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竜の如き異様  作者: 葉月
2章 友との旅路と巡り合う過去
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第72話 再び集う者たち


後半にステータスと説明ラッシュ。

「そんなもの要らん、というか消えろ」という方は後半のスルー推奨。


「じゃあなんで私の復活を涙ぐんで喜んでないの!? もしかして私要らない子なの……?」


「…………い、いや、あまりに唐突だったからびっくりしてるだけで、喜んでないわけじゃないんだが……」


 冷たい視線でこちらを睨んだと思えば、今度は急に涙ぐみ始める燃香。あまりに唐突な展開についていけない俺は少しの間、黙り込んでしまった。


「じゃあ、感動の再会のハグは?」


「「……!」」


 むすっとした表情で告げた燃香の指摘で今、自分たちがどんな状況にあるのかに思い至った。俺とニオンは彼女の前で堂々と抱擁を交わしているのだ。それに気づいた俺は気恥ずかしさで自分の顔が熱くなったことを実感し、抱擁を解いてニオンから少し距離をとる。

 余程、また会えたことが嬉しかったのか、ニオンは自分から離れようとはせず、俺が離れた時は少し名残惜しそうだったが、機嫌が悪くなったわけではないようだ。

 もっとも、一方の燃香は未だに不機嫌そうだが。

 まあ、なんらかの手段で復活して、「感動の再会」を果たすべく俺の元まで来た燃香からすれば、自分だけ蚊帳の外で俺とニオンだけで一足先に「感動の再会」をしていたのだ。そりゃ不機嫌にもなるか。


「こ、これは、その……勢い余ってだな?」


「そ、そうですよ、他意はありません。変な意味もないですよ?」


 燃香の指摘で、やましい意味があるわけでもないのに俺たちは2人揃ってあたふたしたながら誤魔化す。俺もニオンと同じように動揺してはいるが、普段は見れないニオンの慌てた様子が見られてやや新鮮な気分になりながらの動揺だ。


「……ふーん、なら、こうだ!」


「ぬわっ!?」


「みゅ!?」


 一瞬さらに不機嫌そうな表情になったかと思えば、さっきまでの表情からの変化が不気味に映るほどにっこりと微笑むと、燃香はなにを考えたのか突如として俺たちの元に飛び込んできて俺とニオンをきつく抱き寄せてきた。

 結構な膂力で抱き締められ、その苦しさから燃香に文句を言おうとして彼女の顔を見た時には、俺の頭からその考えは消えていた。燃香は今にも涙しそうではあったが、嘘偽りのない本物の笑顔だったからだ。ニオンに先を越されてしまってはいるが、彼女にとっては正しくこれが感動の再会なのだ。当事者としてはこの場面に水を差すわけにはいかない。


「……2人とも温かい、生きてるんだね。本当によかった。もう2度と3人で揃って会えないと思ってた」


「「燃香……」」


「ところでニオンは無事……じゃなかったよね。腕とか下半身とか再生してるし、どうやって復活したの?」


 その笑顔に、苦しさも忘れてしばらく抱き締められていた。どれほどの時間が経ったのか、ふと思い出したように燃香はニオンを見つめて問いかけた。


「……確かにあの時、私は死にました。ですけど、燃香はあの時、私の死を確認してはいませんでしたよね? そしてそうであるにも関わらず、私の死をさも確定事項のように言われるのは少し不愉快です」


「ご、ごめん……」


「ニオン、なにもそこまで言わなくても……」


 死者の蘇生という、本来起こり得ないことが起こったこの状況下では、その問いを発するのはなんら不自然ではないはずだ。

 しかし、燃香のその何気ない一言が癇に障ったのか、ニオンは眉を顰め、まるで罪でも暴くかのように責め立てた。まさか責められるとは思っていなかったのか、その言葉に彼女は動揺して一瞬ピクリと震えると、燃香は抱擁を解いて後退りしつつ、ニオンの気迫に負けて流されるままに謝った。

 ニオンらしからぬ言動と対応に俺は少し疑問を覚えるが、確認してもいないのに勝手に死亡扱いされるのが嫌なのだろうと、そう解釈して俺はニオンを諌める。


「……すみません、少し言い過ぎました。……生き返ったんです。ユウリのラドンの《黄金の林檎》の能力で」


「……その……あの、でも結理君の竜の能力、ラドンは同じ空間にいる味方の状態異常に耐性をつける《楽園》と盾として耐久をする《守り手》の2つだけだったよね? 《黄金の林檎》なんて能力持ってなかったと思うんだけど……」


