魔法高校の選ばれた4人
学園長と美雪と虹輝天女が操られて連れ去られた後に、襲撃後に直ちに撤退して今後の作戦を立てている教師棟に向かった。
そこでは、各学校の教師とそれぞれの異名持ちの生徒が集まっていた。
何故、俺たちの高校が狙われたのかはわからない。
どうせ狙うのなら、社会人の部の大会を狙えばいい。幾ら高校の生徒が強いと言えども、流石にその高校を卒業した社会人のほうが強い人に恵まれている。
あえて、高校を狙う理由はなんなのか。
確かに歳を取るにつれて魔法が使えなくなるこの界で、高校生の方が社会人よりも若いからその分長く魔法が使えるかもしれない。
とは言え、操られている生徒がやられてしまっては意味がない。
魔力が回復すればと言っていたあたりから何人でも催眠できる可能性が高い。
ならば先に社会人の魔法少女を催眠し、その後若手を催眠した方が効率的だ。
何故、高校生から先に催眠したか分からないが、いま考えることは、いかにしてあの催眠術の魔法を使う男を倒すかだ。
時間がたてば、魔力が回復して催眠術の魔法を使われてさらなる被害を受けてしまう。
あの学園長を従える事が出来るとなると、この学園にそれを防げる人はいるのだろうか。
魔力の無効化なども効かないだろうし、それを防ぐ防壁にしたってよほど強くなければならないだろう。
となれば一番良いのは魔力が無いときに戦うことだ。
そんな事が可能なのか。
実は可能なのだ。
先ほど俺が使った『ダスト』だが、細やかな魔力を基にして攻撃しているものだが、その魔力の塵が少しでも身についたら何処にいるかわかるというマーキング機能もついている。
殆どは無力化されたが、僅かにだが無効化されなかった物もあった。
さて、会議の結果だが、なんとも保守的というか、動く気がないというか。
学園長がいないから、纏まりが無いのはわかる。そして、あの学園長までもが操られているのだから慎重になるのもわかる。
だが、先ほどから聞いている限り堂々巡りして話が進んでいない。
挙句の果てに、催眠された魔法少女と催眠した男に逃げられたのは俺のせいにしている声まで上がってくる。
ああ・・、こいつらはもうダメだな。こいつらを纏めていた学園長がいない限りは少し力があるただのクズの集まりだ。
俺は会議室から出て、高校棟に向かう。
代表生徒以外は、それぞれ各自の教室にいるらしいので、俺は目当ての生徒のいる教室に向かった。
そして、それぞれの生徒を連れて、大会のあった会場まで行く。
俺が呼び出した生徒は3人。
一人目は、紅天寺 茜こと日長直猪。この大会まで、俺の指導を受けていた火の魔法使い。
二人目は、日陽谷 明日香こと光天翼麗。大会の二日目に俺と対戦した光の魔法使い。
三人目は、桜井 守こと緑宝守護。大会の二日目に茜と対戦した風の魔法使い。
それぞれが何故呼ばれてここにいるのか理由を考えているみたいだ。
「さて、いまから先ほど襲ってきた男に襲撃をかける」
「「「っ!」」」
俺の発言と共に驚く三人だが、思ったよりも驚いてないみたいだな。予想通りなところもあったのだろう。
「質問、いいですか?」
そして、光天翼麗が手を上げながら聞いてくる。それに俺は頷くと、
「教室棟での会議は終わったのですか?」
当然の疑問を聞いてきた。けど、それも想像しているだろ?
「堂々巡りで話にならない。そんなの待つ時間などない。だから、これより独断で奇襲をかける」
俺はそう答えて何故時間が無いのかを伝える。
時間が経過するとあの男の魔力が回復してしまう。魔力が回復すると、『ヒプノティズム』でさらなる犠牲者がでる。
そうなると相手の戦力があがり、こちらの戦力が下がる。
『ダスト』による魔力により、男達が転移した場所は特定された。その付近を魔力探知したところ感じ取れる魔力は4つ。
となるとその付近には先程の連れ去られていった魔法少女達とあの男しかいないわけで、それ以上の戦力はないと考えられる。
ならば、今叩くしかない。
それに俺の魔法による『トランジション』は、俺を含めて四人までしか一緒に転移することができない。
この場所は、あの男が使ったと思われる『トランジション』的な魔法のおかげで、その魔力の追って転移された場所に転移しやすいのだ。
そんな訳で、あいつらに勝てそうな三人をここに連れてきた訳だ。
「私に勝てるのでしょうか・・・」
そして、それを聞いた茜は自信なさげにそう呟く。
「優勝した美雪に勝つのは他の魔法少女では難しいかもしれない。だからこそ、茜じゃないと勝てないんだ。だから自信持て!」
美雪は、その知能によって大会に優勝までした実力を持つ。並大抵の力では勝てないかもしれない。
けれども、茜。お前はそれを吹き飛ばすほどの予想外という力を持っている。それに期待している。
だからこそ、あちらに行ったら茜は美雪と戦ってもらう。
そして、光天翼麗は虹輝天女と戦ってもらう。こいつは俺と対戦してなければ優勝候補になってもおかしくないほどの力を持っている。また、同じ白色の魔法少女として思うところもあるだろう。
そして、緑宝守護には俺の守りを任せる。おそらく、あの男は学園長に守られて出てこないだろう。そして学園長だが、俺一人では勝つのは厳しい。ただし最大の守りという保護があればそれも覆すことが出来るだろう。だからこそ緑宝守護と俺で学園長と戦うのだ。
最悪負けそうでも時間を引き延ばせれば問題ない。一人でも勝てば、あとは魔力のない男を倒すのは容易いだからだ。
それを説明して、皆頷いてくれた。
「では、行くか」
「「「はい!」」ですわ!」
俺の合図と共にお互いに手を繋ぎ円になる。
そして、俺はあの男が使った転移魔法の魔力の残り香を探りながらその先に魔力を流して、魔法を発動する。
【トランジション!】
そうして、俺たち四人は転移したのであった。




