6話 瞬殺! そして、悪役令嬢、登場!
6話 瞬殺! そして、悪役令嬢、登場!
(存在値70か……まあ、確かに、この世界の住人の中では『かなり強い』な……おかげで、いい見せしめになる)
センは心の中でつぶやくと、
「異次元砲などという、龍神族の方々以外では、『途方もないアリア・ギアスを積むこと』でしか使えない『分不相応な大技』を使って大幅に弱体化したゴミ……そんなザコを倒しても、なんの自慢にもならないが――」
なんだか、まだごちゃごちゃ喋っているカソルンの言葉などガン無視で、
拳にオーラをためていく。
その向こうでは、軍人たちが、
「カソルン将軍を敵にまわして生き残った者などいない」
「ああ、当然だ。なんせ、『龍神族』の方々を除けば、カソルン将軍は最強だからな」
「さあ、カソルン将軍……そのクソ生意気な魔人に、世界の摂理を教えてやってください」
「ただでさえゴミだというのに、消耗しつくしている惨めなゴミ以下の魔人よ。さあ、絶望を数えろ。貴様ごときでは、何をしようと、どうしようと、絶対に超えることができない巨大な壁というものを――」
「閃拳」
センは、
気合のこもった右の拳を突き出した。
一見、ただの正拳突き。
しかし、その拳は、
長年かけて丹念に磨き上げてきた努力の結晶。
――ゆえに、
「がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
圧倒的な破壊力。
カソルン将軍は、防御力がハンパではないタイプの軍人だが、
しかし、『ハンパない防御力』程度では、センの拳に耐えることなどできない。
結末は一瞬だった。
カソルンは、たったの一発で、
あっさりと、気絶してしまった。
魔人ごときの『軽い一発』でノックアウトしてしまった大将軍。
――その『あってはいけない光景』を目の当たりにした面々は、
さすがに、
「「「ひ、ひぃいい……」」」
ションベンをたらして震えだすカスどもを見下して、
センは、
「さて、いい加減、俺の実力がわかったかな? じゃあ、そろそろ、貴様らにふさわしい罰を――」
と、次の段階に進もうとした、
その時、
「カソルンを倒すなんて、やるじゃない。褒めてつかわす」
『見事な縦ロールの少女』が現れて、
上から口調でそう言った。
彼女が登場した瞬間、
その場にいた軍人たちは、
「ず、頭が高い! 頭がたかぁああい!」
いっせいに、片膝をついて頭をたれる。
一瞬で荘厳な空気になる現場。
そんな空気を背負い、
縦ロールは、
「私ほどではないけれど、あなた、なかなか強いわね。私、カスは嫌いだけど、強い者は好きよ。たとえ、醜い魔人でも、実力があれば採りたてる。それが私の信条」
つらつらと、そう言った。
続けて、
縦ロールは、遥かなる高みから宣言する。
「己が幸運にむせび泣きなさい。あなたを、直属の部下にしてあげるわ」
その発言の直後、
ひざまずいている軍人たちが、
一斉にどよめいた。
彼女の背後に立つ、
60歳後半と老いてはいるが『かなりイケメンの執事』――『ラーズ』が、
「お嬢様、それはいけません」
と、首を横に振りながら言った。
「魔人だから、モンスターだから、醜い存在だから……以外に理由はある?」
「あなた様が、この世で最も気高き存在の一人だから」
「だから、魔人などを傍においてはいけないって?」
「その通りでございます」
「たかが『魔人一人を傍におく権利すらない不自由者』のどこが気高き存在なのかしら?」
「……それは……」
「ラーズ。一つ言っておくわ。この、龍神族が一人『タンタル・ロプティアス・クロッカ』の決定に異議を唱えたければ……」
そこで、クロッカは、無数の剣を召喚し、
自分の周囲に浮遊状態で配置して、その切っ先をラーズに向け、
「私を殺してからになさい」
威風堂々と、そう言った。