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竜の如き異様  作者: 葉月
2章 友との旅路と巡り合う過去
42/103

第38話 夜の刀神


————————————————————————


 葉桜結理 人間(眷属化) 男性 18才


 LV.62


 HP 703/603 +100

 MP 247/147 +100


 筋力 211 +100

 耐久 345 +100

 魔力 254 +100

 魔防 122 +100

 俊敏 498 +100


 スキル 血の献身:C

     武技:B

     察知:B+

     吸収:B

     闘魂:A

     装甲:A+

     怪力:E

     俊足:C


 適性 火:B+

    水:C+

    土:C+

    風:D

    雷:C

    無:B


 特性 ・ミルの寵愛:EX

     硬化武鎧:C+

     竜変化(へんげ):C++

     邪眼:B++

    ・血書契約:A

     心話:EX

    ・血の婚姻:B

     真の眼:A

     予見:A+


————————————————————————


 朝、なんのトラブルも起きていない、起こらなかったことを確認し、内心ほっとしながら起床し、一応ステータスを開いて、知らぬまに捕食されてHPが減ったり状態異常にかかっていないことを確認して再度ほっとする。


 国境を越えて帰って来たからといって、冒険者として拠点にしているあの街にすぐ辿り着くわけではない。

 中立国ポップ、その首都はシビル。俺たちの向かうあの街はそこに近いとはいえ、首都圏と言えるような距離でも立ち位置でもない。ざっくり言うと首都に近い地方都市。その首都もあの街も国境に近くなく、それを越えたとしてもすぐには着かない。

 俺たちはその間、雑談をして過ごしていた。昨日の燃香との会話でお互い少しは遠慮せずに話し合えるようになったので、それまで話せていなかったこと、思い出話に花を咲かせていた。中でもニオンに無二の親友がいて、自分がカントリ林を出る少し前にその彼あるいは彼女がある物を探して旅に出たことや、燃香の武勇伝を聞いたりした。そして燃香がふと思い出したように俺に向かって問いかけた。


「結理君に力を与えたのが()()邪龍って本当?」


「ああ、本当だ。今は俺がつけた名前を名乗ってるが」


 ニオンと燃香には朝、特性のことを話すと同時に、俺と邪龍の関係や過去を所々端折って話してある。


「どんな?」


「ミル」


「……なんか、カワイイ感じになってるね」


「俺と初めて会った時はマスコットキャラみたいな感じの見た目だったからな。その時つけようと思ってた名前だから可愛くなるのは仕方ない。本人、というか本龍? は気に入ってたけどな」


「見てみたいなぁ〜」


「10体の竜の力を使えるようになったから俺の夢に出てこれるようになったってミルは言ってた。なら、もっと使えるようになれば実体化とかできるかもしれない」


 燃香が可愛いと評されたミルの姿を想像してウキウキしている頃、ニオンはなにか深刻な問題を抱えているかのような表情で唸っていた。


「……」


「どうした? ニオン?」


「ミルが夢の中とはいえ、現実に干渉できるようになったのですからその影響は少なからずあるのでは、と考えていたところです。それにそもそも、かの邪龍は伝説になるほどの存在。それが今もこの世に存在しているとなれば回りは放っておかないでしょう。邪龍の存在やユウリに与えられた『寵愛』が世間にいつかはバレてしまう可能性が高い。……対策はしておいた方がいいかもしれません」


「対策、か……」


 いつか来る未来に対しての具体的な方法は、この世界に来て5ヶ月も経っておらず、あまりそういうことに慣れていない俺では思いつかなかった。

 護国の英雄にでもなるか? でも現段階でのこの国はちょっとな……。あの肥え太った連中とはあまり関わり合いになりたくない。

 なら別のどこかにコネでも作るか。具体的にどこ? ってなるが。

 あるいは国家権力も届かないような裏社会にでも……というのは論外だな。うん。


「強くなる。ってのはどう? この世で一番強くなれば誰も逆らえないし、刃向かえないよ?」


「おお……! さすがは伝説の吸血鬼! まさしく理不尽の塊だ」


「ちょっと、それってどういう意味?」


「さ、最高にクールってことだ。それにしても盲点だった。確かに今の俺の強さでできることは少ない。ならもっと強くなればいい。こんなことに気づかないなんて……」


 なんかスゲー脳筋臭い理屈だが、誰にも負けないくらいに強くなれば、少なくとも暗殺という憂き目に会うことはないはずだ。あと重要なのは敵じゃないことをアピールすることだな。


