドかな。俺は来客に上がるよういって、リビングに通した。「観戦ぶり」俺らはコーラを用意し、三人によそった。晴哉と光輝はよく遊びに来るので、勝手にこのコップ使ってねという専用コップを用意した。


部屋には俺がさっき干したユニホームがある。湿気過多。石鹸で落としきれない大和のにおいが漂う。「くせっ」誰かが言った。きっと晴哉か光輝だ。部屋のパネルを見ながら選手名鑑を見る。たまには北原神宮に優勝祈願に行こう。いい案だ。


「えーっとどうやって行くんだ?」えーっと、南港まで行きそこから三陸リアス線にのり、北原神宮で降りるんだって。えーっと今日は、三陸ビッツ対新町ブルーの戦いか、「ねーハルト、休日ぐらいやきゅー忘れようよ!」そうだな。


南港駅に到着。駅はどこだ。「あの山の上!」と大和が言う。確かに乗り場入口に山の上まで徒歩10分と書かれている。軽いハイキングだ。車いす用の連絡スロープ、約30分。と書かれている。「おいてくぞー」大和は身軽になり、すたすたと山に登っていった。「何で大和そんなに速いの」結構人いるな。到着放送が流れ、2両編成の気動車がやってきた。駅は6両ほどスペースがある。「この列車は区間快速急行、緑行きです」おでこに大きく緑と書かれている。それぞれ車両に乗り込み、ボックスシートに座り発車を待つ。ぐーぐー、いったい何の音だ?あ、大和の寝息か。すぐに満席になり、立ち客が出るほどだ。景色には南岸が広がり、紅葉で色付いた木々がそびえ、トンボが飛んでいる(みえないがな!)とセルフ突っ込み。トンネルに入る。とげとげした海岸の上を橋掛けで通過していく。少しすると西原野にしはらのとう住宅街が広がる。さて、20分が立ち、可部駅に到着。そして10分が立ち、下車駅の北原神宮駅が近づいた。大和を起こし、下車する。


「ふぁー」神宮あっちと言う看板が見え、矢印は書いてないもの、あっちとだけ書かれている。そのあっちに進むこと30分、10分おきにビッツドリンクと言う名の自販機が置いてある。三人でぜーぜ言いながら鳥居をくぐる。大和は楽しそうだ。社務所に行き、優勝祈願と、幸せ安泰と書かれたのを注文する。お布施でそれぞれ1万を出し、受け取る前にお払いだ。なんかよくわからないことを言っているが、聞くだけ得。大和起きて!


神宮の中を歩く。トイレあっち、さいせんあっち、手水社ちょうずしゃあっち、おい、全部あっちじゃねえかよ!「なーなー手をお清めにいこー」子供みたいにはしゃぐ大和。チョップをお見えする。「いて!」大和が静かになる。「ごめんなさい」大和はお賽銭で小銭を取ろうとしたらお守りの100円札を落としてしまった。その札は見事お賽銭箱の中へ吸われていき、大和が慌てる。「あーあ、お守りがっ」俺の100円札をあげる。「やだ、あれキリ番だったの!」大和は腕を突っ込もうとするが、網が細かく、手が入らないようだ。まー大和、筋肉質だからね。


お守りを買いに社務所へ戻った。部活守り。大和にやきゅーの柄が付いたお守りを見せた。「フツーなのがいい」有名なお守りを4つ購入し、みんなの渡した。なんと一個100円!俺らは運試しで50円みくじを引く。


ーーじゃー山の下までかけっこな!と大和は元気に言う。「先言って待ってて」と俺が声を掛けると、ハヤブサのごとく、目の前から消えていった。「なんであんなに元気なんだろう、あ、やきゅーが無いからとか」三人でうなづいた。俺らは北原神宮駅に到着し、列車を待つ。日中は20分に1本、各駅停車は1本快速列車は2本。反対側ホームがホームの端から端まで客でいっぱい。


こんな時は各駅停車で帰るに限る。だって空いてるから。俺らは南港行きと書かれたボードを見て、列車に乗った。「本日は、三陸ビッツ対新町ブルーの対戦のため、臨時ダイヤで運転しております。この列車が終点まで早着します」と案内が流れた。晴哉がポテチたべよーと言うので、備え付けのテーブルを持ち上げ、その上にコーラとポテチを乗せた。四人はぼりぼり食べていく。50分が経過し、終点の南港駅に到着。


「わかったわかった」大和を引き止め、四人で階段を降りる。駅前のワクドナルドでお昼にする。どこにでもワクドナルド、ワクドナルド、どこでも。迷ったらワクドナルド、庶民的味ワクドナルド。「鮫井さめがいバッティングセンターいこ?」と大和が言うので、休みの日くらいバッドを振らないでおかないか?と聞く。それぞれワクを食べながら、ワクを進める。1時間ワクの中にいた。お昼のワクラッシュを過ぎていたので、店内は閑散としていた。


