~スライム、スライム、スライム~
高速エレベーターが減速して停まるような感覚で、ゆっくりとそして早く、最初のダンジョンの魔法陣へと着いた。
拠点であるホームを中心としたら、ここギルド総本部がある町『ラシア』は、異世界地図で1/3ほど離れた所にある。
「おー、絶景だなぁ」
深い森で自然の中に不自然な空間があった。何十年とも人が立ち寄った事がない場所なのに、まったく浸食もされず、塵一つのない空間だった。
転移した魔法陣を中心に半径100ⅿの円が水平に広がっている。床は白い大理石のような質感 円の外周に沿って、正13角形が書かれ時計のようにギリシャ数字でⅠ~ⅩⅢがに描かれてた。 そして、正13角形の外周に幅17m、厚さ、0.01m、高さ1000m以上の黒曜石のような板が不動に7本そびえ立ち、1本づつ、ギリシャ数字がⅠ~Ⅶが書かれていたが、数字の上に封印が施されていた。
運営がダンジョンに入れないように封印した魔法印だ。
(迷宮は、ゲーム登録者が自由に創造できる。すでにある基本を元に変更することも可能 ゲーム登録者はダンジョンをクリアーした時に貰えるオリジナルアイテムを作る事もできる。オリジナルアイテムは初めてそのダンジョン攻略した時にしか貰えない唯一のアイテムで、メインキャラクターで攻略した場合のみ貰え従者など自動で攻略では貰えない。モンスターなどを倒したりしてアイテムを得たりショップで購入して迷宮を攻略をするのが基本 レベルが上がると最初の場所、拠点で鍛冶屋を作ることができアイテム制作や強化ができるようになる。異世界の住人達もアイテム持ち帰り様々な物を作っている。そして、異世界と繋がった事によってアイテムの効力が違う場合もある。現実ゲーム内はそのまま)
「ようこそ、お越しくださいました。鬼麟燐凜鈴様」
「!」やめて!
「それとも、凜様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「アドミス!どうして君がここに?」でも格好が…エロサンタになってる
「失礼しました。鬼麟燐凜鈴様 わたくしは、ここ『マドンガセル』様のエリアを担当させていただきます。同一の秘書アドミスです。設定上 同じ格好のはずですが、期間イベントなどで秘書や執事は格好を変えられます、マドンガセル様はクリスマスバージョンから、戻ってこられません…あ、違う格好の秘書達もおります。」
「そ、そうなんだ。あ、リンでお願いします」
「承知いたしました。全ての秘書はリン様とお呼び致します」
「ありがとう。でも、僕の方のアドミスと雰囲気が違うね。格好は別としてw」
「リン様の秘書は特別です。わたくしのような者が普通でございます。格好は、そ、その…あぁ、恥ずかしい」
「あははは」
ここのアドミスによると登録者のマドンガセルさんは、もう400年以上現れていないとのことだ。
「まだ、わたくし共のエリアは忘れられたとはいえ、健在でございます。何とか300年 生きて来れました。しかし、多数のマスター達が ここを離れ大勢の仲間が消滅いたしました。リン様、本当に わたくし達は助かるのでしょうか?」
「 …理由はないけど、死んでた?死んでる?せいかな。大丈夫な気がするんだ。」
「リン様?」
「さて、アドミス 最初のダンジョンに挑戦させてもらうよ」
どうせ、今ある全てダンジョンを攻略しないといけないのだから、マドンガセルさんの最初に創造したであろう迷宮に挑もう。
「Ⅰに進むよ」
「かしこまりました。ダンジョンレベルは最大、最下層までの攻略でよろしいでしょうか?」
「うん。そうじゃないと意味がないからね。お願い」
「かしこまりました。 マドンガセル様にフレ…いえ、意味ないですね。リン様、ご武運をお祈り申し上げます」
「?…ありがとう。行ってきます」ⅩⅢに分かれた多角形のⅠの方向に向かうと魔法印がブーンと振動し始めた。近づくにつれて音と振動が大きくなる。
バリーンっと封印が突如割れた。
僕を登録者と認めたようだ。
封印の溶けた黒曜石のような板に触るとグニャリと無音で変形させ僕を飲み込み、迷宮へと誘った。
黒い渦からの視界が開けた。迷宮に入ったのだ。
