魔法大会残り2人 決勝戦!『藍癒人魚姫』 対 『虹輝天女』
大会の最終日となり、決勝戦となった。
勝ち進んだのは、淡い水色の魔法少女・『藍色癒姫』だった異名が、昨日の戦いで『マーメイド・モード』をした事により『藍癒人魚姫』と呼ばれるようになった真白 美雪と、
もう一人は、シードであった純白の魔法少女『虹輝天女』こと、雨上 晴架さんである。この人は7種類の属性が使えるらしく、だからこそ全ての属性に抵抗を持たない純白の魔法服を着ているとのことらしい。
『藍癒人魚姫』っていう呼び名をもらったとはいえ、私の魔力だけでは戦場フィールドを水で一杯に出来ないから、『マーメイド・モード』は出来ないだろうし、なるべくしたくない。だって、あの格好は恥ずかしいから・・・
水の中でないと、あのモードは役に立たない。なにせ、腰より下が魚の尾びれのようになっているから、地上だと歩けなくて動けない。
今回の戦いは厳しいものになるに違いない。
何故ならば虹輝天女さんが、数種類の属性の魔法を使ってくるからだ。
今までの相手は、ほぼ一種類の属性の魔法しか使って来なかった為、対策しやすく、私の有利な状況に持っていけた訳だ。
しかし、今回は対策が取りにくく、作戦を立て辛い。
さて、どうしたものだろう。
いろいろ考えたものの、完璧とは言えない考えのまま、私と虹輝天女さんは対戦会場にて向かい合う。
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。この力で沢山の命を救う事を!】
そして、私は淡い水色の魔法少女に変身して、
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。多彩なこの世界をより多彩にする為に!】
雨上さんは純白の魔法少女に変身した。その姿は大会の2日目で蓮野さんと対戦した白の魔法少女は魔法剣士のような姿でしたが、それとは違い、こちらは純粋な魔法使いのような姿でした。
「良くここまで勝ち上がってきました。その力を尊重して最初から本気でいきます」
虹輝天女さんは、変身した後にそう私に言ってきた。
あー、うん。今までの相手は、私が下級ランクにいたから油断していたところもあると思うが、今回はそうは行かないみたいだ。
でも、ここまで来たら仕方ないよね。
「私も全力で行きます。よろしくお願いします!」
覚悟を決めて虹輝天女さんの目を見てそう返した。
「それでは、両者共に準備が出来たようなのでこれより対戦を開始します。数字の光が0になると共に始めてください」
そして、学園長の言葉と共に上空に数字が現れる。
最初から最後まで同じ言葉で通すんだなと思った。普通ここまで来たら労いの言葉とかあるだろうと思うのだけど・・・
とはいえ、そんな事を気にしていられない。今は、目の前の人との戦闘に集中しなければ。
そして数字が0になって決勝戦が開始された。
【エレクトリック・アロー】
そして戦闘が始まると同時に、手始めにと水属性の苦手だと思われている『エレクトリック・アロー』を放ってくる虹輝天女さん。
まず1種類目は電属性を使ってきたわけだ。
【ウォーター・ウォール】
私はいつかしたように『ウォーター・ウォール』を出して、電気が私に触れないようにする。
【ウィンドコール】
『ウォーター・ウォール』に『エレクトリック・アロー』が当たり、私が攻撃を受けてない事を確認した虹輝天女さんは、今度は初期魔法と呼ばれている風を発生させる魔法を使って私の方に風を送ってくる。
これだけでは大した威力はないけれども、おそらく次の魔法の威力を強くする為にあるのだろう。
そして、二種類目は風属性を使ってきたわけになる。
【ニード】
そちらが、次の魔法の準備をするのなら、こちらも魔力を練って準備をする。
【ファイアー・カノン】
虹輝天女さんは、火炎放射器の少し威力が落とした様な魔法を放ってきた。
