ナナミ
深夜、、、、
僕は目隠しをされ、変な女の子に抱えられ、どこぞに運ばれていた。
目隠しで僕は暗闇に包まれている。
風切り音だけが、聞こえる。
最初は気になった上下運動も次第に気にならなくなっていた。
そしてそれから10分程して、、
女の子「よっと、、、」
と、地面にゆっくりと僕の足を降ろし
女の子「立てる?」
と、心配そうに尋ねてきた。
僕は女の子に肩を借りて立っている状態。
そこから、ゆっくりと、手を離し
自分で立ってみる。
少し、、、足首から痛み、、、がした。
でも、
そこまでではなかった。
だから
僕「う、、、うん」
と、"何とか立てる、大丈夫"、と女の子に応えた。
これなら、ゆっくりならば歩けそうだった。
女の子「ここまでだね。ごめんね」
と、女の子は僕の後ろに立ち、僕に掛けられていた目隠しを外してそう言った。
そこは、、、
僕の、村の近くの山の中腹だった。
僕が、良く山菜採りをしている所。
良く、見知ったところ。
帰り道が分かる、ところ。
そして、振り返り、女の子を見ると、
その子は僕の方を向いてニコニコして立っていた。
(、、、、、、、、)
思わず息を飲む。
(やっぽり、凄く可愛い子だった)
僕はその美しさに思わず魅入ってしまっていた。
そして、僕はその瞳に吸い込まれそうになり、思わず目を逸らす。
女の子は
「帰れる?」
と僕の事を心配してくれているようだった。
これは、、、鬼婆でも、狸や狐に化かされているのでは無く、
僕は、この子に助けられたんだ、
と、理解した。
だから僕は
僕「うん、、帰れる。送ってくれてありがとう」
と、答えたんだ。
その、答えがその子は嬉しかったみたいで
女の子「そっか、良かった」
と、微笑んだ。
そして、
女の子「じゃあ、、、ね」
と、その場から跳躍して、上の木の枝に飛び移る。
(え、、、、、、)
(凄い、、、、)
僕は思わず目を丸くした。
あんなに高く飛べるなんて、彼女は忍者だろうか。
そうか、それならば、あの華奢な体で僕を軽々と持ち運んだ理由も分かる。
僕が感心していると、
その女の子は木の上から僕に向かって声を掛けてきた
女の子「私の名前はナナミ!!!貴方は???」
、、、それは自己紹介だった。
僕はそれでお別れだと思っていて何処か残念な気持ちだった。
でも、名前を交わせば、また会えるかもしれない。
そう、思って
僕「僕は、、、僕の名前は、、、」
僕「リオウ、、、!!僕の名前はリオウだよ!!!」
僕は、目一杯の声でナナミに応える。
それを聞いたナナミは
ナナミ「うん、分かった、リオウね!」
と、確かめるように名前を呼んでから
もう一度
ナナミ「じゃあね!!おやすみ!!!リオウ!!!」
そう笑顔で言って、僕に向かって手を振り、
そして
木の枝から木の枝に。
鮮やかな身のこなし、軽く、飛び移る。
それは、自分にも出来そうだと思わせる程に簡単に。当たり前の様に。
ぴょん、ぴょん、ぴょん!、と。
僕は
「うん、おやすみ!ナナミ!!!」
と、遅れながらも応える。
それは友達同士の会話のよう。
僕は、初めて友達ができたと思った。
、、、、
、、、
もう彼女の姿は見えなくなっている。
僕はその様子をもう少しだけ見て、
そして
持っていた自分の服に着替え、そして
村に向かって歩き出した。
手には彼女が僕に着せてくれた白い布の服。
そして
(ナナミ、、、か。凄い子だったな)
僕はそんな感想を一人で漏らす。
不思議な、、色々あった一日だった。
山で転んで、死ぬ思いをして、そして最後には友達(?)が出来た。
(僕は友達って思ったけど向こうはどう思っているかな)
それは分からなかったが、何となく彼女も同じ気持ちでいてくれると思った。
僕は足の痛みを忘れ軽やかに家に帰る。
こんな遅くに帰ってきて、しかも手ぶら。
母に凄く怒られるに違いない。
でもそんな事を全く気にしなかった。
ただ、とても良い事があった、と
僕はとても良い気分だったのだから、、、、、
それが、、、
僕とナナミの最初の出会いだった、、、、
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深夜
リオウと別れた後
私は木から木へ飛び移る。
ぴょん、ぴょん、ぴょん、と
自分の里に帰るために。
と、その途中で
(あ、、、パパのバスローブ、、、持って帰るの忘れちゃった、、、)
ふと、そんな事を思い出す。
でも、
(ま、、いっか)
そんな事は1秒で頭の隅に追いやられた。
それよりも
私「リオウ、、、、リオウか!」
私「あの子の名前はリオウ!」
私は嬉しくて思わず声に出していた!
(ちゃんとお礼も言ってくれたし、いい子だったよね)
一人そんな事を考える。
人間も悪い人ばかりじゃないのかな、と。
ふふふ
笑みが零れる
(また、、、会えるかな)
次に考えたのはそれだった。
会えるか?会えないか?
それはどうだろう。それは、きっと会えると思う。
だって、私は今度あの子に会ったら声をかけるから。
私はあの子と会った場所にまた行くから。
そして、あの子を私を見てくれる。
挨拶してくれる、に決まっている。
だから、会える。会えないわけがない。
(うん、会いに行こう)
(今日はちゃんとお話し出来なかったけど)
(次会ったら色々お話ししよう)
(色々聞きたい事があるし!)
人間の友達が出来た。
今日はなんて良い日なんだろう!
私はそんな風に気分良く、家に帰った。
でも、
そこで待っていたのは
鬼の形相の父と母と
そして
私に与えられた
長い長い
長い
外出禁止令だった、、、、、