「いいね。オーソドックスなダンジョン」
石造りの通路が四方に分かれ、松明で照らされた迷宮。古風で逆に新鮮な感じがした。
すると、目の前に小さなモニターが現れた。
「リン様~!寂しかったですよ。なんで、私と…私と話しているのですか?私という者がありながら、リン様ひどいです」
さっきのマドンガセルさんの秘書との会話だな。まったくリンクしてるから、ややこしいたらありゃしない。
「まぁ、まぁ、どっちもアドミスなんだから…ね」
「いいえ、あのエロサンタとは違います」
「サンタは、さておき どうした アドミス」
「あ、いけません。私という者が…失礼いたしました。 リン様 童貞…いえ、初めてのダンジョンになりますので 少し説明を…」
童貞? そこまで…
「うわぁ」 足元の石畳みから何かがにじみ出てきた。
「リン様、スライムです」
その場を離れると、僕は火の初級魔法に魔力を上乗せして唱えた。「火球!」 スライムは燃えダンジョンに吸い込まれるように消えた。倒したスライムより出てきた、ゴールドと魔石(小)、薬草が自動的にアイテムボックスに収納された。
「お見事です。リン様」すると、息する間もなく、辺りからスライムが大量に発生してきた。
「おっととと」スライム達を避け走りながら、火球を連続して飛ばした。
ドドドドドドドドド!!!!!
「いやぁぁぁ!!!カッコイイです。リン様!!!」
「アドミス、応援はいいから説明してくれる?」
「あ、は、はい。それでは、リン様 戦いながら聞いてください。先ほど申した通り、設定した階層の攻略が出来ずにリタイアした時は、集めた物がマドンガセル様の物となります。リン様が装備しているアイテムも没収されますがマジックボックスに入っているアイテムはダンジョンで得た物以外は大丈夫です。迷宮創造者…ここでは、マドンガセル様になりますが、迷宮創造者とフレンド登録してあれば、リタイアしても装備アイテムは没収されず、集めたアイテムはランダム、ゴールド等も、半分が手にはいります。ですが、リン様は、マドンガセル様はおろか誰一人として友達がおりません!」
ボン「だはっ!」不発!
「リン様!どうなされました!」
「い、いや、思いのほか精神ダメージが…」
「ど、どうしてですか?リン様に友達など必要ありません。私、アドミスが居れば…脱ぎましょうか?」
「アドミス!説明に戻って」
「は、はい。友達登録していないダンジョンなので、リタイアは絶対に許されません。ましてやリン様は、ソロでの攻略 達成した時の報酬は倍になり、攻略時のジェムアイテムショップでは半額になります。それに、期間限定で手に入れたログインアイテム『孤独の鈴』を装着してますので、低レベル者ボーナスも加算されます。
(孤独の鈴~1人寂しい聖夜にベルを鳴らそう~とは、クリスマスの24、25日の期間イベントで、2日間でトータル6時間以上ログインすると貰えるアイテム 装備すると、レベルやステータス数字が下一桁しか表示されなくなる。実際のレベルやステータスに変化はない。レベルを偽って冒険ができる。ちなみに下一桁が0の場合は10と表記されるがレベルMAXだとレベル0と表記される。 所持数1 現実ゲーム内でも同じ レベル0表記の恩恵は、また別の話で )
リン様なら無くても大丈夫とは思いますが、自動蘇生アイテムが、まだお持ちになっておりません。万が一死亡された場合は、パーティーを組んでおりませんので蘇生ができません。強制的に私の元へ帰って来ます。帰って来てほしいけど、ダメです。ダメダメ…」
ドドドドドド!!!! 100体近くは倒しただろうか、まったく魔力が減る気がしない。
「アドミス、ここのマドンガセルさんのダンジョンの情報を教えて」
「かしこまりました。マドンガセル様、第Ⅰの迷宮は『スライムの迷宮』となっております」
「スライムの迷宮って、もしかしたらスライムオンリー?」
「はい。スライムだけのダンジョンです。まだⅠ階層なので、耐性のないヘボスライムですから、簡単に倒せます。下層にいくに従い、各種耐性を揃えたスライムが出てきます。」
「なるほど、下層にいくには?」ドドドドドドド!!!!
