催眠者襲撃戦 『光天翼麗』 対 『虹輝天女』
私こと日陽谷 明日香は、純白の魔法少女こと虹輝天女と戦っていた。
私はこの虹輝天女が嫌いだった。それはライバル意識だったのかもしれない。白の魔法少女として呼ばれている私がいて、純白の魔法少女と呼ばれている虹輝天女がいる。
『レインボー・モード』変身すると見える色が変わるくせに、なんでそちらが純白でこちらがただの白なのか。口に出したことはなかったけれども、それは日々、心に溜まっていっていた。
その鬱憤を晴らすために、今回の大会で対戦するはずだった。
しかし、結局対決する前に敗退してしまい鬱憤は晴らせなかった。
けれども、黒色聖母様、いえ、黒曜剣士様のお誘いにより、こうやって対戦することが出来た。
まあ、もともと黒曜剣士様に勝てなかったからその機会を失ったわけでもあらのだが、この際それは置いておく。
念願の虹輝天女との勝負だけれども、なんというか、弱い。
今の私はシャイニング・ウィングをつけて、虹輝天女に接近して攻撃をしている。
虹輝天女はどちらかというと、遠距離や中距離が得意なので、私を近づけないように戦わないといけなかった。
しかし、戦闘が開始すると同時に私はすんなり近づくことが出来た。
何をしたかというと戦闘開始と同時に虹輝天女は『レインボー・モード』になった。
【ダークネス・ウォール】
それでも、倒しきれてないのは、虹輝天女が、私の苦手な闇属性の魔法を使ってくるからだ。
光の魔法と闇の魔法は対称的で、光をよく使う魔法少女が闇の魔法を食らうと、ダメージを多く食らう以外にも、その後に光の魔法を使いにくくなるといった不利な状況になる。それは属性が逆になってもそうなのだが、虹輝天女は違った。
光の魔法も使うし闇の魔法も使う。それはあり得ないというのが常識だったにもかかわらず、常識の魔法少女はそれを実際にしている。どんな原理なのかは、公開されていないため不明だ。
距離的には私の方が有利なのに、属性的に私の方が不利という状況なので、この状態が続いている。
【スピードアップ・ウィング】
私は翼の移動速度を上げて、『ダークネス・ウォール』がない方向に行き、
【ライト・レイ】
簡単な、そして速度のある魔法を放つ。
【ダークネス・ウォール】
虹輝天女は再び『ダークネス・ウォール』を使うが、それなりの闇属性の魔力を使うのか、その前に発動していた『ダークネス・ウォール』の魔力を利用して発動しているのか分からないが、前に発動した『ダークネス・ウォール』は無くなった。
私の『ライト・レイ』は直進して行き、そのまま新たに発動した『ダークネス・ウォール』にぶつかり消滅するが、すぐに
【スピードアップ・ウィング】
翼の移動速度を上げて、『ダークネス・ウォール』が無くなった方面に移動して光線を放つ。
それの繰り返しだったが、これは圧倒的に有利なのだ。
移動に魔力を使っていると言えども、『ライト・レイ』はあまり魔力を必要とせず、しかし『ダークネス・ウォール』はそれ以上に魔力を使う。
このまま続けば、虹輝天女から魔力切れを起こすだろう。
なぜ別の属性の魔法を使わないかは、私の光の攻撃を防げるのが闇属性の魔法しかないからだろう。
だからこそ、繰り返しがおきる。
沢山の属性が使えるのは強みだが、こうなってしまってはただの器用貧乏としか思えない。
虹輝天女のとっておきの『レインボー・トレジャー』も発動させずにこのまま押し切る。
そうして、やはり何事も無く虹輝天女は魔力切れになったのか『レインボー・モード』が切れた。
これで終わりと思い、『ライト・レイ』を放つと、
虹輝天女は、それを受けた。
しかし、気絶せず、虹輝天女は私を見ていた。
その目には光が宿っていた。
どうやら、催眠が解けたみたいですね。
「残念です。そのまま貴女を倒せると思ったのですが、そうは問屋が卸さなかったみたいですね」
私は寧ろ気絶する前に虹輝天女の催眠が解けた事に喜びを感じていたのに、あえて逆の事を言ってみた。
「ええ、残念でしたね。せっかく私を倒せるチャンスでしたのに」
何が起きているのか驚きもせずこちらに反応してきて言葉を返してきた。
どうやら虹輝天女は今まで何が起こっていたかわかっているみたいだった。
ですけれど、魔力も殆どない状態なのに私にまだ勝てると思っているみたいです。
「私が虹輝天女と呼ばれている理由は一つではないのですよ。それをこれから見せてあげます。催眠状態ではできなかった事なので、解けてよかったですね」
虹輝天女は、自信満々にそんな事を言ってきた。
七色の属性を操ることが出来るから虹輝天女と呼ばれているのだと思っていた。
どうやらそれだけではないみたいだが、何が起きてもこの状況ではもうどうしようもないだろう。
