#13 プロファイル
山田川特別地区 12話時点 2014年9月
緑川晴哉
36歳 1973年11月16日生
好きなもの バイク カナヘビ(トカゲ)
嫌いなもの 台風 落雷
旧姓 元田
白ドラゴン、鬣は水色
身長183cm
原田光輝
35歳 1974年3月18日生
好きなもの 晴哉 友達
嫌いなもの 先輩 電車の遅延
黄色いトカゲ
身長168cm
上田ハルト
35歳 1974年4月19日生
好きなもの 大和 温泉
嫌いなもの 覚醒剤 うるさいところ
たぬき
身長192cm
甲斐大和
35歳 1974年6月7日
好きなもの コンサータ お薬
嫌いなもの 独りぼっち 暗い道 水
レッサーパンダ
身長165cm
キャプション「待って晴哉、独りぼっちにしないで」
暗い夜道、大和は家に帰るべく、晴哉先輩と歩いていた。先輩のバイクが故障したらしく、今日は徒歩で通学していると言う。俺は先輩に、もし俺が覚醒剤で捕まったらどうすると聞いてみた。
「俺はお前が捕まっても、毎週会いに来るよ。大丈夫、安心しろ」
俺は先輩が俺を大事に思っていることをわかり、ちょっとだけ覚醒剤を辞めてみる決意をした。先輩は大柄で、歩く速度は早いようだが、俺に合わせてくれている。
「先輩ってなんで俺に優しくしてくれるんですか?」
「だって、仲間だと思った相手は、とことん仲良くしたいから。きーっとこの先もお互いに好きな人ができてもずーっと」
歩きながら先輩は俺に優しい声掛けをしてくれる。そんな先輩が、俺に覚せい剤を辞めるよう言っている気がする。言っている。俺は、どぶにでも、今持っている覚醒剤を捨てる勇気がある。だけど手放せない。
「先輩、ワクドナルド食いに行きましょ!あっちの方向にワクドナルド海佐10号店があるから!」
「買い食いするってお義母さんに伝えるからちょっと待ってね」
先輩は俺にいいよと言い、角を曲がった。そのまま道をまっすぐ行くと、晴哉先輩の家だと思う。大道路に出る。ナトリウムランプがたくさん光っている。俺の暗闇に、明るい道は怖くない。先輩と別れたくないから、とっさにワクドナルド行こうと誘った。きっとみこは恋人のアルトとセックスだの、覚醒剤だのやってるはずだ。
「ついたよ、大和君」
ダブリューの黄色い看板が見えた。建物にはワクドナルドと書かれている。二人は中へ入っていった。特に何食うか決めてないし、実際自炊でもできる。こんな時は先輩に甘えるだな。
「何食べる?」
「じゃあビックワク」
先輩がポイントカードを提示し、俺らは提供されたコーラとビックワクを食べる。先輩が俺のことを食べ終わるまでそばにいる。帰らないで、さみしいよ。
「じゃあ、帰りはさっきの曲がり角だね。」
「うん。わかった」
だいぶさみしい。親父は勝手な理由で離婚したし、みこはアルトとかいう薬中とつながってるし、中学以降家族のぬくもりを感じたことがない。
「大和君が食べ終わったし、そろそろ帰ろうか。弟も待ってるし」
「うん」
俺の目はうるうる。先輩、離れないで。
「大和君、どうした?」
「先輩、今日はうちに泊まって」
堰を切ったようにその場で大泣きをする。こうなることは事前にわかっていたが、対策をとっても変わらないと思う。
「明日も会えるんだし、学校で会おう?」
「離れたくない!家に帰りたくない!」
頭をなでられる。少しの甘えを許して。実も何も、本当に帰りたくない。誰かのぬくもりを感じたい。
「わかった。今日だけだよ。荷物取りに行くから」
「うん」
緑川晴哉先輩。今日だけ独占。俺は、独りぼっちは嫌いなんだ。だからいつもみんなに、泊めてもらうよう、聞いている。
ーーー安心しろ、俺らもいるから。
ーーー心の闇は、お互いにいる時間を増やして灯そう
晴哉先輩の帰った後の布団にうずくまりながら大声で泣いた。
キャプション「会員制クラブ」
大和の家の前で三人は待つ。何してるんだよ。寝てるのか?俺らは5時前からずーっと家の前の通り道で待っている。
「おまたせー」
ハーフパンツに、ランニング、バスケシューズ。奇抜な服装で出てきた大和は、楽しそうだ。
「はい、晴哉先輩にブルー」
「光輝先輩はレッド」
「ハルトにはグリーン」
俺はグリーン。そのまま飲みながら駅に行く。駅の改札で、パスネットを通し、入場する。各駅停車でゆっくり移動する。新田駅≪あらた≫に到着。改札を抜け、北口のそばにある、メッツしんでんという建物に入っていった。大和はいつも通り、いつもの薬をもらい、勝手に体の中に取り入れる。
「やまちゃん、きょうもズシズシしようよ」
「わかった、ちょっとウィンナーの調子が出るまで待っててね」
大和は記憶がなくなるまで、薬を取り入れた。ーーー
「おい大和、大丈夫か!」
「大和ってば!」
「ふご」ちょっとハルト、二酸化炭素過多になっちゃうよ。
俺は心配した目で大和を見る
「帰るぞ」
うん。帰ろう。
キャプション「俺のダチ」
「こーき、トイレで何やってんの」
「今週のトイレ掃除」
「今日俺の班が掃除したんだけど、はい、言い訳どうぞ」
俺はトイレでしこってて、白濁液が便器について水で流れなくなった。それをトイレたわしで取ろうとしている。まあ、ガッコ―でしこるなって話。「スンスン」やめい、バレたら始末書になるから!
