淡い水色の魔法少女 対 暗い赤色の魔法少女 ①
学園長が言ってきた下級ランクと上級ランクの試合は、来週に魔法大会で使用される会場で行われることになった。
下級ランクの美雪と茜、立会いの俺と学園長、そして敵の上級ランクの二人がその会場で試合の準備をしている。
俺と学園長は立会い席にいて、準備が整ったのを確認して学園長は放送魔器で指示を出す。
「では、まずは真白 美雪さんと六愛 唱夏さん前に出てきて下さい」
美雪ともう一人の女性が出てきて、お互いに位置を確認し挨拶をした。
もう一人の女性は女性にしては身長は高く、髪の色は茶髪でセミロングだ。
お互いが軽く会釈をしてそれぞれが変身する。
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。この力で沢山の命を救う事を!】
片方は淡い水色の魔法少女に。
【私は願う、過去、未来、そして今を築く。敵を燃やし尽くし味方だけの世界を】
もう片方は暗い赤色の魔法少女に。
そうして戦闘が始まった。
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私こと真白 美雪は対戦相手の暗い赤色の魔法少女、六愛さんを見る。
その色は同じ赤でも茜さんよりも暗く、なんていうか怖いイメージがある。
でも、火に対してだったら何度か茜さんと模擬戦をしたから不利ってことはないはずだ。
そんなことを思ってると、
「貴女が黒色聖母様に魔法を教えてもらってる人なんだねー。狡いなー、私も教えて欲しいなー。だから手加減無しでいくから覚悟してねー」
暗い赤色の魔法少女はそんなことをいってきた。その言葉には黒いものを感じたけれど、
「はい、私も頑張りますから」
私は敢えて普通に返した。
蓮野さんは周りからの憧れの的であり、それの祝福を一身に浴びる私は、周りからの恨まれる。
そんなの分かりきっていたこと。だから、そんな人達に、私は蓮野さんに教えられたことを全て出すと決めた。
これが、貴女達の憧れる蓮野さんに、魔法を教えてもらった力なんだよと言えるように。
私は下級ランクだった、相手は上級ランクだろうが、そんなの関係ない。
私は出来ることを全て出すだけです。
「それでは開始して下さい」
そして学園長先生から開始の合図が出された。
【ウォーター・レイン】
【ヴォルケージ】
開始の合図と共にお互いに魔法を打ち合う。
私は『ウォーター・レイン』を暗い赤色の魔法少女に向かって放ち、暗い赤色の魔法少女は私に向かって『ヴォルケージ』という『ファイアー・ボール』の中心に岩があるような物を放ってきた。
『ヴォルケージ』が『ウォーター・レイン』の一部にぶつかって煙をたてて焼けるような赤色は無くなったけど、そのまま残った岩が勢いを落とさずにこちらに向かって飛んで来ている。
私はこのままではぶつかると思い素早く移動して、その岩を避ける。
あの勢いのままだったら普通の『ウォーター・ウォール』でも防げない。だから避けるしかなかったのだ。
ただ、こちらの『ウォーター・レイン』の一部も暗い赤色の魔法少女に当たったみたいで、
【リぺル】
『リぺル』をすかさず使い、暗い赤色の魔法少女についた水を弾いた。
けれどもその弾いた水もそうだし、『ウォーター・レイン』の一部も周りに水が飛び散って床に残っているのは確かで、そのことは私の一つの武器になるだろうか。
ただ『リぺル』の後にすかさず暗い赤色の魔法少女は、
【ヴォルケージ】
岩を防ぐ手段の無い私を見て、有効手段とばかりにその『ヴォルケージ』を連発してくる。
先程いたところには『ヴォルケージ』の残骸の岩が残ったままで、行く手を遮っていて、それが増え続ければ最終的には逃げ道を失って、その魔法を受けてしまうかもしれない。
それなら!
