催眠者襲撃戦 『黒色聖母』『緑宝守護』 対 学園長
私は魔法学園の学園長です。
そして、私は今、黒色聖母である蓮野さんと、緑宝守護である桜井さんと戦っています。
やはり、女の蓮野さんはとても強いです。ですが、やはりまだ若い。所々に隙があり、私はそこを突きます。
しかし、桜井さんの存在がその隙を守り、私の攻撃を防ぎます。
では、桜井さんを先に攻め落とそうとすると、蓮野さんが仕掛けてきて、それを無視するわけには行かずに対応します。
このコンビはなかなかに厄介ですね。
でも、それでも、私は学園長として、魔法使いの最年長として負けるわけにはいきません。
私は懐から透明の糸を外に垂らします。
そして、心の中で魔法を詠唱する。
『ウィルパワー』
この魔法は、物を手を使わずに自在に操ることが出来ます。
ただし、生物や生物の魔力が纏っている物には使用することが出来ません。
つまり、魔法少女自体や魔法少女の魔法服、扱っている魔器にも使用することができないわけです。
けれども、この様に私が持っている透明な糸だったら自由自在に操れるのです。
透明な糸を、私の周りに漂わせます。
そして、心の中で魔法を唱えます。
『マイ・スペース・ヤーン』
その漂わせた糸に『マイ・スペース』を掛けておきます。
その後すぐに、
【ショート・トランジション】
蓮野さんが『ショート・トランジション』で私に一瞬にして近づこうとしてきます。
しかし、思った所に飛べなかったみたいです。
本来は私のすぐ背後に飛ぶつもりが、私の少し離れた前に飛んでしまった様です。
何故ならば、私の背後には『マイ・スペース』が掛かっている透明な糸があるからです。
『ショート・トランジション』とは魔力を先に移転地点に流しておき、その地点に一瞬にして移転する魔法。
そこに魔力を打ち消す糸が邪魔していたらどうなるのでしょう。
移転地点が邪魔された手前になり、そこに転移してしまうのです。
糸の位置を調整して、私の都合の良い場所に転移するようにしました。
因み普通の『トランジション』は、時空間を通して指定の場所に魔力を流して転移するようで、多大な魔力を使っているようです。
そんなわけで、私は現状把握をしようとしている蓮野さんに向けて閉じた扇子の先を向けます。
そして、魔法を発動します。
『ロング・コントロール』
この魔法は私の魔力を流した物の長さを魔力次第で自由に変えることができます。
これにより、扇子の先は蓮野さんに瞬時に向かっていきます。
蓮野さんは思いもよらない場所に転移したばかりで、まだこの扇子には気づいていません。
ですが、
【アイギス】
遠くにいる桜井さんが、『アイギス』を放とうとします。
しかし、発動しませんでした。
壁魔法は、他に物がある所には発動し難いのです。今回は蓮野さんの前に『アイギス』を発動しようとしましたが、そこには私の魔力無効化の透明な糸がありました。
普通の糸ならまだしも、魔力無効化があるとなれば相当な魔力を消費するなどしなければ、そこには発動することが出来ません。
よって、今回は『アイギス』は発動することが出来なかったわけです。
つまり、私の扇子の伸びた先がそのまま蓮野さんに向かっていきます。
蓮野さんは、当たる直前に気づきますが、そこで気が付いても避ける事と魔法を発動する時間もありません。
「ッ!」
そして、伸びた扇子の先が蓮野さんに当たりました。
扇子の伸びる勢いは相当のもので、蓮野さんはそのまま後ろの壁の方まで飛んでいき、壁にぶち当たり、そのまま壁が崩れてさらに後ろの見えない所まで飛んでいきました。
やはり、まだまだあまいですね。
魔法の特徴を理解していない証拠です。
これならまだ真白さんのほうが強いかもしれません。
「さて、次は桜井さんの番ですね」
私は微笑んでそう言います。
桜井さんの方を見ると、何故か微笑んでいました。
「ええ、後は私が時間を稼ぐだけです」
そして、そのように言ってきました。
「時間を稼ぐですか?」
私は少し悩みました。
元々、私も蓮野さんをあの男の前に向かわせない為に、時間稼ぎをしてました。
蓮野さんを気絶させた今、それは達成されたわけなのですが、そのパートナーの桜井さんが時間稼ぎと言っています。
何に対しての時間稼ぎでしょうか。
私は微笑んでいる桜井さんを見て、魔法を使いました。
『テレパシー』
この魔法は魔力量によって、対象の考えを読み取る魔法であるのです。
とは言え、普通の人がこの魔法を使ったのならば数回で魔力が無くなってしまうほどの魔力を必要としています。