「正直に言ってごらん」
「しこってました」
「よし、買い食いは光輝のおごりだ!」
俺らはバイクにまたがり、のんびり学校を出発した。
「やっぱりワク?」
俺らはワクドナルドに向かった。今日は俺のおごりらしいので、好きなものを選ぶ。隣で晴哉は何を思っているんだろう。メニューをなぞっている。点字かな?
「晴哉、何食べる?」
「じゃあ、チーズバーガー6個で」
え?耳を疑った。突発性難聴かな。もう一回
「だから、チーズバーガー6個」
は?
俺は支払いし、椅子に座ろうとした。
「持ち帰りで」
え?
「そんなことしてると、置いてっちゃうぞ」
まてー!
キャプション「はじめまして」
「じゃー新年度だし、みんなの自己紹介をしよう」
先生が言う。
「おれ、甲斐大和。小学校から野球部やってる。ピッチャーだ、よろしく」
俺は、野球部すごいな、と思った。
「みんな初めまして。俺は上田ハルト。帰宅部です。よろしく」
俺は自己紹介を終え、椅子についた。
先生が1の川とか2の川とか言う。「どこの方言?」
自己紹介が終わり、俺は図書室に行く。「ハルト君。仲良くしよ」うん
「じゃーやきゅー終わったら、一緒に俺んち行こ?」
うん、一緒に行こ。
ーーー友達を作った。
ーーきっと上辺じゃない。中からこの子とは仲良くなれそう。
「おーい、甲斐!」
帽子を被って、グラウンドから観察する。
ーーあち、
俺は寝てたらしく、日焼けをしそうになった。
「ハルト、行こ?」
塩分糖分補給ドリンクを飲んで、ハルトにコーラを渡した。
「じゃあ、行こうか」
ハルトが、家のカギを開ける。俺はこの人が家族と見てしまった。
「だから、アルト、俺はもうアイス持ってねよ」
「早く打てって、言ってるだろ!」
「知らね」
俺は大和に案内され、部屋に到着した。「飲む?」
グリーンとブルー、どっちがいい?って。
「じゃーグリーン」
「大和、俺たち未成年」
いーのいーのって言ってる。初めてのビール。ついでに電話先を交換させてもらった。
「これ何?粉薬?」
なんか体調でも悪いの?って感じに見た。
「発達障害なの。注意多動疾患」
ジップロックに入った粉薬は、わからないが、金色のシートにある薬は、コンサータと書かれている。
「よくここまで頑張ってくれて、ありがとう」
「どういたしまして」
じゃー俺、帰るから。
「え、行っちゃうの?」
俺、18時が門限だから。帰るね、と言った。
「うん、また明日会お?」
うん、俺も。
キャプション「君と知り合えて、よかった」
「ん?」
俺のバイクに、待ち合わせ場所が書いてある紙を引っ張った。
電話番号、イタリア料理店の地図、種族、名前。
「誰だろ、同じ高校の人かな」
とりあえず行ってみる。
入り口に腕を組んでいるたぬきが待っている。
「晴哉先輩」
名前は確か、ハルト君。
「なんで俺を呼び出したの?」
「いや、特に用はないけど、人脈を広げたくて。」
「俺でよければ」
俺はイタリア料理店の中に入り、メニューを見る
「呼び出した俺が払うから」
うん。じゃー、カルボナーラ。
「わかった」
俺らはイタリア料理店で飯をする。家族には言ってある。
ーーー君でよければ
ーーー友達になろ?