それは、先程の風と組み合わさり、火力を増してこちらに向かってきた。
3種類目は風属性に相性の良い火属性。
【ウォーター・スプラッシュ】
私は練った魔力で『ウォーター・スプラッシュ』を発動する。以前のままなら、ただの泡を少し放つだけだったこの魔法も、今では泡が連発してかなりの速度で飛び出していく。その様子は泡のマシンガンと思えるほどになった。
『ウォーター・スプラッシュ』は始めは『ファイアー・カノン』に飲み込まれて消えていくものの、その多さに『ファイアー・カノン』が押され始めて、やがては『ウォーター・スプラッシュ』のみが残り、虹輝天女さんに襲いかかる。
【ストーン・ウォール】
純白の魔法少女は落ち着いて、『ストーン・ウォール』を作り出して、『ウォーター・スプラッシュ』の攻撃を防いだ。
石だけあって硬く、『ウォーター・スプラッシュ』が連発していても全く『ストーン・ウォール』を壊せそうにない。
【ストーンズ・ダスト】
それを見た虹輝天女さんは、これが私の弱点だとばかりに『ストーンズ・ダスト』、小石を勢い良く沢山こちらに向かってを放ってくる。
この二つが四種類目の魔法属性。これは土属性でなくて無属性になる。この世界には土属性は認定されていない。何故だかは分からないが、あくまでも土関連の魔法は無属性と言われているのだ。
以前に負けた試合で私は物理に弱いことは既に分かっていた。だからこそ、その対策を打つのが当然だ。
水は、液体だけではない。気体もあり、個体もある。
温度で変化していく、魔法でそれが出来ないわけが無い。
個体には個体を!
私は水を温度変化させる想像をしながら魔法を詠唱する。
【アイス・ウォール!】
そして、虹輝天女さんが使った事のない属性、水属性の上位属性と呼ばれている氷属性の『アイス・ウォール』を発動して、私の周囲は氷の壁に囲まれた。
『ストーンズ・ダスト』が『アイス・ウォール』に当たり、若干削れるものの全ての『ストーンズ・ダスト』を防ぎきった。
【ファイアー・カノン】
それを見た虹輝天女さんは、それではとばかりに、『ファイアー・カノン』を放って来て、こちらの『アイス・ウォール』を溶かして来ようとする。
【ウォーター・ウォール】
私もそれとばかりに、『アイス・ウォール』の前に『ウォーター・ウォール』を作り出して『ファイアー・カノン』に対抗する。
先ほど、『ウォーター・スプラッシュ』がたくさん蒸発したこともあり、湿度が上がっている事と、『ウィンドコール』により風を発生していない事により、『ファイアー・カノン』の威力が落ちていて、普通の『ウォーター・ウォール』だけでも余裕に耐え切れたみたいだ。
【カマイタチ】
虹輝天女さんは火では駄目だとばかりに風の魔法を使って来た。目では見えない斬撃が『ウォーター・ウォール』を切り裂き、そのまま『アイス・ウォール』にぶつかるが、途中まで切り裂き貫通はしなかったみたいだ。
【カマイタチ】
【カマイタチ】
【カマイタチ】
しかし、効果があったとばかりに連続して『カマイタチ』放ってくる虹輝天女さん。
たしかに、このままでしたら『アイス・ウォール』は壊れて『カマイタチ』が私に届いていたかもしれません。
ですが、残念です。氷は個体なんです。そして、私の本質は・・・
【リペア】
回復魔法です。
ほんの少しの魔力で発動した『リペア』により傷ついた『アイス・ウォール』は完璧に修復された。
『カマイタチ』がぶつかるも、『リペア』を維持する事によります、『アイス・ウォール』には全く傷がつかなかった。
さて、虹輝天女さんはこの『アイス・ウォール』をどうやって突破してくるのだろう。
火には水で、風や土には氷で対処する。雷は水に相性がいいと思いきや、私に届かないから意味ないし、ましてや、水に関しては私の方が得意だと思うから、発動してこないと思う。
これで全属性が対処できたかと思うが、そうではない。
「へえ、やっぱり簡単にはいかないですね。では次のステップに移りますね」