「そんな頭悪そうな作戦でいいのですかね……」


 俺と燃香が向かい合い、ぐっ! と固く握手したのを見てニオンが頭を抱えたのは言うまでもない。






 その夜、ふと無数の気配がこちらにこっそりと接近して来るのを察知して起き上がった。馬車の中を見渡すとニオンと燃香は既に目を覚ましており、装備を整えた臨戦態勢になっていた。どうやら俺が起きるのを待っていたようだ。

 俺たちはあの街にあと少しで到着というところで、護衛の中の《千里眼》持ちの騎士が前方1キロメートル辺りに魔物の集団を発見し、万全を期すためにその集団が通り過ぎるのをこの日、1日中待っていたところだ。明日の昼頃には出発できるとのことだったが、どうやら何事もなく、というわけにはいかなくなったようだ。


「どうにかなりそうか?」


「敵は20人ほど。いずれもかなりの強敵ですよ。単純なステータスならユウリよりも強いです」


 貴人が乗車していることを周囲にアピールするかのような装飾過多な外観とは反対に、派手過ぎず地味過ぎない内観のこの馬車の窓にはカーテンがかかっており、外から中を窺うことはできない。なので、息を殺してこちらに向かって来る彼らは俺たちが起きているかを知ることはできないはずだ。


「そりゃヤバいな。護衛の騎士は?」


「なにかの毒か薬が撒かれたせいで皆んなグッスリ寝てる。状態異常にかなりの耐性がないと意識すら保てないくらいの強いものだよ」


 燃香はカーテンの方に視線を向けてそう言った。もしかしたら彼女には外の光景が見えているのかもしれない。


「……念のためにここ最近ずっとラドンを出しておいて正解だったな」


 ラドンの持つ《楽園》の能力は状態異常に超絶高い耐性をパーティに付与するというもの。その効果はデフォルトで発動しているのでMPは消費しない。

 なので護衛の騎士や馬車の御者にその効果は付与されない。判定基準は俺がその人物をパーティメンバーと認めているか否かだ。


「どうします? 先手を打って襲いますか?」


「戦闘は避けられないっぽいし、後手に出るよりはマシか。3、2、1で行くぞ」


 2人は無言で頷く。頼り甲斐のある仲間、俺には勿体ないくらいだ。


「3」


 俺は両腕両足や、服の上に薄く鎧のように《硬化武鎧》を纏わせる。


「2」


 ニオンはレイピアをいつでも抜刀できるように手をかけ、燃香は自然体でその時を待つ。


「1!」


 俺たちは馬車の左右の出入り口にそれぞれ、俺とニオン、燃香という二手に分かれ、接近して来る彼らを迎え撃つことにした。

 俺とニオンの側には、馬車の半面を囲むようにして黒い服の、いかにも暗殺者のような風体をしている10人の男女がいた。彼らはそのうちの7人が前衛、残りの3人が後衛に分かれ、こちらが来るのを待ち構えているように佇んでいる。

 どうやら完全に包囲されていた上にこちらの奇襲を予期していたようだ。燃香の側も同じような状態だろう。なので、


鉄砲水流(フラッシュフラッド)!」


 馬車から飛び出した瞬間にその上空に配置したアジ・ダハーカに、Bランク魔術の鉄砲水流(フラッシュフラッド)を発動させる。その瞬間にそれは俺たちの3メートル先に現れた。

 虚空から津波のような勢いで現れた大量の水が、扇状に広がりながら黒を主体とする格好の彼らに襲いかかった。

 腰の高さまである水流に前衛の7人のうちの5人は回避したが、残りの2人と後衛は激流に流されながら大量の水を飲まされて溺れ、意識を失って押し流されていった。

 後衛は、出てきた俺たちに先制して魔術を撃つために準備を済ませようと待ち構えていたようだが、それが仇になっていきなり現れた水流への対応がほんの少し遅れたせいでなにもできずに流されていった。


