5話 無双。
5話 無双。
この世界において、
魔人は『魔力は高い』が、生まれてくる個体数が少ない。
それに比べて『人間』は、数が多く、
かつスペックも、他の世界の『人間種』と比べて、比較的高かった。
だから、人間は、人間以外に対して『何』をやっても許された。
強い者は何をやってもいい。
倫理的に不完全な世界において、
『強さを持つ者』は『醜く歪む』と相場が決まっている。
「死ねや、クソ魔人がぁあああ!」
切りかかられたセンは、
グっと丹田に力を込めて、
流れるように、
右手へ魔力を溜めて、
――『一気に放出』する。
「異次元砲!」
センの右手から放出されたのは、
強大な魔力の照射。
簡単に言えば『かめ〇め波』。
――『圧倒的強者の照射』をくらった軍人は、
当然、
「ぎゃああぁああああああ!!」
極大のダメージを受けた。
凶悪なエネルギーが、秒を切る速度で下半身を溶かした。
圧倒的な力。
強すぎる。
――ケタが違う。
当然。
センと彼らでは存在の次元が違う。
「な、なんだと……」
「い、異次元砲……だと……」
センが魔法を使ったところを周囲で見ていた軍人たちがおののきながら、
「りゅ、龍神族の御方々しか使えない天上の魔法……」
「こ、この魔人……まさか、龍神族の系譜……」
「違う! 龍神族に魔人などいるわけがない! 一緒にするな!」
その発言を受けて、
センは、
「そうだぞ『龍神族なんか』と一緒にするな。あんなやつら、どいつもこいつも、存在値100程度のカスじゃねぇか」
俗世を離れていても、
『この世界における最低限の情報』くらいは頭に入れてある。
この世界を支配している『最強の名家』、
『大帝国の皇帝』よりも上の地位にある『天帝』の血族――『龍神族』。
※ ちなみに、存在値とは、『レベル』+『その他の技能』であり、
ようするには、その者の『総合力』である。
ちなみに、センの存在値は500。
「……龍神族を……か、カスだと……」
「なんと愚かしい発言……龍神族を敵にまわすのは、大帝国の全てを敵にまわすよりも恐ろしいことだぞ……」
「貴様、天罰がくだるぞ」
ゴチャゴチャとやかましいカス共に対し、
センは、堂々と、
胸を張って言う。
「天罰を下すのは俺の役目だ。俺は神様じゃないが、やっていい事と悪い事の区別くらいはつく。というわけで」
ググっと体に力を込めて、
オーラを練り上げ、
戦闘態勢を整えると、
「お前らに、罰を執行する」
「ふ、ふざけるな!」
「ちょっと強いと思って調子にのるなよ!」
「こっちにはカソルン将軍がいるんだ」
「カソルン将軍は帝国でも十指に入る豪傑! 『すでに、強大な魔法を使ってしまって消耗している貴様』などイチコロだ!」
「――そういうことだ」
タイミングよく表れたのは、
屈強な戦士だった。
高そうな鎧を着て、
気品のある剣を手にしている。
「ははは! 終わりだ!」
「カソルン将軍は、帝国の大将軍!」
「魔人ごときは一撃だ!!」
軍人たちの熱気が増していく。
カソルンほどの大将軍が剣をふるう機会はめったにない。
軍人たちは、みな、伝説を目の当たりにできると興奮気味。
「クソ生意気な魔人め!」
「細切れにされやがれ!」
「そのバラバラになった死体にクソしてやる!」
カソルンという虎の後ろで、
キツネたちがワーワーとさわぐ。
そんな醜い声援を背負いながら、
カソルンは口を開く。
「ずいぶんと部下が世話になったな……ここからは私が相手をしよう。貴様もそこそこ強いようだが、しかし――」
などと言っている間、
センは、
『サードアイ』と呼ばれる、相手の能力を見抜く魔法でカソルンを見通す。
※ サードアイを防ぐ『フェイクオーラ』という魔法もある。
上位者同士の闘いだと、互いにフェイクオーラが強すぎて『アイ系』は機能しない。
(存在値70か……まあ、確かに、この世界の住人の中では『かなり強い』な……おかげで、いい見せしめになる)