「それは……なぜなんでしょうね……?」


「……それがな、今さっき3つになったんだよ」


「……? それってありうることなの?」


 俺に諌められたニオンはハッとして我に帰り、不機嫌そうなことに変わりはないままだが申し訳なさそうに燃香に謝り、今ここで再会を遂げた理由を答えた。

 それに対して燃香は、さっき責められたことが尾を引いているのか、いつもと比べてかなり遠慮がちに、というより萎縮した様子でニオンの顔色を窺いながら問いかけた。そしてその問いの答えを、ニオンと燃香はなぜなのかと言いたげな雰囲気を醸し出しながら俺を見つめる。


「どうだろうな。こればっかりはなんとも言えない。けど……」


「けど?」


「ラドンの場合は最初からそういう力があったと考えるのが自然だろうな。元ネタの神話に登場するラドンも黄金の林檎を守ってたし……まあ、ほとんど憶測だが」


「うーん、結局よく分からないってことになるのかな。でもそれをどうしてどうしてって延々と考えてるより、これからを考えた方がいいかもね……あ、そうだ! こうして3人揃ったわけだし、祝杯でもあげようよ!」


「祝杯ですか? 今から?」


「今から!」


 燃香はニオンに言われたことを気にしているのか、いつものような溌剌とした雰囲気がなく、悪くなった空気を払拭するかのように祝杯を提案した時の笑顔も空元気のようで、無理をしているようだった。けれど、心からそれを望んでいることは伝わった。


「一応聞くが、強制参加なのか? 俺はお酒飲めない年齢なんだが……」


「大丈夫。ラドンを呼び出しておけば、状態異常に耐性がついて酔わなくなるからなんの問題もないない!」


「そうか……? アルコールを摂取することに変わりはないと思うんだが……」


「気にしない! この国なら結理君はお酒を飲んでも大丈夫な年齢だよ? と、いうわけで祝杯だー!」


「「お、おー……」」


 その後、3人揃って見事に酔い潰れたのは言うまでもない。






「おのれラドン……途中から仕事をサボったな……」


 翌日の朝、鳥の鳴き声と顔に降り注ぐ直射日光で目を覚ますと、太陽に照らされて出来た木の影の向きがいつも起きる時間に見ているものと違うことから、最大に寝過ごしたことを悟った。

 そして祝杯の途中から記憶がないことに気づき、なにか取り返しのつかない過ちをしていないか戦々恐々としながら恨み言を呟いていると、呼び出してもいないのにラドンが独りでに現れて、シューッと言って反論した。


「言いがかり? ……え、マジか」


 ラドンの弁明では、《黄金の林檎》使用の代償として、《楽園》の効果である状態異常耐性の持続時間が永続から1時間に弱体化し、再使用に1日かかるようになったとのこと。

 死者蘇生の代償がそれだけで済んだのはなによりだが、時間制限は結構手痛いな。もう前みたいにはいかない、ということか。


「……とりあえず、朝ご飯でも作って、そのあとに2人を起こすか」


 祝杯が始まった当初こそギスギスしていて険悪そのものだったが、いざ飲み始めるとラドンの《楽園》の能力が発揮されているはずなのに、2人して酔っ払い(無論、俺もだが)、揃ってお互いに対して愚痴を言い合い始めた。(無論、俺も)

 飲んでいた時は場酔いでもしたのだろうと、あまり深く考えなかった。というより自分も場酔いしてまともな思考能力がなかったので、2人の上がり続けるテンションに流されるままに飲みまくっていたのであまり記憶がない。


 件の祝杯の一部始終はと言えば、




『そこでね! わたひがゆーしゃの足をレタスみたいに千切りにひたら、連れのナオンがピーチクピーチクゆうからぁ、喉が渇いちゃってれ! その血を一気に飲み干して……はないけど、おいひくいただいちゃったの!』

(訳:そこでね! 私が勇者の足をキャベツの千切りみたいに細切れにしたら、同じパーティの女の子が煩かったし、丁度喉が渇いていたから吸血したの!)


『すみません、よく聞き取れませんでした』

(訳:すみません、よく聞き取れませんでした)


『うぇー!? わたひのぶゆーでんが飲めないってゆーのかぁー? ホラ! もっとお風呂みたいに飲まにゃいとこの燃香ちゃんに無礼であるじょ! 頭がトーレスト!』

(訳:ええ!? 私の酒が飲めないって言うの? ほら、もっと浴びるように飲まないと主催者の私に失礼でしょうが! 頭が高い!)


