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2.足の小指meetsタンス

 今夜、あなたの家に泊めてほしい。

 こんな台詞を彼女みたいな(見た目)可憐なお嬢様に上目遣いで言われたら、そこらの男ならコロっと落ちるのかもしれないけれど。私からすれば迷惑以外のなにものでもない。

「なぁに?今回はどうしたの」

 寒空の中に放り出せるわけもなく、中に入れながらとりあえず言葉をかけると。

「…わたし…もう彼とは別れる」

 大きな目に涙をたっぷり溜めて彼女は言った。


 出たよ

 玲子の得意技…


 顔には出さなかったことを誉めてもらいたい。

 そこから始まったのは、やっぱり些細な…ある意味微笑ましいとさえ思う原因での喧嘩の経緯だった。

 この玲子という女性は、見た目通りにふんわりとしていて、夢見がちなところがあるのだが、そのくせ妙にパワフルな行動力があったりもする。(今こうして私の家に押し掛けてきているのがいい例だ)きっとお相手の男性も、さぞかし彼女には振り回されているのだろう。

「もうっ、タカくんなんて大嫌い!タカくんなんて…豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃえばいいのよっ!ー」

 話しているうちにどんどんヒートアップしていった彼女の口から、物騒な言葉まで飛び出してきた頃。そろそろ宥めて寝かせるべきかな、と考えていたら玲子の携帯がメッセージを受信した。興奮冷めやらないまま、そのメッセージに視線を落とす玲子。その瞬間、一瞬見開かれた彼女の瞳から一気に険が取れていった。

「…やっぱり、タンスの角に足ぶつけて苦しんじゃえばいいんだわ」

 あら、随分罰が軽くなったことで。

「…いっぱい話したら喉渇いてきちゃった!お水、もらってもいい?」

 そう言って席を立った彼女の携帯に目をやると、チラリと見えたメッセージ画面。そこには謝罪と迎えに行くとの言葉と、両手で抱えるほどの薔薇の花束の写真。

 なるほどね。夢見がちな彼女には堪らないプレゼントに違いない。彼は一体、どんな顔をして花束を買ったのだろう?想像するとこちらまで笑みが溢れてくるのだった。

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