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竜の如き異様  作者: 葉月
序章 異世界
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第2話 行ったり来たり


うわ、出たよ。というなろうでよくある要素がこの回登場します。

苦手な人も多勢いるでしょうけど、是非続きも読んでください。お願いします(土下座)


「ってうおぉぉぉ!?」


 帰りたい。そう呟いた途端、世界がぐにゃり、と比喩表現抜きで歪んで収縮し始め、ほんの1秒で周りが森に変わる。


「……戻ってきた?」


 そこは俺の家があるあの山だ。さっきまで異世界にいたのは夢だったというわけだ。よかった、よかった。


「ってこんなリアルな夢があってたまるかーーッ!」


 その心からの叫びと壁を叩いた二つの騒音に驚いた鳥たちが飛び去って行く。

 そこにはやはり黒いカーテンのような壁があった。今はさっきの異世界と同じように昼間になっている。

 理屈は分からない。もしかしたらこの山と異世界では時間の流れが違うのかもしれない。あるいは俺が今いる世界の時間の流れに合わせているからかもしれない。


「とりあえず家に帰るか」


 来た時と同じくらいの時間をかけて家に戻る。しかしそこで起こっているとんでもない事態に気づいた。


「電気がつかない、だと!?」


 家中調べてみたが電気が通っているものは一つもなかった。そんな、さっきまではついてたのに……。

 しかもこのままでは冷蔵庫の中身が死滅する。

 仕方ないので、嫌がらせかと思うほどキンキンに冷えている庭の池に、食材をタッパーに詰めたり、ラップで巻いたりしてから放り込む。こうしておけば少しはマシになり、長持ちするだろう。


 その後いろいろと家の中を見て回ったり、山の中を散策したがこれといった変化はなく、山の外に出れない以外の問題はなかった。

 空気とか水、食料はどうなるのか気になったが、どういう仕組みなのか、山の上部にある滝からは今も轟音を立てながら新鮮な水が流れ出ていた。この山だけで全てが循環しているのかもしれない。


 しかしそれ以上に深刻な問題があった。


「ああ、俺は最終回を見れない運命にあるのか……」


 いや、まだだ。異世界に転移できるなら元の世界にも転移できるはずだ。俺はなにがなんでも元の世界に帰る! 帰る頃にはDVDも発売されているはず、ネタバレさえ気をつければ怖いものなんて一つとしてない!

 帰れなかったらネタバレをくらうよりも惨い。このままでは怨霊と化してしまう。


「あー、ヤバいな。食料を手に入れないとな。ここには家庭菜園用の道具とか種はあるが、俺ってば農業初心者、いや、初心者見習いだからな。どこからか調達しないと、ってうおぁ!?」


 そうボヤいていたら、風景がまた収縮して異世界へと放り出された。周りの人は、いきなり現れては困惑しまくる俺を気にも留めない。しかも転移先は目の前は八百屋だ。丁寧にもほどがある。

 どういう仕組みでこんな移動方法が成立してるんだ……?


「もしかして……か、帰りたい」


 またしても収縮して山にある庭に戻る。どうやら俺の意思一つで、山と異世界を行ったり来たりできるようだ。多分、望んだ地点に移動できる。

 RPGで後方支援にこういうことができる仲間がいたら便利そうだが、俺は前線に立っている人を後ろから頬杖ついて眺めるような趣味は持っていない。


 だが、これ1つでどうやって元の世界に帰るのだろう? とりあえず試してみても、元の世界には戻れなかった。

 ここが異世界なのも、現状、元の世界に帰れないことも分かった。なら、これからどうすればいいのだろう? 俺は一般人の域を超えないし、常にそれを超えるような道筋からは距離をとってきた。それに、そんな人生を歩みたいと思ったことは一度としてない。

 そんな俺が、果たしてこの世界で生きていけるのだろうか?


