ナナミ3
翌る日
ジョウイ「お前、あの女は人間じゃないぞ」
僕が村で畑仕事をしていると
ジョウイがやってきて開口一番、僕にそんな事を伝えてきた。
僕「え?」
それは青天の霹靂とでも言うのだろうか。
僕は突然のその言葉に驚いていると
ジョウイは矢継ぎ早に言葉を繋げる。
ジョウイ「昨日、こっそりお前の跡を付けたんだよ」
ジョウイ「お前の成長の秘密を知りたくてな」
ジョウイ「そしたら、なんかお前女と会ってるじゃねーか」
ジョウイ「しかも超美人」
ジョウイ「あんな美人と会っていたら、良いところ見せたくて、それで頑張って頑張って頑張って鍛錬してよ」
ジョウイ「そりゃ、お前も強くなるってもんよ、、、って思ったんだ。」
ジョウイ「思ったんだけどよ」
ジョウイ「けど、よく見たらお前」
ジョウイ「あの女、鬼じゃねーか」
ジョウイ「お前、騙されてるんだよ」
ジョウイ「あの、女は人の形をした、鬼だぞ」
ジョウイ「お前、食われちまうぞ」
ジョウイ「今までお前の命があったのは奇跡だぞ」
ジョウイ「それより、お前、この村の事何か言ったか?」
ジョウイ「鬼達がやってきて皆んな食われちまうぞ」
ジョウイ「俺は警察隊に連絡するからな」
ジョウイ「分かったな」
ジョウイ「もう二度とお前はあの鬼に会うなよ」
ジョウイ「絶対に会うなよ?」
ジョウイ「お前は騙されてるんだからな」
ジョウイ「皆んな食われちまうぞ」
ジョウイ「あーー、早く警察隊に連絡しなきゃ、、、」
ジョウイ「まさか、こんな村の近くに鬼がいるなんて」
ジョウイ「夜もおちおち寝られねえ」
ジョウイ「あん?鬼と人の見分け方?」
ジョウイ「そりゃ、お前え」
ジョウイ「角があるか無いかだろうが」
ジョウイ「お前、そんな事も知らねえの?」
ジョウイ「あの女には額に角があったろう。」
ジョウイ「前髪で隠してたみたいだが」
ジョウイ「全然隠しきれてなかったぞ」
僕は、、、その話を、、、じっと聞いていた、、、、
鬼??
ナナミが、、鬼??
人じゃ無い?
僕はその言葉の意味が分からなかったんだけど、頭の隅の方で、、
ナナミの不思議さの理由がそれで全て説明出来てしまうな、、、
という事を、、、理解してしまっていた、、、
僕は、、、慌てて走り出した。
山へ
ナナミといつも落ち合う場所へ!!
ジョウイ「あ、お、おい!!」
ジョウイが僕を止めるべく声を発する
ジョウイ「山にはもう行くなって!!」
でも、僕はそんなのではもう止まらない。
ジョウイ「あーー、くそ、俺は今から警察隊に連絡するからな!」
ジョウイ「分かったな!!!」
そんな、声が背中の方から、小さく聞こえていた、、、、
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僕「はあ、はあ、はあ、はあ、」
僕が山に
いつもナナミと落ち合う場所へ辿り着くと、そこにはもう既にナナミがいた
そして
ナナミ「あら、リオウ?」
と、思った以上に早く到着した僕を見つけて
それが嬉しかったのか微笑みながら近づいてきてくれた。
ナナミ「ねえ、見てよ!もうこんなに採れたんだよ!」
と、言って籠の中にある大量の木の実や山菜をジャーーーン、という感じで見せてくれる。
ナナミ「ふふ、これなら今日はいっぱい遊べるね!」
ナナミはとても嬉しそうだった。
僕「はあ、、はあ、、、はあ、、」
僕は息を整える。
ナナミの目をじっと見る。
僕「はあ、、、はあ、、、はあ、、、」
いつもなら、ナナミのその行動は僕はとても嬉しくて、喜ぶべきところだ。
でも
ナナミ「ん?リオウ?どうしたの?」
僕の変化に気付いたのか、ナナミはそんな声をかけてくれる。
(ナナミは、、、凄く気が付く、、、ヒトなんだ、、、)
(僕と、、、違って、、、、)
僕は
ナナミの問いかけに答えず
僕は黙って右手で
ナナミの額に触れる
ナナミ「えっ!???」
その瞬間
その、僕の行動に本当にびっくりしたのか、ナナミは籠を地面に落としてしまった。
てん、てん、てん、、、と
その、衝撃で、、、中にあった山菜と木の実がバラバラと零れ落ちる。
木の実がコロコロ転がっている。
コロコロコロ
コロコロコロ
コロコロ、、コロ、、、
、、、と。
でも
僕は、それには全く気を止めず
僕は、、、ナナミの額を、、、さわさわと触っていた、、、
ナナミは何も言葉を発せず、じっと、僕の行動のなすがままにされている。
そして、僕の、目を、見ている。
じっと、、、、
悲しそうな、、、目で、、、、
僕を、、、、、
、、、、
、、、
、、、、
僕は、、、その手の感触に
自分には無い、、違和感を、、感じていた、、、
(角、、、、、、)
僕はさわさわと、それに触れている。
僕の目から涙が溢れ出す。
ナナミは
やはり僕の行動を咎めず
僕のなすがままで
でも、
そっと一言
ナナミ「とうとう、バレちゃったね、、、」
なんて、苦笑いをしていた。
僕は、、、、僕は、、、、
目に、涙を浮かべ、、、、
ナナミを抱きしめていた、、、、
そして僕はわんわん泣いていた。
子供のように。昔のように。
その、別れを予感して、、、、
ナナミは、そんな僕をそっと
抱きしめてくれた
僕は、、ずっと、、、
泣いていた、、、、