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2話 最初の転生。


 2話 最初の転生。


 目覚めた時、

 彼――センエースは、違う世界で赤子になっていた。

 オギャアと生まれた瞬間、彼は意識をもっていた。

 自分が、かつて日本で高校生をしていたセンエースという名の男であると完全に理解したまま、母の手に抱かれて泣いていた。


 生後反射で泣くしかない――そんな中で、

 彼は思った。


(記憶もったままの転生! きたこれ! ひゃっほい! 願わくば、ここが地球ではなく、魔法とかが使える異世界でありますように!)


 ――何を隠そう、彼は頭がおかしかった。

 異世界系のWEB小説を死ぬほど読みこんでおり、

 『異世界転生した主人公たち』に『死ぬほど嫉妬』していた彼にとって、

 この状況は願ったりかなったりだった。


 困惑したり、焦ったり、元の世界に帰りたいと思うことなどは皆無。

 彼は、心底、転生したことを喜んでいた。


 そして、この世界は、彼が願った通り、

 剣と魔法のファンタジー異世界だった。


 モンスターが存在し、文明はそこそこ、

 ――理想的な異世界。


 センは、元気にスクスク育ち、

 あらかた『一人で出来るもん』な年になると、

 身支度を整えて、




「さあ、レベル上げにレッツゴー!」




「こらこらこら、セン! どこに行こうとしている!」


「決まっている。西の森でモンスターを狩って、レベルを上げるのだ! わかったら、さあ、ソールさん、そこをどきたまえ」


「3歳の幼児が何いってんだ、あと父親を『さん付け』で呼ぶのはやめなさい」


「成せばなる。俺にはできる。おそらくは」


「……まったく、元気があるのはいいんだが、さすがに、冒険者のまねごとをするのは、もう少し大きくなってからにしなさい」


「……くだらない線引きだ。ソールさん、あなたは俺の可能性をわかっていない。俺はきっと、ビッグになる男だ。何がどうとは言えんけど、そんな予感がビンビンする」


「何がどうとは言えないなら、おとなしく家で遊んでいなさい」


「……ちっ……過保護め……」


「3歳で家を飛び出そうとする息子を止めるのは、ただの親の義務だ! お前は確かに、早熟で、頭がいい。しかし、さすがに、3歳で世界に挑もうとするのは早すぎる! この町の外には、強大な龍とかもいるんだ!」


「別に、いきなり龍に挑もうなんて思ってませんよ。俺は、とりあえずレベル上げがしたいだけで――」


「いいから、もう少し大きくなるまでは、おとなしくしていなさい!」


 その後、センは何度か脱走を企てたが、

 ソールさんは、なかなか目ざとく、

 センは、いつも、家の敷地内から一歩も出ることなく捕まってしまった。


(あのオッサン、やべぇな。いつもはノホホンとしているくせに、俺が脱走をくわだてた時だけ、全然スキがねぇ……こりゃ、抜け出すのは不可能だな……くそ、俺はレベルを上げたいだけなのに……)


 ちなみに、センが生まれた村では、『自分の名前は自分で決める』というのが慣例になっている。

 最低限の自我が芽生えるまでは『~~さん家のジュニア』と呼ばれ、

 ある程度、しゃべったりできるようになると『最初の名前』を自分につける。


 その後、10歳の時に、一度『名前を変える機会』を得て、

 二十歳の時に、最終の名前を決める機会をえる。

 そして『二十歳の時に決めた名前』が最後まで自分の名前となる。




「さあ、レベル上げにレッツゴー!」




 六歳になって、町の武器屋で『キノキの棒』という記念すべき最初の武器を購入したセンは、勢いよく、家を飛び出そうとして、


「まてまてまてまて」


 またもや、父親にとめられた。


 ――センは『学習しないオッサンだ』などと思いながら、

 心底ウザそうな顔で、


「ソールさん、いい加減にしてくださいよ。俺はもう止まれないんですよ。この情動を昇華するためには、モンスターを倒してレベルを上げて世界最強になるしかないんですよ」


「もう、お前を止めるつもりはない。冒険者になりたいならなればいい。しかし、なんの準備もせずに『ただ飛び出していく』だけのお前を黙ってみていることは流石にできない」


「ソールさん、俺はそろそろ21歳の大人ですよ。自分のケツは自分で拭きます。それに、みてくださいよ。この輝くような武器を! 大枚はたいて買った至高の一品!」


「……『ちょっと硬い木の棒』だけ持って家を飛び出そうとする息子を止めるのは親の義務だ。ここは絶対にゆずれない。あとお前は6歳だ。15もサバを読むんじゃない」


「こまけぇこたぁいいんだよ」


「とにかく、少し待ちなさい」


 そこで、ソールさんは、アイテムボックス(亜空間倉庫)から、一枚の紙を取り出して、


「これをもっていきなさい」


「なんすか、これ」


「我が家に代々伝わる魔法の地図だ。私は役所で働いていたから、必要なかったが、冒険者を目指すお前にとっては『大きな助け』になってくれるだろう」


(冒険者になりたいんじゃなく、俺はレベルを上げて強くなりたいだけなんだよなぁ……まあ、別に、理解してほしいとは思っていないから、訂正とかはしないけど)




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