悔しい思いを託して
淡い水色の魔法少女こと美雪さんと、暗い赤色の魔法少女こと六愛 唱夏さんの試合は六愛さんの勝利に終わりました。
私こと紅天寺 茜は、私と同じ属性を使っている六愛さんの戦い方に感動した。
私は攻撃ばかりで、敵を閉じ込めるなど考えたこともありませんでした。
あんなふうに『ファイアー・ウォール』で、敵を囲うことができるんですのね。
その後の沢山の『ヴォルケージ』をされたら、相手はもう何もできませんわ。
1つのものに沢山の魔力を使って火力を上げるのもいいですが、沢山のものを生み出すのもまたいいものです。
私も練習して数十個の『ファイアー・ボール』が1回の発動で放てるようになりましたので、今後の参考にさせていただきたいと思いますわ。
さて、試合が終わってから美雪さんが学園長先生を睨みつけたと思うと、こちらに向かって歩いてきました。
「ごめんなさい、負けました」
泣いたのか目が赤くなっています。そんな美雪さんを見て私は、
「謝らなくて結構ですわ!むしろ良く健闘したと思いますもの!一度は勝ったかと思ったくらいですわ!私も頑張ってきますから応援お願いしますわ!」
と元気付けるように美雪さんに言った。
「うん、ありがとう、もちろん応援するよ。だから、言っておきたいことがあるの」
「言いたいことですか?」
美雪さんは何かを決めた眼差しで私を見ながらそんな事を言って来て、私はどうしたのだろうと思い聞き返す。
「六愛さんは、学園長先生にアドバイスしてもらって、電属性を防ぐ魔器を持っていたみたいなの」
「えっ!どういうことですの?」
確かに、美雪さんが出したあの高火力の電属性の魔法を受けて、平然としてる六愛さんには驚きました。
これが、上級ランクの力なんですかと感心してました。
でも違いました。それが学園長先生からアドバイスを受けて持っていた魔器のお陰となると話は変わってきます。
「どうやら、学園長先生は私達に勝って欲しくないみたいで、私達が不利になるアドバイスをしているみたい」
「そんな事が・・・、あるのですのね・・」
確かに運良く電属性に対する魔器を持っているのはまずあり得ませんわ。
基本的に魔器は、1人に1つしか持てません。魔器が持つ特別な力場により、人体を巡って干渉しあって使えなくなってしまうのですわ。
中には力場同士がうまく組み合わさって、より発動が強くなるなんてものもありますが、そんなのは稀しかありませんわ。
そんな中に美雪さんが今まで使っていなかった電属性に対する魔器のみを持っているだなんて、そんなのありえませんわ。
誰かが美雪さんの情報を教えた。それを知っているのは私と美雪さんと蓮野さんくらいですわ。
その3人を除くと魔法実習室を監視している人は、残るは学園長先生くらいですわ。
本人が情報を流すとも思えないですし、蓮野さんも勝つ為に私達を特訓してくれていますのに、わざわざ情報を流すわけはありませんわ。
もちろん私もそんな事は言っていないですわ。
となると、あとは学園長先生のみに限られのですわ。
「だから、きっと次もそうだと思うから気を付けて」
「分かりましたわ、気を付けますわ!」
と言っても私ができるのはあくまでも火力押ししか出来ないのだが、それを知っておくに越したことはありませんわ。
そう思っていると、先ほどまで戦いが行われていた所が光り出した。
何が起こっているんですの?
数秒後に光が消えると、美雪さんが発生させた水や『ヴォルケージ』の残骸の岩が消えていました。
つまりはお二人が戦う前の状況に戻ったみたいです。これで火の魔法が発動しにくいなどの不利な状況も無くなるわけですわね。
「続いて紅天寺 茜さんと湖野一 葵さん前に出てきてください」
そうしてリセットされた戦場で私と相手の人はお互いに前に出ました。
相手の人はそこにいるのに、いないように感じるほど影がうすい人でした。
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。誰にも邪魔されない時を守るために・・・】
戦闘開始位置に着くと、その人はやる気無さそうな詠唱で魔法少女に変身しました。
変身後も眠たそうな雰囲気を纏っていて、服の見た目は色は暗い青色で、パジャマに似ている気するのは私の気のせいでしょうか?
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。数多の敵を倒す!この力で!】
そして、私も魔法少女に変身しました。
美雪さんの悔しさや、下級ランクの意地、そして何よりも黒色聖母様こと蓮野さんに鍛えてもらったという名誉の為に、今から貴女に勝ちます。
そう思いながら私は、暗い青色の魔法少女を睨みつける。
「はぁ・・・、どうでもいいから、早く終わらせよ・・・」
そんな思いとは裏腹に、暗い青色の魔法少女はそんなやる気のない事を言ってきた。
っな!
この人は馬鹿にしてるのですの?
「絶対に負けませんですのよ!」
「そう・・、頑張って・・・」
私が貴女には負けませんわと言っても、あくまでもやる気のない態度でした。
こんな人には絶対に負けませんわ!
どうぞ、私が勝つ所をご覧なさってて下さいな。
そう蓮野さんや美雪さんの事を思いながら、赤い魔法少女と暗い青色の魔法少女の戦いが始まったのであった。