右に左に、四方から来るスライムを単純に倒しながら、ダンジョンを駆け巡った。
「はい、この迷宮の下層へ行く条件は、それぞれの階層に決められた数のスライムを倒す事です。達成されれば、下層へ行く階段が現れます」
階段ね。典型的だなw 「 それで、何体倒せばいいの?」
「はい、10000体です」
10000体、時間をかければ倒せない数ではないけど、飽きるなぁ
「アドミス、ここのスライムの出現条件は?」
「はい、音や振動で出現いたします」
音や振動に反応すると…よし。
一旦、攻撃をやめて「結界球」自分の周りに球体の防御結界を張った。
アイテムボックスから期間アイテムで送られてきた『巨大クラッカー 』を出した。
(巨大クラッカー~みんなでお祝いしよう~は【迷宮創造】一周年記念で強制的に贈られたアイテム クラッカーを鳴らすと中からランダムでレアアイテムが出現する 所持数3 現実ゲーム内では広範囲でモンスターにダメージや麻痺を与えられレアアイテムも得る。)
「アドミス、耳をふさいでね」巨大クラッカーに爆音を魔力で強化して、クラッカーの先端だけを結界から出し、エルフ耳を折りたたみ、紐を勢いよく引っ張った。
バーン!!!!! ダンジョン全体が振動と爆音に包まれた。
「うへ~、結界の中にいても うるさいな」近くにいたスライム達は爆音で麻痺し、遠くで隠れているスライム達はダンジョンの通路に出てきた。
「よっしゃ、一網打尽じゃ!」結果を解き、アイテムボックスから千里眼メガネを取り出しかけた。
(千里眼メガネ~フレンズを探そう~とは、検索でモンスターを探すことができるアイテム 自分のレベル以上の者は検索できない。所持数1 現実ゲーム内 レベルが違いすぎてフレンド欄になかなか出会えないプレーヤーを検索して見つけられるアイテム 装備すると目が飛び出て見える 残念メガネだ)
魔力を注ぎ「ヘボスライム検索!」Ⅰ階層のヘボスライムが全てメガネの検索にヒットした。「ロック!」「火球散弾!」
ドドドドドドドドドド……!!!!!自分の手のひらの魔法陣から飛び出した火球が散弾銃のように弾け、検索固定されたスライム達に飛んでいった。
10000発以上火球を放出し終えた頃、辺りが静かになった。
「リン様、オーバーキルです。階段が出現しました。しばらくスライムは発生しません。お疲れ様です」
「え、もう終わり?」早すぎて物足りない。まったく僕もわがままだなぁw
「さて、次の階層に行こうか、アドミス次のスライムはどんなの?」
「はい、Ⅱ階層は、火の耐性を持つスライムです。火の魔法を与えると強化しますので、弱点である反属性の水系の魔法が有効です」
「出現方法、討伐数とか、一緒?」
「そのようですが、数が下層に行くにしたがい10000ずつ増えていきます。」
「ふーん。次は、20000体ね」物足りない。「ま、仕方ないか」
Ⅱ階層【火属性スライム】 Ⅲ階層【土属性スライム】 Ⅳ階層【水属性スライム】階を移動たびにスライムが強くなり、初級攻撃魔法の魔力を上げないとならなかったが、それでも魔力が無くなる気配はなかった。
(属性、どのゲームも似たような設定だろう。弱⇒強 火⇒水 水⇒土 土⇒風 風⇒木 木⇒火 など 光 ⇔ 闇のような場合もある 無属性あり)
Ⅶ階層まで来た。
「リン様、ここは、今までに出た全属性スライムが登場します。間違って同じ属性の魔法をあたえると強化しますので、お気をつけください」
「大丈夫。そんなミスはしないよ」