「とりあえずだ。今、俺がすべきことはこの世界を知ること。そして早く異世界に馴染むことだ。でなきゃ帰る前に死ぬだろうな」


 景色が収縮して異世界に再び、いや三度降り立つ。

 なお、転移先は最初に見た大通りだ。そこからは少し距離があるだろうが歩いていれば同じ場所に辿り着くはず。

 ……やっぱ慣れない。多用すると乗り物酔いみたいになりそうな感覚だな。


「で、どうすれば馴染めるんだろうな?」


 さっきは食料のことを気にしていたら急に八百屋の前に転移した。ならばこの世界に馴染めるようなことが起こる場所にも移動できるのでは? と考えたのだ。望んだ地点へ、というのは発想の飛躍かもしれないが、できたらいいなくらいの気持ちで一応挑戦してみる。


 少し緊張しながら周囲を観察するが、特に馴染める要素らしきものは見当たらない。アテが外れたか……?


「キャアアァァァ!!」


「!? なっ!」


 まさかここまで的確だとは……。本当にどういう仕組みしてるんだ?


 叫び声の主の近くにはまだ幼い子供がいた。しかもかなり大きく、装飾過多な馬車がその延長線上を走ろうとしている。しかも周りの人は巻き込まれないように距離を取り始める。いろいろと世知辛い世界のようだ。

 叫び声の主であり、母親であろう女性は子供の元へ向かおうとするが焦りのせいか転んでしまう。


 間に合わない。その場の誰しもが思っていた。ただ一人、俺を除いて。


「だーッ! そんな馴染み方いらねーーーーッ!!」


 馴染むって、知るって見て見ぬフリをすることがそれに繋がることなのだというのならそれは断固拒否だ。目の前で失われていく命があるというのに、助けないなんて、なにもしないなんて寝覚めの悪いことは俺にはできない。

 確かに、起伏のない人生を望みはするが、自然にそうなったりはしてない。そうなるように常に選択してきたから、今まで平凡な人生を歩んでこれたし、その中で価値観を育んできた。その中に幼子を見捨てるというものは含まれていない。


 だが母親からも俺からも子供の元へは距離がある。しかし転んでいる母親よりも、走り始めた俺なら一直線に走り抜け、途中で子供を助ければ母親&ギャラリーの元へギリ辿り着ける。幸い、俺は対岸の位置取りだ。


「(あ、ヤバい。走馬灯が見えた)」


 ダッシュで子供のいる場所に辿り着いたのはいいのだが、抱き抱えるのに苦労してしまった。向かいに見えるギャラリーたちの顔色が青くなる。彼らは俺が馬車に跳ねられて肉片になる光景が既に想像できているようだ。


 ガンッ!!


 案の定、馬車に轢かれた。車高が高かったからミンチにはなっていない、はずだ。


「あーー、ヤバい。死ぬかと思った」


 馬車は通り過ぎ、立ち上がった俺を見てなぜかギャラリーは絶句している。

 なぜか、じゃないな。それもそうか、馬にメチャクチャに踏まれ、車高が高いにしてもギリギリだったせいで背中をヤスリで削られたような音が俺の耳に聞こえていたのだ。普通死んでる。ならなぜ俺は死んでないのか……?


「あ、ありがとうございます! なんてお礼を言ったらいいか……」


「お兄ちゃん、ありがとう」


「無事……だな。よかった」


 馬の踏みつけとその衝撃、馬車のヤスリ攻撃から庇った子供は五体満足のようで、多少の擦り傷はあるが命に別条はなさそうだ。


「それにしても、それ、大丈夫ですか?」


「いや、こんなの擦っただけですよ。……ってなんじゃこりゃ」


 体のあちこちに、菱形を二つくっつけて角ばったハート形にしたような小さな鱗が体中に生えていた。しかし、こんなの栽培した記憶はない。


「(これ、なんとかならねぇかな……って!)」


 そう思考するとすぐに鱗が引っ込んだ。山を使っての転移といい、この鱗といい、とても便利だ。


「お兄ちゃんって魔法強い?」


「いや、どうだろうな? 俺としては使えればなんでもいいんだが」


「私もそんな魔術は見たことも聞いたこともありませんね……。ある種の『特性』かもしれませんね」


「特性?」


 謎のワードが母親と思しき女性から発せられる。一方の子供は母親によって抱き抱えられている。もう跳ねられないようにさっき馬車が通っていた道から距離を取りながらの会話だ。