バットを振るモーションする大和をみんなが呆れ、鮫井まで行くことにした。鮫井バッティングセンター。駅直結誰でもご利用ーー 大和は貸出バットを振る。球速を160にセットし、自分が投げるボールを打てるのか?とやってみるようだ。俺も負けじと振る。隣から金属バットの音が響いて周りのお客が一斉に見る。「自分の速度で打てるって快感だよね」そのたとえは分かりません。大和のブースに人だかりができる。「あ、ウォーターズの甲斐さん」


「帰るぞ」俺らは打てる球を使い果たした。大体大和のせい。だから散歩ががてら、八雲に来た。俺らは前回のつまんねー帰るぞを思い出し、あめちゃんだけ買って餅鍋温泉、なんでこの時間は橋元口いきなん?「まもなく2番線に快速橋元口行きが参ります、山田川鉄道線内各駅停車になります。乗車位置150、1番から2番でお待ちください」まさかのウォーターズ列車。ラッピングの大和の前で大和を撮り、またモフッターにあげる。「#山田川ウォーターズ 大和君と一緒」ついでに大和のアカウントも載せておく。「なんかスマホがピコピコなってやかましいんだけど」俺のせいじゃない。モフッターのせいだ。四人は楽しく神殿に向かった。


「今日は大和が夕食作れー」と俺がソファーに座り明後日の方向を見ながら言った。晴哉と光輝もうなづく。大和はエプロンをかけ料理を始めた。


「いい出来じゃん」朝に続き夜もチャーハンだ。もぐ、味付けが違う。なんだこの味。「砂糖多めに入れてみた」おれらは夕食を食べて、シンクにお皿とコップを入れた。「ハルト、今日は皿洗いしてね」わかったと言い、先にコップを洗い、次に皿を洗う。


テレビを見る。やきゅー少年の昔と今を話している。なんか大和に似てるな。レッサーパンダの少年だ。昔はシーライドの18番のエース、いや、大和だ。「なーんで勝手にテレビで放送してんだよ」そして、投獄中のシーンに変わる。「そこ、映さなくていい!」そしてウォーターズの1番のエース。2ndカメラから大和がボールを投げてカメラを壊すシーン。ホームランばっかりのシーン。「休日くらいやきゅー忘れたいんだけど」じゃあなんでバッティングセンターなんて行くんだよ。「大和君を迎える準備はできてる、もし今見ていたら、バードフェニックスーーー」三人でえ?と言う顔をする。俺らはやったじゃんと言い、胴上げした。ゴツン、「いってぇ」ノリのまま胴上げしたら天井に直撃してしまった。


ニホントカゲのカナヘビ君から電話がかかってきたよう。よかったなと言われる。俺らはお祝いに、ワクドナルド、どこでも。どこでもワクドナルド。とりあえずワクドナルド。気が向いたらワクドナルド。に行こうとした。神殿1号店は臨時休業、2号店は人でいっぱい、3号店は時間休。「イタリア料理店に行こう」


イタリア料理店で、四人はお祝いモード。いろんな人がこっちを見る。それぞれの客が「甲斐さん、バードフェニックス昇格おめでとう!と言う。大和はマーカーを持ち、イタリア料理店の入り口の窓に、甲斐大和、と書き、うれしそうだ。「なー俺、仕事の休みなんだから、やきゅーの事は忘れたいの!」そういうけど、楽しそうだ。


「大和、いつからバードフェニックス?」次シーズンかららしい。大和が山田川鉄道をやめるために、退職届を書く練習をする。「そこ、跳ねない!止だよ、しんにょうは跳ねない!」家には晴哉と光輝が眠り通すので、俺のベッドの脇に布団を敷いて、いつも通り大和の部屋で寝る。明日も休日だ、大和は部活かな。


アラームが鳴る。「むに」おぉ!もう朝か!と起き上がる。「睡眠不足」いや、寝たのも起きる時間も一緒じゃん。大和はスマホを確認する。今日こそ三陸ビッツ対新町ブルーの試合見に行こ?「うん、っていうかチケットとれるの?」4人分なら今ネットで抑えれば、現地で支払いができる。ちとまて、応援なのになんで自分のユニフォームを着るんだ!「え、これ一般で購入できるパチモンだよ」そういえばそうか。晴哉と光輝を起こすのはあと3時間後でいいか、よし大和、タバコに行くぞ、メチルフェニデート飲め。


優雅な朝のコーヒータイム、立ち上る湯気が今日も心地よい。鼻を近づけるといい香りがする。俺は砂糖をちょっと入れ、かき混ぜる。するといい香りがさらに出てくーー「ハルト、何も考えず飲め」俺は一瞬にして朝のコーヒータイムを破壊された気がする。当人はそんなことを考えていないようだ。俺のコーヒータイムは一日の精神を整えるための重要な儀式なんだよ。「コーヒー冷めちゃうよ」