「あぁ、リン様 私を強化して欲しい」
「あははは、アドミスも属性あるの?」
「私は【凜様の属性】です」
「なんだ、そりゃw」
「それにしても、やっぱりお顔が素敵です。まったく、あんな品の無いメガネをリン様にかけさせるなんて」
僕は、千里眼メガネ先ほどまでかけていたが、千里眼メガネのスキルを覚えたので外してしまった。巨大クラッカーも3つ使った時に爆音のスキルも習得した。よかった。目が飛び出してはカッコがつかないしwそれにしても、しばらくアイテムを使うとそのスキルを覚えるのか魔力を通せば多少の効力変更もできる…異世界の影響かな? でもこれで、ログインアイテムや、期間限定アイテムなどの一点物アイテムを他の者に回せるぞ。巨大クラッカーなどの使いきりは難しいけどな。従者も僕のようにアイテムスキルを覚えられればいいけど。
Ⅶ階層も今までの階層と同じようにスライムに検索固定をかけ、それぞれ違う弱点属性の初級魔法を連続でかけた。「火球!水球!土球!風刃!」様々な色、音の魔法が飛び出し、スライムを確実に倒していった。
「Ⅷ階層は、毒のスライム、腐食のスライム、癒しのスライム、闇のスライム、暴食のスライム、となります。毒には解毒を、腐食には癒しを、癒しには腐食を、闇には光を、そして暴食には魔力を与えて爆殺してください」
「了解!」
アドミスの指示で難なくⅧ階層も攻略できた。
「リン様、Ⅸ階層は絶対魔法耐性のスライムです。魔法は一切効きません。斬撃でスライムの核を切り刻んでください」
「魔法を使うとどうなるの?」
「魔力を与えるとスライムが膨れ上がり、核までの距離が長くなります。無駄の何物でもありません」
「了解」
僕は今までの魔法使い姿からローブを想像変化させ体にフィットさせた。まるでブルー〇リーのようなトラックスーツ、色は白パールに黒い刺繍だがw そしてアイテムボックスからⅠ階層で使った巨大クラッカーの放出アイテム『如意棒』を取り出した。
(如意棒レアアイテムの1つ使用する者の想像しだいで様々な形に変化できる。錬金や強化などでスキルをつけられる。ちなみに、現段階の如意棒のクラスはAで、ステータスの変動は力が1%上がる。金剛石などのレアメタルなどでホーム従者の鍛冶屋でも作れる 所持数1 現実ゲーム内では長さが変えられる武器アイテム 長くなるほど攻撃力が弱くなる)
「想像」如意棒が変化しだした。真ん中の棒の部分より両側を薄く刀のように変化させ両刃を作った。
「おららららららららら!!!!!」
僕は、新体操のバトンように回して四方から来るスライムを粉微塵にしながら核を粉砕しスライムから出る液体も剣圧で吹き飛ばした。まさに無双である。
Ⅸ階層 魔法が使えないだけあって、時間がかかった。
「ふぇ~さすがに90000体は疲れたな」
如意棒の変化想像も、鞭にしてみたり、薙刀にしたり様々試した。弓も想像したが矢が無かったw
「お見事です。リン様 魔法使いのお姿も美味しそうですが、武道家スタイルも食欲をそそります」
た、食べられるの?
「アドミス ここスライムの迷宮は、Ⅹ階層が最後だったよね」
「はい 次で最後となります。攻略数は1 ダイヤモンドスライムとなります」
「硬そうだね」
「はい、名前の通り、ダイヤモンド級に硬度があります。リン様のステータスなら問題は無いでしょう」
「そっか、少し残念だなぁ」もう少し、強いモンスター出てこないのかよ。
とぼとぼとⅩ階層へと続く階段を下っていった。