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ナナミは鬼の子  作者: ふるたく
変化の時
9/11

別れ

僕はナナミを抱きしめたまま泣いていた。


そして、ナナミも黙って僕を抱きしめてくれた。


どう考えても、、、


別れからは逃れられないと僕は分かっていた。


でも、ほんの少しだけでも、近くに居たくて、黙っていた。


もう少しだけ、、、このまま、、、


僕「、、、、、、」


ナナミ「、、、、、、」












そして、


僕は静かに告げる。


僕「ごめん、、、ナナミの事、人に見られちゃったみたいだ」


すると、ナナミは、少しだけ驚いて






ナナミ「、、そっか」


と一言だけ。


2人はそのまま静かに時を過ごす。


残り僅かな、2人の時間を。


僕「、、、、、、、」


きっと、ナナミは覚悟していたのだと思う。ずっと前から。


だから、何も驚かない。


何も聞き返さない。


そして、僕の事も責めない。



ナナミ「、、、、、、」



そして、ナナミは"人に見られた"という事の意味を分かっている。


、、いや、それは僕がナナミの額に手を伸ばした時点で、


僕が"誰か"に"ナナミが鬼の子"だと教えられたのだと、分かっていた。


だから、その時点で、ナナミは自分の存在を他人に知られたのだと分かっていた。


人に自分の存在を見られたのなら、


次に、


何が起きるのか、も分かっていた。



だから、


自分がこれから何をしなくてはいけないのか、


そして


それをすれば、リオウとナナミの間に何が起きるのかまで


全て


全てを理解していた。


だから、僕がナナミを抱きしめた時に、抱きしめ返してくれたんだ。



もうすぐ、お別れになるから。



その前に



やり残した事を



後悔しないように、、、









けど


もう時間だ。



でも僕はそれを伝える。


伝えなくちゃいけないと、思った。



だって、そうしないとお別れ出来ない。


お別れしないと、ナナミは逃げられない。



僕「警察隊が来る。直ぐには来ないと思うけれど、きっと明日か、明後日か」


僕「多分、結構大人数で、、来ると思う」


僕「逃げて」


僕「逃げて、、、ナナミ、、」


僕「ごめん、、、ナナミ、、、」


僕「、ナナミ、、、」


僕は顔がくしゃくしゃになっていただろう。


涙と鼻水で、それは情けない顔をしていただろう。



でもナナミは


ナナミ「、、、、うん、ありがと」


と、一言だけ。


そして、ぎゅっと、、もう一度僕を抱きしめてくれた。



僕「、、、、、、、、」



そして


静かに離れる。



どちらから、ともなく



静かに、、、



お互い、、、




ナナミ「、、、、、、、、」



そして、お互いに無理して笑顔を作り


別れの言葉を


お互いに告げる



僕「じゃあ、、、」


ナナミ「またね」


と。


精一杯の笑顔で。


また明日会う約束をしているかのように。


普段と何も変わらない挨拶の様に。


ナナミは笑顔で、手を振って、、



そして、去って行った、、、




僕は


それを黙って、見送る




そして



僕は



無理矢理の笑顔を崩し、膝をついて


僕「ぅううう、、、ぅあぁああああ」



泣いた



僕「ぅああああああああああああああああああああああああ」



大きな声で。



気が狂ったかのように、、、





泣き続けた。




別れが辛かったから。




もっと一緒に居たかったから。




その日。






一日中





僕は、ずっと、、、







ずっと







泣いていたんだ、、、










、、、、




、、、





、、、
















--------------------------------------------------------


近年、


鬼と、人間の勢力図は急激に変わりつつあった。


それは銃というものが、世に出始めてから。





今までは、人は、鬼の身体能力に為す術もなくやられていた。


しかし、


離れた所から一斉に鬼に向かって銃を斉射する、というのを覚えてから


状況は一変する。


人が、鬼に勝利する事が増えていった。




すると



今まで奪われた分、今度はこちらが取り返す、とばかりに。


そうして銃を得た人が次々と鬼から領土を取り返してゆく。




それで、終われば良かった。



しかし人は、人の欲望は天井知らずで、




それは止まる事無く、どんどんエスカレートしてゆく。


次第に目的が「奪還」から「虐殺」に変わる。


人々は何かを楽しむように、鬼を虐殺していった。


鬼はその人から逃れるように、山奥へ逃げ込む。


しかし、山奥に逃げ込んでも人はそれを見つけ、


鬼を虐殺する。



その、繰り返し。




鬼の存在自体、悪、とでも言うように。







そういう背景があり、


ナナミは自分の存在を人に知られた時点で逃げなくてはいけなくなった。


それは、自分だけでなく、ナナミの村の人全員に伝え、逃げなくてはいけなかった。


虐殺から逃れる為に。


銃の斉射から逃れる為に。


逃げる以外に、選択肢は無かった。


会話は無意味。


説得も無意味。


僕が、人々に何を言おうと、無意味。




僕に人々の行動を止める力は無かった。



僕が何を言おうと


ナナミは良い子だから、大丈夫。


皆んな仲良くしよう、、って


言ったところで、、、、


言ったところで、そんなの無意味だった。


だから、僕はナナミを逃す事しか出来なかった。





(それは、僕に力が無かったから。)







意識は暗闇に溶けてゆく、、、


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