【ライト・レイ!】
私は気にせずに『ライト・レイ』を虹輝天女に向けて放った。
虹輝天女はそれを、
「私は決勝戦に黒色聖母様、いえ、黒曜剣士様が勝ち上がってくる事を危惧していました。藍癒人魚姫が勝ち進んで、その危惧は免れましたが、結局は負けてしまいました。とまあ、その話は今は置いておきます。黒曜剣士様は、私以上に魔力を細密に操ることが出来る人なので、恐ろしかったのです。細密に操る。それはこの様に恐ろしいのですよ」
その様に言って、『ライト・レイ』を手の平で受け止めた。
光が受け止められ、それは手のひらの前でクルクルと回転して、そしてその光は私に向けて返ってきた。
「七色を同時に操る事には、とてつもない細密な魔力操作が必要なのです。だからこそ私は魔力操作を他の人以上に身につけました。藍癒人魚姫さんには、その細密な魔力操作を乱されて負けてしまいました。そして、それは黒曜剣士様が相手でも同じだったでしょう。何故ならば、私以上に魔力操作が得意だからです。さて、そんな貴女は、いえ、白の魔法少女は、私こと純白の魔法少女に勝つことができますか?」
私が咄嗟に光を避けていると、虹輝天女は悠々とその様に言ってきた。
そして、私の事を白の魔法少女、自身のことを純白の魔法少女と言って煽ってきた。
確かに他人をの魔力を操って、それを使い反撃するのは面倒なことだ。
私は黒曜剣士様にもそうして負けたのだ。
その時は、私の魔法を魔力に戻して使われたけど、今回は光がそのまま返ってくるわけだが、それでもやり難いものだ。
でも、そんな黒曜剣士様も負けたのだ。
その負け方は、魔力を吸収できずに、そのまま受けきれない魔法を受けたことによるものだった。
今回も似たような状況なのだから、私もすれば良い。
操作をさせる隙もなく倒せばいい。
私は光天翼麗。光る天の翼にて敵に近づき倒す者。
ならば!
【スピードアップ・ウィング】
私は『シャイニング・ウィング』にスピードアップを掛ける。
まだ、これだけでは足りない。
【スピードアップ・ウィング!】
さらにスピードアップを掛ける。
多重に強化系の魔法を掛けると、それに二乗して魔力の消費が増したり、維持出来る時間が短くなったり、そもそも発動しなかったりする。
それでも、私はスピードアップを発動して、翼が強化された事が分かった。
【カマイタチ】
私がする事を分かったのか、虹輝天女は攻撃速度の速い攻撃魔法を私に放ってきた。
スピードアップが二重に掛かった『シャイニング・ウィング』なら避ける事は容易いかもしれない。それでも、虹輝天女自身に攻撃するには物足りない。
だから、私は『カマイタチ』をそのまま受けた。
「ッ!」
私は身体から『カマイタチ』が抜けて真っ二つになったかの様に思えたが、魔法服や保護のおかげでなんとか気絶する事は無かった。
そして、
【スピードアップ・ウィング!!!】
再び『シャイニング・ウィング』にスピードアップを掛けた。
莫大な魔力を消費して、今にでも『シャイニング・ウィング』は消滅しそうだった。
ただしその分、輝きが増し、大きくなった。
そして、私は、その翼を羽ばたかせ虹輝天女に向かって突撃した。
とてつもない重力を感じて全身に負担がかかっているのがわかる。
保護により、精神的なダメージに変換され今にでも気絶しそうだった。
それでも!私は負けたくない!
超加速な中で私は腰に刺してある魔器の剣を抜き、そのまま虹輝天女を斬った。
「見事です。反応出来ませんでした」
そして虹輝天女はその言葉と共に気絶した。
「魔力が枯渇しそうな貴女にここまで追い詰められるだなんて、まだまだでした・・」
私は気絶している虹輝天女にそう言ってそのまま、私は気絶しそうなりながらもあの男の元に向かった。
もっと時間をかけたり、うまい戦い方があったのかもしれない。
しかし、それでは駄目だったんだ。
催眠されている相手にはなんでも良かった。
でも、催眠していない相手に、それも魔力が枯渇寸前の相手に、あんな目を向けられたら、
私は私らしく正々堂々と戦いに行くしかなかった。
私は、黒曜剣士様と藍癒人魚姫さんに魅せられたのかも知らないですね。
あの二人も大概、無茶が好きですから。
そんな事を考えながら、男の元に向かうと、そこには気絶した男がいた。
そのすぐ先には日長直猪さんが立っていた。
どうやら、私よりも先に男の元にたどり着き、気絶させてくれたみたいですね。
そのおかげ、いえ、そのせいで虹輝天女は目を覚ましたのでしょう。
そう思っていると、日長直猪さんは倒れた。
「え?」
私は思わず、声を上げてしまう。
そして、私は何時の間にか私の後ろにいた何者かによって気絶させられるのでした。