虹輝天女さんは私を見て笑顔でそんな事を言ってくる。
そして詠唱に入った。
【私の名前は雨上 晴架、その名の通り雨を上がらせ、晴れの架け橋となります。そしてその架け橋は虹色とし、今、その力を持って敵を討ちます!】
そして、虹輝天女さんはその声を叫んで、光に包まれる。
【レインボー・モード】
光に包まれた少女は、私が変身した時のように、光に包まれている時にその名称を叫んで、数秒後にその光が消えた。
純白の魔法服が、ふと見るとそのままだが、角度を変化させたり見方を変えて見ると七色に輝いて見える魔法服になり、純白の魔法少女から虹色の魔法少女となった。
そして、この姿が虹輝天女と呼ばれる所以だ。
さて、ここからが本番だ。さっきのはあくまでも普通の魔法少女に変身での本気であって、これからは『レインボー・モード』してからの本気なのだろう。
よりいっそう気を引き締めなければならない。
「さて、まずは・・・【ライト・レイ!】」
虹輝天女さんは、手始めとばかりに光の魔法を放ってくる。
これが、五種類目の光属性の魔法。
指から一直線に細い光の線がこちらに向かって来て、『アイス・ウォール』とぶつかる。
【リペア!】
私は即座に修復魔法をかけるが、
「えっ?」
『アイス・ウォール』の修復速度よりも、『ライト・レイ』が氷を溶かす方が早いみたいで、そのまま貫通して私を貫こうとしている。
「っ!」
咄嗟に避けて何とか回避できたものの、これはマズイ。
いくら修復しても、壊れるのが先ならば『アイス・ウォール』の後ろにいるだけでは蜂の巣にされて負けてしまう。
光ですか。
なら!
【ライト・レイ】
虹輝天女さんは、続けて同じ魔法を放ってくる。
私は『ライト・レイ』の通るであろう前方に向かって魔法を放つ。それは、
【リフレクション・スプラッシュ!】
光を全反射させる水泡をまだ完全に壊れていない氷の壁の前から『ライト・レイ』に向けて発動した。
鏡ほどでないにしても、水にだって角度を調整すれば光を反射することは可能だ。
だから魔力により反射力を調整する。そんな『リフレクション・スプラッシュ』に『ライト・レイ』が当たり、そのまま『ライト・レイ』は反射してあらぬ方向へ飛んでいった。
よし!成功みたいだ!
「やりますね。なら、【ダークネス・ワールド!】」
虹輝天女さんは、感心しながら次の魔法を放ってくる。
その魔法はフィールド全体を暗闇にするものだった。
そして、これが楽種類目の闇属性だ。
光属性と闇属性は七種類の基本級属性の中でも珍しいと言われている。
その影響か虹輝天女さんでも『レインボー・モード』になった時にしか使えないみたいだ。
だからこそ、対応が難しい魔法があるわけで、実際に今回も厳しいわけです。
因みに、私の使っている氷属性の魔法は水属性の昇華級属性で、茜さんが使っている炎属性は火属性の昇華級属性である。
普通級属性がそれぞれ進化したものが、昇華級属性と呼ばれている。
火属性は炎属性に、水属性は氷属性に、電属性は雷属性に、無属性は神属性に、光属性は時属性に、闇属性は死属性になると言われている。
その中の時属性は春さんがよく使っているものだ。ただでさえ珍しい光属性の昇華級属性なのだ。春さんの凄さがこれを見ても分かるわけだ。
さて、そんなわけで普通級属性でも珍しい闇属性を使われて、周囲が暗った影響で敵が見えなくなり、対応が遅れてしまうような状況になってしまった。
【リペア!】
【リフレクション・スプラッシュ!】
私の周りにあった壊れかけの『アイス・ウォール』を修復し、さらに『ライト・レイ』の対策として『リフレクション・スプラッシュ』をその周りに何個か漂わせる。
これで何が来ても対応できるはずです。
・・・
本当に?
わざと暗闇にして、私が引きこもるようにしたとしたならば・・
私が虹輝天女さんだとしたら・・・
これは、駄目だ!
大魔法を仕掛けてくる!
