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ナナミは鬼の子  作者: ふるたく
プロローグ
1/11

雨の次の日

「人間の里には近づいてはいけないよ。」


ナナミは小さい頃から耳にタコができる程親からそれを聞いてきた。


ナナミ「はーーーーい、分かってまーーす」


(そんな事言われなくても分かってるよ。)


(怖い人間の所なんて行かないよ。)


ナナミは自分でそう思っていた。


だから人間の里になんて行く訳が無い。


そう思っていた。


でも、ナナミは自分で自分の事が分かっていなかった。


、、、自分がどれだけ好奇心旺盛かという事を、、、。


その日も山でナナミは一人遊んでいた。


山は楽しくて、時間の経つのを忘れてしまう程に。


そして、ついつい、遠くへ出掛けてしまう程に。


それが、人の里の近くまで行ってしまう程に。


木の上でくつろいでいたナナミはふと、何かを見つける。


(ん、、、、あれは、、、)


(人間の子供、、、、だ)



初めて見る人間。しかも自分と同い年くらいの子。


(へえーーー、見た目は鬼も人間も変わらないんだね。)


(てことはあの子は13歳くらいかなあ?)


人間はナナミの存在に全く気付いていない。


ずっと下を向いていて、ナナミの居る木の上など全く見る気配が無い。


だから、ナナミはその人間をもっと観察しようと思った。


(別に人の里に近付いてる訳じゃないし).


そうやって、自分に言い訳をして、人間を観察し始めた。


(あの子、、何、、、してるんだろ、、、)


(山菜を採ってるのかな?)


(食べるものも人間も同じなのかな?)


見れば見る程に興味が増して行く。


ナナミはその子をずっと見ていた。


(なんかヒョロッとしてて弱々しいなー)


(今にも直ぐに倒れちゃいそう)



、、、と。


(あっ)


ナナミは小さく声を上げてしまう。


少年は手に持っていた山菜を鞄に閉まって、とことこと山の下の方へ歩き出したからだ。


(あれ、、、もう帰っちゃうのかな、、、)


少年は見る見る内に見えなくなっていく。


(やっぱり、里に帰ったんだ)


何故か残念な気持ちになる。


(もっと、、、見ていたかったんだけどな)




しかしながら、ふと辺りを見ると。


もう日は落ちかけていて、自分もそろそろ帰らなくてはまずい時間帯だった。


(私も、、、帰らなくちゃ)


ぴょん!!



ナナミは木から木へ移り渡る。


ぴょん、ぴょん、ぴょん!


そのジャンプ力、身のこなしは忍者を思わせる程。


ぴょん、ぴょん、ぴょんっ



と、


ナナミは少し立ち止まり、後ろを振り返ってふと思う。


(明日も、、、あの子、来るかな??)


そんな事を思ってから、もう一度ナナミは自分の里を目指して動き出す。


木から、木へと。


ぴょん、ぴょん、、と。


と、顔が、にやけているナナミ嬢。


(明日も探してみよう)



ふふふ


そんな事を思いながら、ナナミは自宅へ帰るのであった。



その時のナナミの頭には"人間の里に近付いてはいけない"と、"人間に近付いてはいけない"は同じ意味、だということが全く分かっていなかった、、、。











この国には人と鬼との争いがあった。


それは過去を遡れば千年ほど前から


その争いはあったそうだ。



そしてそれは今もなお。



未だに続いている、、、。




------------------------------------------------------------

僕は小さい頃は体が弱かった。


家が貧乏で食べるものに困っているという事も要因の一つだったのかもしれない。


理由はともかくとして、僕は村の子供たちにいじめられる事が多かった。


母親にそれを告げても何も助けてくれなかった。

母親「それよりもちゃんと働いておくれ」


母が言う言葉はそればかりだった。


家は農家だった。農家は基本的に収穫の時は以外収入が無い。


そのため1日の畑仕事が終わると、父も母も、日銭稼ぎに違う仕事をしていた。


当然、僕も何かしら働かなくてはいけない。


色々な仕事を試してきたが、僕は今、山に行き山菜やキノコ、木の実などを採ってくる、という事を自分の仕事をしている。


その仕事が割に合うか合わないかで言えば


全く合わなかった。


ある程度の収穫を望めば、辺りがギリギリ見えるくらいの時間まで山菜採りをしなくてはいけない。


常に山道を歩き回らなくてはいけない。


毎回毎回採る場所を変えなくてはいけない。


しかも安く買い叩かれる。


けれど。


僕はそれを選んだ。


だって、山に居れば誰にもいじめられ無いんだから、、、、




------------------------------------------------------------

言い忘れていた。


僕の名前はリオウ。


13歳。


この農村で暮らしている。


この辺りはどの家も貧乏で僕と大差ない暮らしをしていたと思う。


その中にあって、僕は体が小さかったために村の子供たちにいじめられていた。


だから、僕は山に篭る仕事を選んだんだ。






その日も、いつもの様に、朝早く、家の仕事をこなしてから、山に来た。


何となく今日は遠くまで行ってみようと思い勇んで山の奥へ向かった。



昨日は雨が凄くて山に入れなかった。


だから今日は、昨日の分まで取り戻さなくてはいけないんだ。








僕「はは、やっぱり遠くに来て良かった」


そこは人里から中々に遠い位置にある場所だからだろうか。


山菜、木の実、キノコ、果実など山の様に採れた。


僕「今度からここに毎回来ようかな」


僕はとても良い場所を見つけて、気分が上がっていた。


(ふふ、これなら母さんも喜ぶぞ)









、、、だから、だろうか。



そんな風に多くの収穫を手にしてしまったからだろうか。





、、、僕は、油断していた。


甘く見ていた。山を。


だから、今自分がいる場所は、土地勘が無い場所だという事を


雨の次の日の山は危険が多いという事を


僕は完全に失念していた。


僕は、目の前の収穫に、


昨日の遅れを取り戻す事が出来たという自分に酔いしれていた。


夢中になってしまっていた。


(大漁だ!やったね!)