『すみません、よく聞き取れませんでした』

(訳:すみません、よく聞き取れませんでした)


『ふぐぅ……ティフォン、ティフォンをティフォンしてティフォンのティフォンにティフォンするティフォ! ティフォ! ティフォ!』

(訳:ティフォン、先制攻撃を回避して隙だらけの敵にかえんほうしゃするんだ!)


『すみません、よく聞き取れませんでした』

(訳:すみません、よく聞き取れませんでした)


『あー! それ、わたひのニオン! ゆーりにはあげないんだかりゃ! この愛いヤツめー! ぎゅー!』

(訳:あー! それ、私のニオン! 結理君にはあげないんだから! この愛いヤツめー! ぎゅー!)


『燃香だけズルいんだから! ニオンは皆んなのなんだから! ズルいんだから! ティフォティフォ!』

(訳:燃香だけズルい! でもニオンは誰のものでもないんだぞ!)


『すみません、よく聞き取れませんでした』

(訳:すみません、よく聞き取れませんでした)




 ……うーん、ダメだ。記憶がぼんやりし過ぎてうまく言語化できない。しかし、黒歴史が誕生したわけではないはずだからなんの問題もないな。うん。


「おはようございます、ユウリ。昨日は楽しかったですね」


「ああ、たまにはああいうのも悪くないな。それに燃香と仲直りできてなによりだ。そろそろ朝ご飯にするから燃香も起こしてくれ」


「別に喧嘩していたわけでは……まあ、元の3人に戻れたのは幸運としか言いようがありませんね」


 朝ご飯の支度をしながら、はっきりとは思い出せない昨夜のことを回想していると、起きていたらしいニオンがキッチンに入ってきていた。ニオンの反応から察するにどうやら昨日の喧騒の中で2人は仲直りできたようだ。それに表情が柔らかい。なにかいいことでもあったのだろう。


「ふにゃ? 私のニオンはどこかにゃ?」


「まだ酔ってるのか……」


「まだ酔ってるんですね……」






 朝食を3人で食べ終えてからしばらく雑談をしていると、今後の方針をどうするか、という話になった。俺としてはこの世界に来てもう半年になるし、そろそろ本格的にSランク冒険者になってAランクダンジョンに行って時空の石を入手したいところだ。

 しかし、Sランク冒険者になるのはやはりハードルが高い。ならば採掘しにいくのではなく、購入するという方向性に切り替えてはどうだろう、ということで調べてみたところ予想外の事実が待っていた。時空の石は本来の用途の需要こそほとんどないが、その美しさから宝石としての需要はかなり高く、その産出量が少なさも相俟って、本来の用途で使用できる物を買うとなると豪邸が建つほどになるらしかった。

 探すにしても買うにしても、今の俺たちでは不可能だ。Sランク冒険者にならなければAランクダンジョンには入れない(以前こっそり入ろうとしたら即バレしたし、ニオンと燃香だけに行かせるのはフェアじゃないのでそれはなしだ)し、あまりに高いので今のランクで受けられる依頼では時間がかかりすぎる。つまりどちらにしてもSランク冒険者にならなければならないのだ。


 それらを加味してそれ以外で元の世界に帰る手段を探すのもあり。けれど、現状の目標は時空の石の確保のためにSランク冒険者になることだと告げると、2人もその考えに賛同してくれた。そこに燃香は初めて会った時に言っていた『果たさなければならないこと』も手伝ってほしいと付け加えたが、特に断る理由もないので俺もニオンも承諾した。けれどその『果たさなければならないこと』の内容は教えてはくれず、その時になったら教えると言ってはぐらかされてしまった。そんな燃香にニオンはなにか言いたげだったが、なにか言いにくい理由があるのだろう、と俺も聞きはしなかった。


 出会ったばかりの頃のニオンは、俺が元の世界に帰る時はどうすると問うと、どうにかしてついていくと答えた。それは今も同じらしく、同行すると答えてくれた。一方の燃香は、その時になったら決めると言った。どちらの世界でも追われることに変わりはないから慎重に決めたいとのこと。