私は慌てて虹色の魔法少女がいると思う方向の『アイス・ウォール』を解く。
するとその先には七色に輝く玉があった。
火、水、風、電、光、闇、そしてどれにも該当しない無。
それはそれぞれが宙に浮いていて、真っ暗中に輝いているのがわかる。
ああ、これは『アイス・ウォール』なんかじゃ防げない。
そして、これこの魔法こそが『虹輝天女』の由来の大きな理由の一つでもある。側から見ると虹のように輝いていて、とても綺麗だ。しかし、受ける側としてはたまったものじゃない。
何故ならば一つの属性の攻撃力が一倍とするならば、七色のは七倍ではなく、それぞれが相乗効果を得て凡そ二十倍ほどになるからだ。
それは切り札となり得るだろう。
けれども、だからこそ!
知れ渡ってるほど強いからこそ対策を考えていた。
不安材料はあるけれども、それでもあれをやるしかない。
「さあ、ここまでです」
虹輝天女は、宣言してきた。
けれど、私は諦めない!
【生命の原初なる水よ。今、ひと時、その力をお貸しください】
私のその言葉と共に私は光に包まれて、
【マーメイド・モード!】
変身する。地上にもかかわらず人魚のような姿に。
もちろん、地上ではうまく立つことはできない。
しかし、このモードだからできることがある。
「なにを考えているかわかりませんけど、これで終わりです【レインボー・トレジャー!】」
よかった。『マーメイド・モード』になったにも関わらずに躊躇わずに放ってくれて。
不思議に思われて魔法を放たれなかったら、この作戦は破綻していたから。
私が思うに、その奥義とも思える『レインボー・トレジャー』はとても難しい魔法だ。
何故ならば、七属性全てを同時に扱い、それを混ぜあわせる。
すこしでも属性間のバランスが崩れれば恐らく不発するか、暴発する。
そう、この姿になったのはその中の一つの属性、
最後の七種類目の水属性を無理やり操作してバランスを崩させる事。
この姿なら、相手が使う魔法だって水属性ならば操れるはずだ。
実際に、その奥義の大きい魔力の中の水属性を感じ取れる。
ただ、バランスを崩したらなにが起きるかわからない。
なにも起きなければ私の負け。不発になったら、動けない状態の私では負けるだろう。暴発したら・・引き分けかな?
でも、やるしかないんだよね。
うん。頑張れ、私。
自身を勇気付けて魔法を発動する。
【ウォーター・コントロール!】
まだ虹輝天女さんの近くにある『レインボー・トレジャー』の中にある水属性を感じ取り、それを無理やり操作する。
「っ!」
流石に虹輝天女かんも気付いたようで、なんとか操作権を奪い返そうとしているけど、もう遅いです。
そして、
ドバンッ!!
という音と共に『レインボー・トレジャー』は大爆発した。
近くにいた虹輝天女さんを飲み込み、そしてすこし離れていた私も飲み込まれて・・
私は・・・
何故か気を失っていなかった。
よく分からない状況に私の周りを見ると水浸しになっていた。
もしかして、水の魔力だけがこちらに飛んできたってこと?
このモードの時には水は攻撃に判定されないってこと?
先程の『レインボー・トレジャー』を打ち破るためにしたのは想いを込めて手動でした事。
そして、今回の私の身を守るために水が私を守ってくれたのは、私の意思とは関係なく自動で水が操作されたのかな?・・・
あはは・・・、このモード、チートだ。
とはいえ、すぐにこのモードを解除しないと!
魔法を使いすぎて、枯渇寸前だ!
【モードカット】
【プロテクト・セット・スクールユニフォーム】
慌てて『マーメイド・モード』を解いて普通の学生服に変える。
これで一安心かな。
そして、落ち着いたところで気がついた。
虹輝天女さんは気絶してるんだよね?
っていうことは、私の勝ち?優勝!?
あはは!やった!
「勝者は真白 美雪さんに決定しました。優勝おめでとう御座います」
学園長先生の放送が流れて、私は蓮野さんの方をみて、微笑んだ。
やりましたよ!っていう思いを込めて。
蓮野さんは、頷いてくれて、元々嬉しかったのに更に嬉しくなった。
・・・
いえ、やっぱりそこまで嬉しくはないですよ?蓮野さんがうなづいてくれたからなんだというのですか。私はまだ蓮野さんの事、少し嫌いですからね!
とか心の中で言いながら、安心したところで、やはり魔力を使い過ぎてしまったのかそのまま気絶したのであった。




