二 宿主
白日の鏡の神からゼノンに魔王オルゴンの皮を剥がしたが、
素が見つからないから溶かせないと連絡が入ったので皮はゼノンが輪に
封印した。
ゼノンは小神達を呼んで何処でオルゴンを捕まえたのか確認した。
「確か日本の上空だと思います」
「日本のどの辺だ?」
「関東地方です。その辺までしか分かりませんが」
「関東地方か? 確かオルゴンの部下の邪教師セイニチの教区が
あった筈だが?」
「セイニチは白日の鏡で溶かされました。邪教の教えを人間が守っているだけで
そんなに脅威な処ではないと思いますが?」
「おそらく、そこに素があると思うが、捜すのは無理だな?」
「ゼノン様、魔気センサーで捜せば見つかるかも?」
「いや、まだ素だから魔気は出していないだろう? 魔気が出るのは遅くても
15年位後だろう、様子を見よう」
「この子は誰に似たのかな?」初老の夫婦が私の顔を覗きこんで、
奥でお茶の支度をしている母に聞こえるように話した。
母はお茶の支度が終わり、エプロンで手を拭きながら夫婦の側に来て
「和夫さんに似ていると思います。特にこの目なんて」
と言いながらお茶を勧めた。
そして、私をベビーベッドから抱き上げた。
壁に白い紙が貼ってあり、(命名 琢魔)と書かれてあった。
私の名前は琢魔だとその時分かったが、(魔)じゃなくて(磨)だと思った。
名前を付けた父の和夫が私に感心がないからだった。
この老夫婦は父の親で今日初めて私を見に来た。
もう孫が大勢いて、私の事など可愛いとは思っていない事は感じた。
特に端正な顔立ちの母に似た事も気にいらなかったらしい。
父と母は結婚を反対されていた。
それは母の家柄と生い立ちだった。
父と呼ぶのは違和感があるので和夫にする。
和夫の父は小さいながらも会社の経営者で、社長は和夫の兄が継いでいた。
和夫は役員で父の会社に籍だけを置いて少ない手当をもらっていた。
「和夫は何処に行った? また、パチンコか? 少しは会社に来て働いて貰わ
ないと、そうすれば、こんな小さいアパートに何時までも居なくて済むのに」
和夫の父親は少し怒り気味に聞いた。
「すみません。パチンコに・・・・今日お父様達が来る事が分かっているのにすみません」
母は申し訳なさそうに答えた。
「とにかく、和夫に一度会社に来るように伝えて」と話し、老夫婦は私を
一度も抱かないで帰って行った。