4話 センエースのさが。
4話 センエースのさが。
王様という仕事はしんどかった。
常に周りに人がたくさんいて、
王としてのふるまいを求められて、
政治だの、軍事だの、行政だの、
諸々の整備で時間をとられて……
だから、今度の転生では支配者ポジションにはつかず、
ただひたすらに強くなろう、
と、センは思ったのだが、
(この世界の人間、カスが多いな……)
この世界では、
モンスターは弱者で、
人間は強者だった。
『悪逆非道な悪魔』よりもよっぽど悪魔な『人間』がはびこる腐った世界。
『モンスターという弱い立場の種』は『腐った人間』に虐げられていた。
奴隷にされるならまだマシなほうで、
面白半分で拷問・解体されるモンスターがたくさんいた。
モンスターにとっては地獄。
それが、この世界だった。
(……イラつくな……クソどもが……)
最初は、見て見ぬふりをして、
山の奥に引きこもり『さらなる強さ』だけを追い求めようとしたが、
しかし、
――たすけて――
ついには耐えきれなくなり、
「もう我慢できねぇ。てめぇら帝国のカスどもに、『命の意味』を教えてやる」
『悲痛な叫び』が『魂』に届いたことがキッカケで、
センは立ち上がった。
山を下りたセンの目の前に広がっていたのは地獄。
醜い欲望を丸出しにした軍人たちが、
魔人の少女を甚振っている姿。
※ 『魔人』はモンスターが進化した種族。
肌の色が少し違っていて、
魔力が人間よりも多いという点以外は、
ほとんど人間とかわらない。
ちなみに、現状はセンも魔人である。
その村は、
魔人の村だった。
『人の魔の手』から逃げおおせた魔人たちが、
ひっそりと穏やかに暮らしていた小さな村。
その村を見つけた人間は、
『面白いおもちゃ』を見つけたと言わんばかりの醜い顔で攻め込んだ。
ただ、ひっそりと、誰に迷惑をかけることもなく過ごしていた魔人たちを、
人間は、虐殺し、強姦し、
好き放題、暴れ放題。
『そんなこと』が『この世界』では蔓延していた。
魔人は甚振られ、踏みにじられ、
ただひたすらに搾取され続ける。
「……もうやめて……だれか……たすけて……」
襲われ、ボロボロになった少女。
助けをもとめても意味はない。
家族も、仲間も、みんな、凌辱されている。
「次は俺だ! 殺すなよ!」
「殺さねぇよ! ひさびさの上物だ!」
「殺すときは俺に言え! 皮を剥いで殺す!」
「ふざけるな、この前、ゆずってやっただろ! 今日は俺だ。みろ、この剣を。この日のために買ったんだ」
「なんだ、その剣」
「拷問用の名品だ。これで切られると、全身がどんどん腐っていくんだ。ゆっくりと絶望を味あわせて殺すことができる」
「――そいつはいいな。くれよ」
「はぁ? ふざけんな。いくらしたと――ん? なんだ、貴様!」
彼の背後に立って声をかけてきたのは『仲間の軍人』ではなく『一人の魔人』だった。
その若い魔人は、飄々とした態度で、
「俺はセンエース。そこの山で修行をしていた魔人だ。こんにちは」
などとぬかしてきた。
その『ふざけた態度』に、その場にいた軍人全員がイラっとする。
「魔人のくせに、なにを、ナメたツラで堂々としてんだ、生意気な! てめぇら魔人は、バカみたいに震えてやがれ! イラつくんだよ!」
「手を出すな! その男は、俺の獲物だ!」
「いいや、俺が――」
と、誰が獲物を狩るかと競っている連中に、
センは、
「――閃拳」
磨き上げてきた拳を叩き込んだ。
「ぐぎゃあああああああ!!」
あえて殺さず、
腕だけを木っ端みじんに吹き飛ばした。
そして、その体に、
「ほい、ぐさー」
奪い取った拷問剣を突き刺した。
「あああああああああああああ!」
悲鳴がこだまする。
軍人の体は、どんどん腐っていく。
「いい武器だねぇ。腐っていく感じが非常にいい。心が洗われるようだ。プレゼントしてくれてありがとう」
「て、てめぇ!」
「たかが魔人風情が、カール大帝国の軍人を敵に回して、ただで済むと思うなよ!!」