 馬車の向こう側では爆炎に電気を纏った竜巻、地面から突き出たであろう氷の槍など燃香の手によって放たれた多数の魔術がその威力を遺憾なく発揮させていた。向こうの殲滅は時間の問題だろう。問題があるとすれば……、


「くっ!」


「……」


 俺だ。腕からシャキン! という音とともに生えたブレードで首を狙ってきた黒い何者かの短剣を打ち払うが、さすがに2対1はキツい。なにせ、向こうは殺しのプロだと容易に気づけるほどの正確さと機敏さのある動きをし、殺人への躊躇いのない目と暗器の扱いで襲いかかってくる。

 そして当然の流れのように、こちらは回避と防戦に専念している状態でも次々と深い傷を作っていく。時折、アジ・ダハーカに魔術を撃たせて隙を作ろうとするが、地面を這うかのような前傾姿勢で次々と躱してカウンターを放ってくる。

 今回、ヒュドラは使えない。向こうは薬か毒を使って騎士を眠らせている。ならば自分たちの使うものへの対策はしているだろう。それに既にアジ・ダハーカとラドンを呼び出している。体力を消耗したこの状態でさらにコストの重い竜は使えない。


「ハッ!」


 渾身の力を込めての大振りの一撃とアジ・ダハーカの援護射撃で持って2人の刺客に距離を取らせる。


 だが、こんな困った状況になるのを予期していたかのように、近接戦闘に向いていてコストも安いこの状況に正に打ってつけの竜の力を最近得たのだ。十分に使いこなせるようになっているし、使わない手はない。


夜刀神(やとのかみ)!」


 俺の魔力を元手に、目の前の中空に2本の細い角をもつ1匹の白い蛇が巻きついた日本刀を呼び出した。

 その刀身はまるで水に濡れたかのような独特の光沢を持ち、いくつもの時代を超え、現代にまで一度も錆びることなく輝きを放ち続ける風格があった。

 月光に映えるそれを手に取り、正面に構える。するとその白い蛇は、刀から俺の肩にするすると巻きつきながら移動した。その蛇は威嚇することなく静かに主人の俺の敵である刺客を見つめている。


「……」


 突如として間合いを詰めてきた1人に対して、傷口から夥しい血を流しながらも俺はさっきまでとは別人のように打って変わった剣技で攻勢に出る。刺客から連続で繰り出される暗器に、ブレードを引っ込め刀1本で無数の剣閃を描きながら形勢を逆転させ、刺客の体に無数の裂傷を作っていく。そんな刀と暗器での乱舞の最中、俺の意識の隙をついたもう1人が懐に飛び込み、その首を狙って暗器が振るわれる。


「……!?」


 だがその刃が俺の首に届くことはなかった。相手は角の生えた白い蛇がただの飾りだと思っていたのか、あるいはなんらかの役割は果たしているが、まさか人を容易に殺せるような直接的な戦闘能力を持っているとまでは考えていなかったのだろう。

 凄まじい速度で繰り出されたその蛇の尾の一突きが刺客の心臓を貫き、迫っていた刺客を返り討ちにしていた。その尾は鏃のように鋭く、伸縮自在。それもそのはず、夜刀神は刀ではなくこの蛇の方が本体。蛇の体の方も刀と同じ切れ味と能力を持っている。


「フッ!」


 夜刀神を十全に使いこなせて、かつ1対1でなら、この刺客に負ける要素はない。1人を切り捨てたことを確認すると刀を上段に構え、さっきまでの切り合いよりも数段速いスピードで刺客に切り込んだ。まるで豆腐でも切るかのように抵抗なく刀が通り、刺客は鮮やかな断面を残して仰向けに倒れ伏した。



今回からスキルや特性などを後書きで順次説明していくことにしました。内容が若干ブレる可能性もありますが……。


スキル《武技》 ざっくり言うと格闘技系を修める者の持つスキル。ランクの高さは無手での近接戦闘能力の高さを表し、それにプラスの補正がつく。

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