だから。



その地面がぬかるんでいて滑りやすいという事を


僕は見過ごしてしまった。





ズルッ!!!!!


僕「わああああああああ」






、、、後悔してももう遅い。





僕はズルっと足を滑らせ、斜面を10メートル程、下へザザザザサ、と、滑り落ちてしまった。


僕「いた、、、いたたたたたたたた」


僕は腰にさすりながら思わず声を上げる。


僕「痛かった、、、、、」


まいった、随分と落ちてしまった。


僕は落ちて来た方向に目を向ける。


僕「まいったなーー」


それは、随分と高い位置に見える。



、、、そして。



ズキン!!!


僕「あ、、、痛、、、、、、」


と、痛みが走る。


(しまった、、、)


、、、これは、、、


(まずい事になった。)


(足を、、、)


、、、僕は、足首を痛めてしまったようだった。


僕「痛っつ、、、、、」


足首が、、、、ズキズキする、、、。


僕は上を、戻るべき場所をもう一度見上げる。


僕「、、、、、、、、、」


この足では到底この斜面を上がる事は出来ない、高さ、、、。


かと言って、


足が治るまでここに居たら僕は死んでしまう。


だって、、


先程まで山菜採りに夢中になっていたから気が付かなかったけれど


今日は一段と冷えている。


体も濡れてしまった。


こ、、、


これは、、、


、、、この、悪条件は、、、


(これは、、、、助からない、、、、、)



若干13歳。その僕でも分かる、"助かるか助からないかの境界線"。



唯一助かる道があるとすれば、誰か、人が通りかかってくれた場合。


しかし道を外れてこんな所に来る人なんているわけが無い。


僕の希望は瞬時に僕によって否定される。


(人が、、、通りかかる、訳が無い、、、)


可能性は無い。


しかしゼロではない。


通りかかる訳が無くても、僕は声を出さなくてはいけない。



だって、その可能性が殆ど無くても。


その可能性さえ捨ててしまったら、僕は絶対に死んでしまうのだから。


僕「おーーーーーーい」



僕「誰かーーーーーーー」



僕「おーーーーーーい」



僕「助けてくれーーーーーーー」



僕は出来るだけ遠くまで聞こえるように声を出す。



僕「おーーーーーーい」



僕「誰かーーーーーーー」



声を張り続ける。



僕「おーーーーーーい」



僕「誰かーーーーーーー」



声を出し続けなくては生き残る可能性がゼロになってしまう。



僕「おーーーーーーい」



僕「助けてくれーーーーーーー」



、、、、、、、。




、、、、、、。




、、、、。




、、、、。




気がつくと、もう辺りは暗くなってきている。


そしてパラパラと雨も降ってきた。



体はもう完全に冷え切っている。




もう、、、声を、、、出す、、、、




気力も、、、無い、、、、、




、、、、、、





、、、、





早かったな、、、僕の人生、、、、




後悔は無い、、、、



後悔は無かった、、、




だって、生きているだけで辛い日々だったから、、、、




せめて、、、次、



生まれ変わる時は、、、、




もう少し、、、、




良い家庭に、、、生まれて、、、、




きたい、、、、な、、、




、、、、、




、、、





、、、





、、、




僕の意識は暗闇に落ちて行く。




もう、、目覚める事はないだろう。



僕は、自分の事ながら、そう




思った、、、、、
















ナナミ「、、、、、、、」


(どうしよう。)


迷っている。


あの日からずっと見続けた人間の子が動かなくなってるみたいだ。


(どうしよう)



木の上からずっとあの子を見ているが、もう体力の限界だろう。


雨もパラパラ降ってきた。


、、、あの子は、とても体力のある方には決して見えない。



(しん、、、じゃう、、、)



そう、思ったら、体が勝手に動きだした。


ぴょん、ぴょん、ぴょん!


っと、つい、少年の側まで来てしまった。


(、、、、、、、、)


手を、伸ばせば、届く距離。


(、、、、、、、)


少年を見ると、気を失っているようだった。


(今なら私の事は見られない)


これなら、、、助けても良いんじゃないのかな


決意を固める


(ええい!どっちみち、見られても構わない!だってこのままじゃ死んじゃうよ、この子!)


ナナミは思い切って少年を抱え、跳躍する。


ピョーーーーーン


そして、ぴょん!ぴょん!ぴょん!


と、自分の里まで連れて行くことにした。


(今日は父さんも母さんも帰って来るの遅いって言ってたから、バレないで家に入れるかもしれない)


ぴょん、ぴょん、ぴょん!!


ナナミの運動神経を持ってすればこの少年程の重さを持って駆けるのは容易い事だった。


(この子、冷たい、、、大丈夫かな、、、)



ナナミは


人間を里につれてゆく事で、もしかしたら自分は罰を受けるかもしれない、、、という自分の心配よりも


少年が助かるか、助からないか


そればかりを考えていた、、、










ピョーーーーーンピョン!ピョン!

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