【ウォーター・レイン】
あえて同じ魔法をぶつけて『ヴォルケージ』をただの岩に変えて、それを避ける。
ただし横とか後ろとかでなく、斜め前に避けて暗い赤色の魔法少女に近づいていった。
【ヴォルケージ】
こちらが近づいていっても、暗い赤色の魔法少女はまた同じ魔法を使ってきて、
【ウォーター・レイン】
私も同じ魔法を使いながら斜め前に避けて暗い赤色の魔法少女に近づく。
【ファイアー・ウォール】
一定の所まで近づくとさすがに、私との接触を避けるために『ファイアー・ウォール』を使ってきた。
けど、それこそが私の狙いだった。
私は腰にある魔器を取り出した。
それは攻撃手段の少ない私の為に、蓮野さんが勧めてくれた魔器で、魔獣から取れた素材を使用したムチだった。
それをそのまま周囲の湿度で火力が多少弱くなった『ファイアー・ウォール』の奥にいる暗い赤色の魔法少女に向かって振るう。
だが鞭は『ファイアー・ウォール』にぶつかり焼けて壊れそうになる。
けど、私には、私らしいこの得意なこの魔法がある。
【リペア!】
そう、私の得意魔法、物体を修復するこの魔法。
一度ではまたすぐに焼き切れてしまうかもしれない。ならば二度と使えばいい。
二度でも駄目ならば、常時発動すれば良い。
常時発動することによって、この鞭はこの程度の火力の『ファイアー・ウォール』では壊れない最高の武器となる。
そうして壊れない、壊れても修復し続ける鞭は『ファイアー・ウォール』の奥にいた暗い赤色の魔法少女に触れた。
【ニード】
その瞬間に私はその鞭に出来るだけの魔力を込めた。
この鞭はただの鞭ではない、そう、魔器である。
魔力を込める事によりそれは発動する魔器。
そして、それは今、発動された。
鞭はバチバチッという音と火花をたてて、鞭の先に大きな電属性の攻撃を発生させた。
暗い赤色の魔法少女にその電属性の攻撃が当たり、私は一息ついたのだった。
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俺は美雪の戦いを見て、嬉しく思えた。
おそらく、俺が教える前だったら、そのまま放たれる岩に逃げ続けることしかできず、逃げ道が無くなって負けていたのだろう。
けど、今はどうだろう。
何度も『ヴォルケージ』に敵から見たらあまり意味がないと思える水魔法を当てて、うまく水を蒸発させると同時に、周囲を水だらけにしながら敵に近づいていく。
近づいてきたら敵は守りたくなり、『ファイアー・ウォール』を使うが、先程の攻防で湿度が多めで水が多いこの場所では火力が『ファイアー・ウォール』になる。
美雪は、その『ファイアー・ウォール』に魔力を流すと雷を発生させる魔器の鞭を振るった。
いくら火力が弱い『ファイアー・ウォール』といえども、美雪が持っているム鞭では暗い赤色の魔法少女に当たる前に焼けて無くなってしまうが、美雪の得意な回復魔法を維持し続けることによって壊れても復元し続ける鞭になって暗い赤色の魔法少女に当たった。
そしてその鞭に美雪の込められる最大の魔力をつぎ込んで、最大火力の電属性の攻撃を発生させた。
湿度が高いのと水が多い場所は火属性の火力を弱めるだけじゃなく、電属性の威力を高めることができる。
そう、またも先程の攻防で湿度が高くなり、水が多くなったこの場所で最大火力の電属性の攻撃。
その威力の高くなった最大火力の電属性の攻撃を、美雪は暗い赤色の魔法少女に当てたのだ。
それも、『ファイアー・ウォール』で守ったと思って安心したのと死角になって見えない所から予想外から来たのだからたまったものじゃないだろう。
「魔器の使用はありですよね?使用しちゃいけないなんてルールがなかったですから」
俺は念のために隣にいる学園長に聞いて見た。
もし、これでダメと言われたらそれだけでアウトだが、この学園長でもルールに無いことは覆さないだろう。
「ええ、もちろん、ありですよ」
そして、何故か学園長は和やかに一変の悔しさや焦りを見せずにそう言った。
なんだ?
暗い赤色の魔法少女が負けたのに何でそんなに笑ってられるんだ?
とりあえず、
「じゃあ、それで私の大会の出現は決定ですね」
とだけ言っておく事にした。
学園長に言うときは女の口調を特に心がけて話さないといけない。それに気をつけながら美雪の勝利を宣言する。
「まだ勝負は決まってないですよ」
けれど、俺の言葉に微笑みながらそう答える学園長。
あれだけのものを与えられたら、いくら上級ランクだろうと気絶するのが普通だ。
なのに、まだ決まってないだと?
そうして、再び会場を見てみた。
そしてわかった。
学園長が言っていた通り、まだ美雪と暗い赤色の魔法少女の勝負は決まっていないことに。