そんな多大な魔力を消費して、桜井さんの考えを読み取りました。
『あとは、蓮野さんがあの男の所まで行き倒すまでの時間を稼ぐだけ』
そのような事を考えていました。
蓮野さんが行くまでとはどういう事でしょう。
先程私の扇子が当たって気絶したはずです。
・・・
気絶していないのだとしたら・・
元々、この様な感じに蓮野さんがやられる事を想定して動いていたのであれば、その対策をしていたのかもしれないですね。
「そうですか、なら、私は蓮野さんを止めに行かなければなりませんね」
蓮野さんが行ってしまっては他の人が成長しないのです。
私の時がそうだった様に、皆、蓮野さんを頼りにして自身では動かなくなってしまうのです。
だからこそ止めに行かなければならないです。
私は蓮野さんが吹き飛んで行った方向に向かおうとしました。
【アイギス】
しかし、そこに桜井さんの魔法が立ちはだかります。
魔力無効化を持つ壁魔法の『アイギス』。
この魔法を打ち破る方法は同じく魔力無効化の攻撃を与える事です。
『ノーマーク』
なので、私は『アイギス』に向かって普通の肉眼には見ることのできない無色で、魔力無効化の効果のある球体のような魔法を放った。
そして、『アイギス』に『ノーマーク』がぶつかり、お互いに消え去った。
『アイギス』は思ったよりも魔力効率の良い魔法みたいですね。思った以上に硬かったお陰で、私の『ノーマーク』も消えてしまいました。
ですが、次はもう少し強く放つだけで終わります。
『ノーマーク』
私は心の中で魔法を詠唱し、『ノーマーク』が発動する。
桜井さんは目に魔力を溜めているようですね。
正解です。目で見えないものは魔力で見れば良いのです。
目に魔力を溜める事により、魔力を見ることが出来るようになります。それは暗くても見る事ができる優れものです。
人によっては、こう呼びます。
【イビルアイ・マジカルシー】
そして、桜井さんは魔力が見る事が出来るようになりました。
しかし、先程よりも魔力量が高い『ノーマーク』をどうやって防ぎますか?
【アイギス】
桜井さんは先程と同じく『アイギス』を発動しました。
しかし、その大きさは先程のが人が3人分くらいの大きさだとしたら、今回のは人の頭位の大きさです。
つまり、魔力量を増やしたのでは無く、圧縮して来たわけです。
「私だって紅天寺さんにただ負けたんじゃありません!どうやったら防ぐ事が出来るか考えているんです!」
桜井さんは私に向かって叫びました。
そうですね。大会では桜井さんは紅天寺さんに負けました。それは、今と同じような状況でしたね。
その時の経験を得てこの対策が取れるようになったのですか。
それは、嬉しい事ですね。
『ノーマーク』と小さく圧縮された『アイギス』はぶつかり、『ノーマーク』のみが消え去った。
ですが、小さくすると今度は違う弱点が出てくるのです。
『ノーマーク』
私は1回の詠唱で3つの『ノーマーク』を発動する。
それは、同じ向きでは無く、別の方向飛んでいき、桜井さんに三方向から向かって飛んでいく。
壁が狭まれば、それを避けるのも容易くなります。
さあ、これをどう対策しますか?
【アイギス】
桜井さんはあくまでも『アイギス』を発動します。
それは同時に3つ、それも先程と同じ圧縮された小さな物でした。
『アイギス』に絶対の自信を持っているわけですね。
紅天寺さんは火力馬鹿だと蓮野さんが言っていました。
それを思い出し、それなら桜井さんは防御馬鹿だなと思った私でした。
見事3つの『ノーマーク』は、各『アイギス』によって消滅しました。
ここまで、1つの魔法を同時に、正確な場所に発動するまでには、苦労したのだと思います。
透明な糸を桜井さんの近くに操作しようとしても、同じく『アイギス』に防がれました。
そうでした。彼女は今、魔力が見えるのです。
透明な糸ももちろん見えているのです。
これは、私の負けですね。
魔力的には私の方が余裕がありますが、桜井さんの魔力が切れる頃には、蓮野さんがあの男を倒しているでしょう。
もちろん、打開策もありますが、蓮野さんを追う事は出来ませんでしたが、私の目的は達成しました。
今の世代には、蓮野さん以外にも未来を照らしてくれる人がいることを、私は安心しました。
とはいえ、桜井さんには最後まで付き合ってもらいます。
未来を支える貴方達の成長の為に、全力全開で魔力を使い果たしなさい。
そして、私と桜井さんの戦いは、桜井さんの魔力が切れるまで続くのでした。




