三十一 別れ
私は琢魔の体の側に駆け寄った。毒により体が紫色に変色している。
「ああー もう死んでいる!」ぼろぼろと涙が出た。
金髪も琢魔の側に座り込んで泣いていた。
琢魔の体を抱き上げてゼノンの前に跪いた。
「頼む、この子の命だけは助けてやってくれ、その為には私は素になって門に嵌められても構わない。頼むからこの子の命だけは助けてくれ!」と涙を流しながら頼んだ。
「お前が最後に戦ってライオキシンを倒せた。もしそれが出来なかったら神の国と
人間界は壊滅する処だった。それに免じてこの子の命は助けよう。早く人間社会に
戻してあげなさい」
「はい、有難うございます」と魔王らしからぬ感謝の言葉だった。
琢魔の体に入り家の前に降りた。
人間世界は平和で日が沈み掛けていた。
そして、琢魔の体より離れ魔の国に行こうとした時「おじさん!」と後ろから
声が聞こえた。
琢魔が真っすぐ前を向いて立っていた。
「私が見えるのか?」
「いいえ、見えませんが、5歳の頃から、私の中にもう1人の人がいる事は
気配で気が付いていました」
私と話しが出来るのはゼノンの仕業だな?
「琢魔が産まれた頃から一緒にいた。色々辛い思いをさせて悪かった」
「5歳の時の公園、暴力団の抗争、車の変態者と色々経験させて貰ったので
苛めにも平気だった。それに喧嘩で怪我をして学校に行きたくない時に
おじさんの(行け)(行け)との声が聞こえた。おじさんが付いて来てくれる
と思ったので学校に行けた。でも楽しかった。おじさんに感謝しているよ。
おじさんとはもう会えないの?」
「本当は会えない予定だったが、ゼノンが琢魔と私を糸で繋げたらしい。
だから格好良く、あばよ、言いたいが、何時でも会えるようだ。だが、
最悪の場合だけにしてくれ、私を呼ぶのは、それにおじさんではなく別の
呼び方にしてくれないか? 慣れていないから」
「うん、分かった、じゃ、オルゴン様で」
「いや、様は要らない、オルゴンで良い、お前は俺にとって特別な存在だから」
「えっ、それって告白?」
「違う! 魔王にはそういう感情はない!」
私は少し照れ臭かったが琢魔が大事な存在になっていたのは確かだった。
名残りが惜しくなるので「さらばだ!」と私は魔の国に戻った。
琢魔の家からは「何処に行っていたの? キランちゃんは帰ったの?」
「うん、帰るので見送って来た」と親子の会話が聞こえて来た。
もう日が沈み暗くなっていた。
呼んで頂き有難うございました。去年の8月頃から、コロナなどの影響で拙い小説を書き始めました。理系(建築)で小説を書くのも初めてでした。これが3作目です。初心者ですのでご意見などご指導宜しくお願いします。もし面白かったらブックマーク、評価をお願いします。