純情男子とあだ名女
「この桜稜学院で勉学と魔法鍛錬に励んでいきたいと思います。新入生代表神田正樹」
当たり障りのない新入生挨拶を済ませ席に着く。
どうやら新入生挨拶は筆記試験の成績で決められたらしい。
当然魔法適性Lv1の俺が国内トップクラスのこの学校で実技試験1位を取れるはずがない。
俺が使えるのは精々初級魔法程度。中級魔法も使えないことは無いが使えば魔力が枯渇して3日は寝込むことになる。
魔法適性Lv1で魔力の低い俺がこの学院に入れたのは幼い頃から勉学に励んだおかげだ。
生徒会長の話や校長の無駄に長い話を聞き、入学式は無事に終了した。
「えー1-Aの担任となった大林だ。今日は授業は無し、明日から配った時間割の通りに授業していくからな。この後は帰ってもいいし部活見学してもいい、んじゃ解散」
だるそうにしながら担任大林は教室から出ていった。随分とやる気のなさそうな教師だがあれでいいのか…
「おい、お前新入生挨拶してたやつだろ?俺は相馬仁。仁って呼んでくれよろしくな。」
髪をツンツンに立たせた金髪の男が話しかけてきた。
「ああ俺は神田正樹。俺も正樹でいい、よろしく。」
席が前後ということと新入生代表だったからか話しかけやすかったのだろう。
「お前筆記試験トップだったんだろ?すげーな。俺は筆記はさっぱりだったからよ。」
ということは仁は実技の点数がよかったのだろう。俺は魔法があまり使えないが魔力探知能力に長けている。
この感じならLv4か最高ランクのLv5はあるだろうか。
「それでよ、正樹。このクラスなかなかレベル高いと思わねーか?」
「まあAクラスだしそれなりの人間が集まってるだろうな。」
この学院は全部で6クラスあり成績上位からA〜Fの順番に割り振られている。
「ちげーよ!女の子の事だよ!可愛い子多いと思わねーか?」
入学早々そんな話か…まあお約束といえばお約束だが。
「ほらあのちっちゃい子と話してるグループとか」
見ると早速凛を中心に女子グループが出来てる様だった。まあ凛の性格ならすぐに友達も出来るだろう。
「あぁ凛か。」
「知り合いなのか!?」
「まあ幼なじみってやつだよ。腐れ縁だ」
凛の方を見ながらそう言うと凛と目が合い駆け寄ってきた。
「なんか用?正樹!」
「こいつ…仁とお前のことを話してただけだよ」
「俺の嫁だから手を出すなよって?いやん!もう」
何を言ってるのかこの娘は。クラス中がざわついてるじゃないか。
「え、りんりんの彼氏!?」
さっきまで凛と話してたグループの1人が近づいてきた。
「違うよただの幼なじみだ。俺は神田正樹よろしく。」
「なーんだそういう事ね。私は西条あやめ、よろしくねマッキー」
「マッキーってなんだ!?」
「あだ名だよあだ名。仲良くなるにはあだ名で呼ぶのが早いでしょ?」
一見クールに見えるロングヘアの彼女は笑いながらそう言った。凛とは別の意味で人懐っこいタイプらしい。
「で、さっきから黙ってる金髪の彼は?」
「お、俺は相馬仁、よ、よろしくな」
さっきから黙ってると思ったらどうやら仁はかなり女慣れしてないタイプらしい。第一印象でチャラ男だと思ってごめん。
「んー仁って名前はあだ名付けづらいなぁ。よし、じゃあソーマで!」
「じ、女子からあだ名付けられた…」
名字のイントネーション変えただけじゃねーかとツッコミそうになったが仁は嬉しそうだしそのままにしといてやろう。
「ねえねえ!せっかく友達になったんだしみんなで部活見学行こうよ!」
このまま教室にいても仕方ないし凛の提案に乗るとしよう。
「そうだな。」
そう同意し席をたった瞬間。
「神田正樹!君には生徒会長に入ってもらおう!!」
長身の女性が教室へ飛び込んできた。