「おはよー」晴哉と光輝が起きてきた。今日の予定を言った。俺らは再び南港に出て、直通列車で三陸ドームに向かうという。「実は俺、部活ー」分かった!行ってらっしゃい。俺らはやきゅー見に行くから。怒ってはいない。俺らはユニフォームに着替えた大和と一緒に鮫井まで向かう。南港駅で解散。俺は10分かかるという階段を上る。「なんか、大和いないとさみしいな」俺らがそれぞれ口にする。やっぱり大和はみんなと居てこそ、俺らの4人組が成立するのを身を思って分かった。俺らは階段を上るのをあきらめ、南港駅で、3人は立ち止まった。そんな時は鮫井の練習場に行くのが一番だ。ICタッチの改札機があり、使い方がわからないので、切符を通す。鮫井までー


練習場どこだ。「やまと、練習場どこ?」大和は81A鮫井海岸時計回りに乗車し、次の鮫井野外競技場で降りるといいと言っていた。鮫井競技場で降り、受付で大和の取り巻きと伝えたら、すぐに案内させてもらった。


「バードフェニックスに移籍するために、頑張るんだ」と言われている。俺ら取り巻きは、窓の外から見ることに。バッティングを振り、センターをやっぱり打っている。「それ以外なのはないのかな」「大和のお股もっこりしすぎじゃね?」あーあれは股間を守るサポーター。俺らは練習を見る。


しばし立つ。マネージャーのニホントカゲなカナヘビ君がそれぞれに物を渡している。晴哉と光輝は眠くてその場で座りながら寝ている。


三人のおなかが鳴り、建物直属な食堂に行った。大和がいないので三人はお通夜気分。「早く大和帰ってこないかなー。ふと横で座るね、と声がして横を見る。「みんなどうしてここに?」さっき電話したろ「てっきり来ないかと思った」こないなら電話してないわ!練習の意気込みはいつものムードメーカーな大和とは違って、真剣だった。


「ハルトのご飯食べたいな」わかった今日は俺がご飯作ってやる。ふと食事に目線を下げると、機内食で食ったペチョとした卵焼きのようなものと、ぱさぱさなご飯が乗ってた。そりゃ大和も俺の飯が食べたいっていうよな。それぞれまず飯を食い、トレイを回収口に入れた。ニホントカゲなカナヘビ君が居た。「あの時の」俺はもう一回座った。「君があの大和のバッテリーだったのね」そういえばみんなやきゅーは?と大和が聞くので、お前がいないと俺らは何もできなくなると伝えた。依存症気味なので。


俺らは部活帰りの大和と合流した。マネージャーのニホントカゲなカナヘビ君が切符を渡す。「さあ帰ろうか」俺ら取り巻きはパスネットを通し、入場する。快速八雲行きに乗って山田川駅で乗り換えする。連絡改札にはパスネットを通せないので、いったん改札を降り、乗り換えた。晴哉と光輝は家に帰って明日の仕事に備えないといけないので、快速急行餅鍋温泉行に乗車し、俺らは神殿で降り、晴哉と光輝を見送った。


「さあ帰ろっか」俺らは駅を出る。そのまま歩いて家まで戻った。俺は窓を開ける。秋風が良く通る。「大和、座ってろ、今から作るから」俺はちゃちゃっとご飯を作る。大和の中華鍋は水洗いする。油落としたら大和に殺されると思った。大事な親父の形見だもんな。


「はい、甲斐です。え?ちょっと同居人に確認してみます」どした大和?「なんかドキュメンタリーを撮りたいって言ってるんだけど。「いいじゃん、人気者になれるよ」大和はお願いしますと伝え、出演料の金の話に持っていった。一日一万円でいいでしょうか、らしい。


次の日、いつも通り起床する。ついでに大和のお腹に、「やまとーあさだよー」と言い、朝食を作る。まー、マーガリンとパンでいっか。「ねー、おなかに言わないでよ」と大和が起きてきたので、大和はメチルフェニデートを飲む。インターフォンが鳴った。「山田テレビでーす」朝食中の部屋の中が大慌てになる。定点カメラとか、部屋にカメラ、キッチンにカメラ、どこでもカメラ。撮影が終わるまで、せっくすと同室睡眠はなしだな。「じゃー部活行ってくる」俺はカメラに覗かれる。パンをむせてしまった。


大和を追いかけてカメラが一緒に出発した。俺はコーヒータイムがカメラによってさえぎられたので、何で大和、ドキュメンタリーなんてオッケーって言ったんだよ。いや俺が言ったな。


職場に行く。相変わらずカメラは付いてくる。事務所に入り、点呼を受ける。俺はラウンジシャツ(大和のお古)に着替え、ラウンジの中で特等客を待つ。すると、お立ち台の方にカメラが向いてるのがわかる。仲間がカメラの取材お断りしますと言い、俺らに平穏が訪れた。


「ごめんなさい、取材はキャンセルします」という大和で、大家さんに電話をし、カメラを撤去してもらった。大和、気が付いたらぱっつぱつじゃん。筋肉質になったなぁ。


ーーー大和ならやれる、俺だって応援してる


ーーーやり遂げて見せるさ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