 その過程でお互いのステータスを確認した時のことだ。


————————————————————————


 葉桜結理 人間? 男性 18才


 LV.107


 HP 1593/1593

 MP 660/660


 筋力 845

 耐久 1211

 魔力 838

 魔防 697

 俊敏 1029


 スキル 聖なる献身:B

     察知:A+

     闘魂:SS

     俊足:A++

     隠匿:B

     背水:S

     毀れの手:S+

     不和:EX

     不浄体質:EX


 融合能力 柔装甲:C

      先読み:E

      武辺:D

      勇壮:D

      点火:C


 適性 火:A

    水:C+

    土:B

    風:C

    雷:C+

    無:B++


 特性 ・硬化兵装:E

    ・邪竜回帰:E

    ・邪眼:S

    ・混血:C

    ・竜鬼の誓い:C


————————————————————————


 ニオン 究極種 ? 70才


 LV.103


 HP 1083/1083

 MP 301/301


 筋力 903

 耐久 504

 魔力 578

 魔防 529

 俊敏 4572


 スキル 隠匿:S

     複眼:A++

     心の眼:A

     立体機動:A

     分身:C

     吸血:D

     人間化:SS

     剣技:A

     貫通:B+

     隠微:B

     凶手:C

     危険予知:B

     探知:EX


 適性 土:S

    風:S++


 特性 ・神速:A

    ・超音速:A

    ・竜鬼の血脈:E

    ・完全身体:EX

    ・黄金の生命(超越):EX


————————————————————————


 高野燃香 吸血鬼(鎮静化) 女性 21才


 LV.112


 HP 1673/1673(半減)

 MP 1250/1250(半減)


 筋力 921(半減)

 耐久 850(半減)

 魔力 1046(半減)

 魔防 907(半減)

 俊敏 978(半減)


 スキル 吸血:B++

     高速機動:B+

     流体操作:A+

     術技:A++

     剣技:S+

     過熱:B

     鋼の心身:A++

     予見:A++

     隠匿:B+

     サバイバル:EX

     戦線離脱:A

     真の眼:A+

     鎮痛:C

     備蓄:A+

     適応力:B

     闘魂:B

     背水:D


 適性 火:EX

    水:A+

    土:A+

    風:A+

    雷:A+

    無:S


 特性 ・不死鳥再生:A+

    ・不浄の炎:EX

    ・超再生:A

    ・装甲破壊:EX

    ・情報発火:A


————————————————————————


 人間? ってなんだよ。俺は間違いなく人間のはずなのにステータスに「?」が浮かぶようになっていた。


 もっとも変化したのはそれだけではなかった。《聖なる献身》は、説明を見るに、竜たちが俺を身を挺して守ったことが原因で変化したスキルのようだった。なんで俺が持ってるんだよ、という話だが。効果は回復力とHPMP自動回復のさらなる強化と自分の残りHPやMPを味方に分け与えることができるというもの。

 2人のスキルや特性にも気になるものが、これだけは今聞いておきたい。


「なあ、なんで《闘魂》と《背水》持ってるんだ?」


「結理君の右腕を食べたら手に入った」


「ええー……」



今さらですが、スキルやら適性やらのランクは、

「E→D→C→B→A→S→SS→EX」

となっています。それプラス、SSとEX以外に+が最大2つ付いての20段階評定になってます。

(紛らわしい以外の何物でもない。どうしてこうなった)


スキル《不浄体質》 竜から受けた呪いが《黄金の林檎》でニオンを蘇生させた際の余波で呪いが解除され、スキルと化したもの。それにより、無差別に呪いが発動することはなくなり、制御可能になった。


スキル《不和》 外部からの干渉を受けなくなるという効果。弱体や状態異常にかからなくなるが、敵味方問わずに補助系の魔術などによる強化も回復もできない。


特性《黄金の生命(超越)》 常に《黄金の林檎》からの生命エネルギーの供給支援を受けており、肉体と精神が劣化することがなくなっている。ざっくりいうと「不老不死になる」という効果の特性。だが、不老不死であっても負傷はするので、HPは存在している。


融合能力 ザッハークの《融合邪竜》の能力でもって融合させたスキルのことを指し示している。ランクは下がっているが、元になったスキルの効果や練度は変わらない。組み合わせられたことで新たな効果を得たり、強化される。

《装甲》+《吸収》=《柔装甲》

《予見》+《心の眼》=《先読み》

《武技》+《怪力》+《悪鬼》=《武辺》

《血塗れ》+《蛮勇》+《戦線離脱》=《勇壮》

《熱暴走》+《加熱》=《点火》


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