特訓開始!ニード獲得!
模擬戦が終わって、真白も起きて一息ついたということで、まず始めることはそれぞれの自己紹介だろうか。
「まずは貴方の名前は何でしょうか?」
という事で俺は、赤色の魔法少女の名前を聞いてみる事にした。
「はい!私の名前は、紅天寺 茜ですわ!」
紅天寺か、長いな・・たしかに見た目と苗字は合ってる気はするけれど、いちいち呼ぶのに長いのは面倒だな。
「わかった。これからは茜と呼びます」
「分かりましたわ!」
「え?」
茜は元気よく返事をしてくれた。
それと同時に淡い水色の魔法少女、ただし今は普通の学校制服を着たただの少女が、何故か反応してきた。
「何ですか?何か文句でもありますか?」
「いえ・・、文句では無いのですが、私が呼ばれるときは大体こいつとかお前だった気がしたのでつい・・」
ああ、そういえば、こいつを呼ぶときは大体が、こいつとかだった気がする。
「これからは教える人が二人になったから名前の真白と呼ぶことにします」
これで文句はないだろう?けれど、何か不満そうに小さくこんな事を口にしていた。
「紅天寺さんには、下の名前なのに・・・」
小さいから聞こえないとでも思ったか。少し魔力を耳に集中してやるだけで聴力が良くなる。
だから今回のこいつの言葉も俺にはきっちり届いた。
それにしても、名前の呼び方の上・下なんて気にする事無いだろうに・・
小さい事を気にするんだな。こいつは・・
「仕方ないですね。では、美雪と呼びますから、そんなに不満そうな顔をしないで下さい」
そんな事に不満を持たれて、これから先の特訓にまで響いたら溜まったものじゃない。
だから下の名前で呼ぶ事にした。
「え?あ、ありがとうございます!、あっ、でもやっぱりありがたくないかな?・・」
そして、始めは喜んでいたくせに、何故か否定し始めるこいつ。
まあ、でも今でも喜んでそうには見えるし美雪と呼ぶことにするか。
それで、これからの訓練を頑張ってくれるならそれでいい。
少しでも強くなって、上級ランクに勝ち、俺の大会の出場をさせてくれよ。
「では、特訓に移ります」
「はい!」
「分かりましたわ!」
そうして、特訓が始まった。
さて、まずはどの魔法使いにも強くなるには必要な事をしてもらうか。
魔法とはどのように使うか。
その答えに、魔法とは魔力を使って発動するもの。
それは正解だ。でもそれだけの答えでは、魔法使いとしては足りない。
魔法とは、自身にある魔力で火種を起こして、空気中にある魔力で爆発させて発動するもの。
自身の中に魔力が無ければ魔法は火種がなく発動しない。
空気中に魔力が無ければ、火種だけで爆発せずに魔法は発動し辛い。
では、魔力とは何か。
魔力とは、特殊な植物が光や水を吸収して、その作用により空気中に魔力を放出する。
人間にある魔力は、空気を体に取り入れた時に、その空気中に含まれる魔力を体に蓄える事によって、自身の魔力としている。
その魔力をどれだけ蓄えられるかと、どれだけ自身の魔力に変換できるかで、その人の魔力が決まってくる。
魔力を沢山蓄えられれば、それだけ魔法の火種は大きくなり、発動する時に威力が高くなる。
自身の魔力に変換しやすければ、それだけ自然魔力の回復力が高くなる。
ここで、変換と言っているが、変換先には属性や圧縮度といった複数の要素が含まれる。
その変換先によって、その人が得意な属性の魔法が変わっていったり、同じ魔力でも圧縮度が高ければ高いほど発動する魔法の威力が高くなっていったりする。
その蓄えられる量だったり、属性や圧縮度などは産まれたときからというのが基本だが、稀に成長につれて変わってきたりする。
他人に無理やり変えられるというのもあり、それが俺がしている一般人を無理やり魔法使いに変えると言ったのがそれだ。
そして、自身でもそれなりに日々の努力すれば変えられる。
その努力はもちろんしてもらうが、それだけではなく違うこともしてもらう。
それは、蓄えられる魔力の質を変えるのではなく、魔法を発動するときの火種を変えることだ。
基本的には蓄えている魔力をそのまま火種として魔法を発動する。
しかし、今回の模擬戦のように同じ『ファイアー・ボール』でも大きさが違ったりした。
それは魔力量の変化だったわけだが、人から瞬時的に放てる魔力の面積は決まっていて、その面積を超えると自身が耐えられずに怪我をする。
だから人が放てる魔法の最大威力は決まっている?
