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性転魔法使いのオブリージュ  作者: Kiruna
魔法高校編
42/45

そして性転魔法使いは誕生する

私こと蓮野 春香は、藍癒人魚姫アクアマリン・マーメイド・プリンセスさんの魔力を得た日長不死鳥サンストーン・フェニックスさんの蒼く燃える『フェニック(不死鳥)ス』に飲み込まれた。


私は目の前が真っ暗になりましたが、熱くありませんでした。


何というか、暖かい感じです。


この暖かさは何なのでしょう。


今までに感じた事のない暖かさ。


内側から、それこそ心から暖かくなるような・・


本当に、今までに感じた事が無かった?


いや、そんなこと無い。


この暖かさを知っている。


そう、知っているんだ。


小さい時、それこそまだ女に性転換した事の無い時だった。


俺は産まれた時から多大な魔力を持っていた。


しかし、うまく操る事が出来ずに、むしろ周りを壊したり、人を傷つけたりして、化け物と呼ばれていた。


両親も俺の事を恐れた。


そんな中にただ一人だけ、手を差し伸べてくれた人が居た。


その人は、俺の姉で名前を秋と言った。


秋姉は、いつも泣いている俺の頭を撫でてくれた。


魔力が暴走したって構わない。した時は私が何とかしてあげるからと秋姉はそう言いながら抱きしめてくれた。


その時はどれだけ心が、全身が暖まっただろうか。


そう、今、感じているのはその暖かさに似ていた。


実際に何度か秋姉の前で魔力が暴走して、危険な制御されていない魔法が発動したが、秋姉がそれを防いでくれた時もあった。


そう、秋姉は魔法使いだった。


それも、とても優秀で、だれからも憧れるような魔法少女だった。


そんなある時、俺は魔物(モンスター)では無く、それらを従える魔人に出会った。


俺が魔法をしっかりと発動できないにもかかわらず魔力が多いという事に目をつけて、俺を攫いに来たのだ。


魔人は魔物(モンスター)と比べ物にならないほど強く、そして賢い。


普通の魔法少女では十人でやっと魔人一人が倒せるかどうかだろう。


だから、近くにいた秋姉は俺を守るために魔人と戦ったが、敗れてしまった。


俺は走って秋姉に近づいて泣いた。


魔人はその様子を笑って、ただ見ていた。


秋姉は全身が傷つき血を流していたけれど、まだ魔力は残っていた。


その魔力のお陰で意識を保っていたのかもしれない。


それでも、立ち上がる事は出来ないようだった。


そんな秋姉は俺に最後の魔法をかけた。


「私が春の為に考えた魔法だよ。春だけにしか使えない魔法なんだ。だから、受け取って」


秋姉は俺にそう言った。


そして、


性転換(セクスチェンジ)


秋姉は最後の魔力を使って、そして、秋姉自身の生命を使って俺に向かって最後の魔法を発動した。


それと同時に、俺の身体は燃える様に熱くなった。


足の先から、手の先、頭、髪の一本一本までもが熱くなり、そして俺は、


女に性転換した。


身長が少し縮まり、髪が秋姉のようにサラサラで黒髪ロングになった。


でも俺はそんな事気にならずに、秋姉をずっと見ていた。


秋姉は魔力が無くなって意識がなくなったのだろう。


なら魔力を戻せばいい。そして、同時に全身の傷を治せれば最高だ。


でも、どうすればいい。


普通の回復魔法では魔力は戻らない。


魔力を戻すには・・


考えたけれど思いつきはしなかった。


他人に魔力を与えるのもありかもしれない。


しかし、それは魔法を使ってない人にできる事であって、基本的に魔法を使ってる人にはしてはいけない事である。


何故ならば、魔法を使ってる人はその魔力に慣れて、その魔力が自身の魔力だと認識する。


そこに他人の魔力が、それもその人が今持っている以上に流し込んだらどうなるだろう。


例外もあるが魔力同士が反発して、最終的にはどちらの魔力も使えなくなってしまうのである。


どうしようもない状況に俺は秋姉の髪を撫でた。


黒く長いサラサラした髪の毛。


いつもは秋姉が俺の髪を撫でていた。


初恋とも呼べるその人との思い出。


ああ、あの時に戻りたい。


・・・


それだ!


そう、時間を戻せばいい。


あの時に戻れれば、


魔法は不可能を可能にする力があると聞いた事がある。


そう考えた瞬間に、何処からともなく頭の中に声が聞こえた。


これは何だろう。


そう思いつつも、俺はその声をそのまま唱えた。


【私は願う、未来、そして何よりも今を築く為に過去を振り返らん。大切な人との思い出を描く為に!】


そして、俺の服は真っ白く見える魔法服となった。


髪は性転換した時の、秋姉と同じようなサラサラな黒髪ロングのままだ。


これは、魔法少女になったという事なのだろうか。


きっとそうなのだろう。


だって、どうやったら魔法が使えるかが手に取るように分かる。


今までは魔力なんて操る事が出来なかったのに、この魔法服になった途端に分かるようになったのだ。


ああ、こうすれば良かったのか。


なんで、今まで分からなかったのだろう。


と、そんな事よりもやらなければいけないことがある。


俺は秋姉とのあの時間を取り戻す為に魔法少女になったんだ。


だから、俺は魔法を使わなければならない。


時間を戻す魔法。


リバース(巻戻)!】


俺は『リバース(巻戻)』を秋姉に向かって発動した。


その魔法は馬鹿みたいに魔力を消費するが、それでも俺には多大な魔力だけはあった。それを消費し続けながら発動し続ける。


秋姉の全身の傷は見る見るうちに治っていくが、それでも目を覚まさない。


まだだ!


俺は『リバース(巻戻)』にさらに魔力を込める。


それは、距離を広げていき魔人の近くまで来たところで、魔人は危険だと感じたのか去っていった。


俺はそんな事を気にせずにそのまま魔法を発動し続ける。


そして、俺の中にある魔力は全て無くなった。


目の前にいるのは全くの外傷の無い秋姉。


それでも目を覚ますことは無かった。


そう。時の魔法を使っても失った命は戻す事は出来なかったのだ。


そして、俺はたった一人の暖かさをくれた人を失った。


そのまま気絶して目が覚めた後に絶望した。


誰がいけない。


それは、あの魔族だ。


そう思った。


だからこそ、当時は魔物(モンスター)討伐を必死にこなした。


魔物(モンスター)討伐の際に、たまにそこに魔人が現れるから。


そして数年間、魔物(モンスター)討伐を続けて、あの時の魔人に会った。


俺は脇目もふらず、その魔人に突撃し、そして何とか秋姉の仇を討った。


しかし、もちろん秋姉は返ってくることは無かった。


そして、俺は二度目の絶望を味わった。


周りは俺が魔物(モンスター)や魔人を沢山討伐したからチヤホヤする。


けれども、魔法が使えなかった時のあの視線や感情を覚えているから、こいつらは何でこんなに反応を変えられるんだと思った。


両親も俺の事を褒める。


けど、俺は誰にも話しかけて欲しく無かった。


最初から俺の事を見てくれた秋姉はもういない。


だから、俺は俺の世界に引きこもった。


学園にいっても、周りがうるさいから外に出た。


もう俺の本当に想ってくれる人はいない。


だからこそ、俺の魔法少女になる時の詠唱は、


【私は願う、過去、未来、そして今を築く。唯、自分の時間を過ごすために、この力を使う事を】


となり、そして全てを拒絶したから光さえも拒絶し、真っ白く見える魔法服は黒く見えるようになったのだ。

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