「詳しいことはステータスを見れば分かりますよ」


「す、ステータス??」


「頭の中で思い浮かべるんです。そうすれば出てくるはずですよ。まあ、慣れが必要ですが……」


「それ誰でも知ってることなんですか? ごく一部の人しか知らないとかではなく?」


「? 誰でも知ってると思いますよ。どうしてそんなことを?」


 またしても謎ワードが。ステータスってRPGみたいだな。そんなものがこの世界には当たり前に存在してるのか? そしてそれを疑問に感じてないのか、この世界の人は。妙というかなんというか……。

 それにしても、慣れ、か……。そういえばこの世界に馴染む、知るってステータスを見れるようになる。そういう意味なのかもしれない。


「あ、いや、その……あ、出た」


「は、早いですね。慣れるのに半年はかかるのに……」


「なるほどな。あ、いろいろとありがとうございます。俺は行くところがあるのでこれで失礼します」


「いえ、私はこんなことでこの子を救ってくれたお礼になるとは思ってはいません。またの機会にお礼させてくださいね」


「あー、でもどうやって連絡を取れば……」


 その問いに母親は的確に答えた。なんでも、彼女はこの先にある店の店員らしく、そこにくれば高確率で会えるらしい。いるのは不定期なので行けば確実というわけではないが、気が向いた時にすればいいから別にいいか。






「これが俺のステータスか……」


 一旦拠点である我が家に戻り、再びステータスを見る。

 ここならその内容をいくら口走っても問題ないからだ。あとは独り言をブツブツ呟くイタい奴だと思われたくないからでもある。

 なお、自分のステータスを見て言えることは一つ。


————————————————————————


 葉桜結理 人間 男性 18才


 LV.1


 HP 10/10

 MP 4/5


 筋力 1

 耐久 1

 魔力 2

 魔防 0

 俊敏 4


 スキル 無し


 特性 ・???の寵愛:EX

     硬化:E


————————————————————————


「超、絶、貧、弱」


 このステータスなら多分RPGに出てくる村人Aとか、野生の雑魚(多分スライム)とかの方が強いぞ、きっと。それにレベルだ。「1」って生まれたばかりかよ。

 しかも、困ったことにこのステータスの数値がこの異世界の常人の平均なのか、俺の世界の常人の平均なのか、レベル相応なのか、どれほど高ければ強いのかもなにもかもが分からない。そもそも魔防、多分魔法防御ってことだろうけど、0ってどういうことだよ。バグかよ。

 それにHPって0になったら多分死ぬよな? そんなものが可視化されててこの世界の人は正気でいられるのか……?


「ってか、ハテナハテナハテナの寵愛ってなんだよ。顔も名前も知らん奴に愛されるって、俺は国民的スターかよ」


 意味不明なステータスとやらをとりあえず横においてボヤいていると、脳内に浮かぶステータスのスキルの欄に変化が生じる。さっきまでは無しと表示されていたのに、その文字が炙り出しのように現れ、


 スキル 献身:C


 と変化する。


「増えたのはいいが内容が分からないとなんとも言えないな……。って、む?」


『献身:他者に対して無償の愛を捧げたことを示すスキル。

 初期ランクは自分が助けたその人を、周囲がどれだけの人数、期間、助けなかったか。助ける内容の質により変わる。

 Cランクは命の恩人レベル。


 効果は自軍に対しての補助、回復効果の増大』


 と《献身》の欄にいきなり注釈がつく。


「なにコレ、俺、誰かに無償の愛捧げたっけ? あ、馬車の時のか! あれ無償の愛の判定になるのか……」


 確かに見返りなんて気にしてなかったし、あの時はそうしなければって考えで頭がいっぱいだったからな……。不純な動機では手に入らないスキルってことか。



うわ、出たよ。という要素はステータスですね。

苦手な人が大多数でしょうけど、是非続きも読んでください。超お願いします(土下座)

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