キャプション「山田川の海に行こう」
朝八時。
「こーき、スク水以外の持ってきた?」
「ああ、心配いらず。オレンジ色の海パン」
「それ、保護色」
と、光輝水着を見せた。黒基調の、水色の模様の水着。
「おまたせ、先輩」
「この子たち誰?」
ハルト君と大和君。
「ハルト、でっか」
「えへへ、生まれつき」
四人はパスネットを改札機に通し、山田川へ向かった。山田川海浜鉄道に乗換え、餘部駅に向かった。
「シャトルバスはあそこ」
俺らは人気のない海につき、持ってきた浮き輪をみんなで膨らませ、海に入った。
水温25度、気温29度。
「先輩、呼び捨てにしていい?」
「いいよ」
ハルト君は走って海に入っていった。大和君は持ってきたテントの中で、昼寝をしている。
「先輩、行かないで」
大和が寝言を言う。光輝に海行ってこいと言って、大和とテントで待つ。
「な、大和」
大和の鼻をつまむ。熱中症になるから起こす。
「もー、ハルト、一酸化窒素中毒になっちゃう」
「ハルトね」
大和が、先輩という。
ーーー楽しい俺らのひと時。
ーーーおじさんになっても、みんな仲良くしたい。
あれから3時間が経過し、持ってきた飯を食べ、人員交代をした。
「俺、飲み物以外の水苦手。溺れるし」
じゃあ、大和、見ててね。
「やっほー!」
キャプション「トイレで何してるの?」
ここは学校の仮設トイレ。俺はトイレの前で、股を抑えながら待ってる。前の人が入って早10分。せかすのは俺の得意ではない、
「早く出て来いよ、みんな待ってるぞ」
トイレの中から返事がする。
「ウンチしてるんだ、黙ってろ」
きっと、しこってる。前に本館のトイレ行って、晴哉に見つかった。
「せんせー、トイレ開けて」
先生がドアをたたき、小銭でドアを開ける。
「誓約書な」
中から二人出てきた。しこってるより、セックスだ。狼と狼だ。ろうろうかな。二人は職員室まで連れていかれた。
だって、本館のトイレに誰かがトイペを詰まらせて、配管破裂でガッコ―中がびしょびしょだった。
その後別館のトイレも、配管に水が流れなくなり、俺らはトイレに困った。
トイレに入る。やっとおしっこができる。
キャプション「大和を起こすハルト」
「だれだ、アンちゃん」
「大和に用がある」
「じゃあ俺にも打てよ」
「俺、打ち方知らない」
「静脈のところ目掛けて打てば、いいんだよ」
俺はアルトをどかし、大和の部屋に入る。ぐーぐー寝ている。
「起きないと鼻つまむよ」
ぐーぐー。大の字で寝ている。
尻尾に手を掛けた。体重が尻尾にかかってしまった。
「ひ!」
「あー、アルトかと思った」
「おはよう」
「何でハルトが俺んちいるの」
「野球お疲れ」
部屋には、メジャーな球団の応援ぐっつが置いてある。バードフェニックス、俺でも知ってる。この国ではメジャーな球団だ。壁には、シーライドとかの服がかかってる。
「あ」
KAIと書かれた服だ。背番号は18。
「大和、起きて」
また寝てるし。
俺は、ゆっくり帰る。
ーーー寝起きは、誰だって不機嫌。
ーーー俺も、そうだ。
キャプション「四人の休暇」
夏休みだ!お盆だから、みんな部活がない。俺は駅前でのんびりする。晴哉たちがやってくる。
「どこいく?」
晴哉、決めてなかったの?
ハルトと、大和がやってきた。
「クラブ行く?」
いや、避暑地いこう。俺は晴哉に、鮫井行こうという。
「何あったっけ?」
「たしか、スキー場が、夏に観光スポットとして、解放されているよ」
大和が言う。俺はそれでもいいので、晴哉に行こうという。
「じゃー出発しよう」
俺らは特急餅鍋号に乗車し、山田川で、快速鮫井に乗って向かった
ーーー光輝、いつもありがとうね。
ーーー俺こそ。
キャプション「その下着、誰の?」
プールが終わり、着替えて教室に戻る。「晴哉、疲れたね」
机の上を見ると、パンツが教卓に置いてあった。
誰のだろう。
誰も俺のだと、名乗らない。
最後に教室は言った人が、「あ、俺の」と言ったので、クラスが笑いに包まれた。
ーーーパンツくらい、自己管理しろよ。