否だ。
魔力の面積が決まっていても、その魔力を圧縮すれば放つ面積が小さくなり、より多くの魔力を放つことができる。
体内で魔力を圧縮し、それを火種にすればより強い魔法が発動できる。
蓄えられる魔力自身を変化させるのは大変だが、蓄えられている魔力を魔法の発動する分だけ取り出して、それを変化するのは大して難しくない。
以上の事を説明して、それをしてもらう。
「えっと・・・、どうやって魔力を圧縮するのですか?」
だがそんな質問がきて、俺はため息をついた。
学校では、そんな初歩的なことも学ばないのか。
まあ、学ばないんだろうな。
学校では、あくまでも魔法の使い方、魔法の属性や種類しか学ばないのだろう。
それを教えたらあとは自己で学んでいけという風習なのだろう。
「自身の中にある魔力は感じ取れますか?」
「えっと・・・、なんとなくは・・・」
よかった。俺の言葉に美雪は自信なさげにも返事をしてくれた。これでわからないと言われたら、今までどうやって魔法を使っていたのかと思ってしまうところだった。
「申し訳無いのですが、分かりませんわ!」
だが、予想とは裏腹に茜は、自信満々にそう答えてきた。
「先ほどの戦闘での『ファイアー・ボール』の強弱はどうやってやっていたのですか?・・・」
『ファイアー・ボール』の強弱ができるなら、魔力を感じていてもおかしくないし、逆に感じていないにもかかわらずに発動できるほうがおかしい。
「それは!ずばり!」
「・・・」
何故そこで止まるのだろうか。
何かを期待しているなら間違えだぞ。
「イメージですわ!」
「・・・」
なるほど、こいつはバカだったんだな。
イメージだけで魔法の強弱、それも最大限までもを発動する事ができるなんて、普通は考えられない。
いや、先ほどので最大限ではないのか?
そうならば、やはり茜は逸材なのかもしれないな。
魔力の圧縮以前に、魔力を感じ取れないのは問題だが、逆にこのバカさならばできてしまうかもしれない。
ちょっと試してみるか。
「とりあえずは少しでも魔力を感じ取れる美雪からです。自分が魔法を使う時に使う魔力を感じ取りながら、その魔力を柔らく膨らんでいるパンをこねて小さくするようなイメージをしてみて下さい」
「柔らかいパンをこねて小さく・・・魔力をこねる・・・こねる・・」
俺がいった事を小さく復唱しながら自身の中にある魔力を感じ取っている美雪。そして、それをゆったりとした速度で操作している。
どうしてわかるかというと、目に魔力を集めれば周囲にある魔力を見る事だって可能で、それをしているだけだ。
【ニード・・】
そして、どうやら一度で上手くできたみたいだ。それも魔法の一つとして発動したみたいだな。
詠唱とともに発動すれば、以降も発動しやすくなる。
俺は自然にできすぎてやらなかった事だが、初心者にとっては、それがうまい方法かもしれないな。
「そのまま適当な魔法を使ってみて下さい」
「はい。【ウォーター・スプラッシュ】」
美雪の指先から先程の模擬戦でみたよりも大きい水の塊が発射された。
「ふわっ!」
そしてそのまま美雪は反動で、おかしな声をあげながら尻餅をついた。
ふむ、まあ始めだから仕方ないか。
美雪はいいとして、次は問題の茜か。
「次は茜ですね。まあ適当に好きなように頑張って下さい」
「はい!頑張りますわ!」
とりあえずはバカはバカらしく適当にやらせて見ようということで・・
そうして、問題の茜の魔力の圧縮が始まったのだった。