推理を全く『しない』話
推理ではなく推測するだけのおはなし
「で、次はなんの話をする?」
「そうだなぁ・・・俺が用意していたゲームのレベル1って現代の強さにするとどれくらいの話は、まさか数秒で終わると思って無かったし、即座に応えられるお前に感心して頭が回らないわ~」
「なら、このまま無言でも俺はいいぞ。もし無言になればすぐに帰るだけだし」
「いやっ、ちょっと待てよ!すぐに何か考えるからさ!あの・・・じゃあ、推理小説は好きか?」
「嫌いだな」
「えっ・・・?えっ!?お前、色々考えるの好きそうな癖してまさかの推理小説嫌い!?」
「あぁ、そうだぞ。小説読みながら頭を使うのめんどくさいし、特に科学的なトリックとか、実際にその知識がないと解くことか不可能な問題とか出されても知ったこっちゃ無いし、お堅い内容の物とか読んでてしんどい。まぁ、そうした小説もいつかは面白いと思える時期が来るだろうけど、今は全然興味がない」
「うおぉ・・・なんか、ショック受けた・・・って、だとしたら前に勧められた小説の中に推理小説があったよな?」
「あぁ、あったな。魔法が存在する世界で起こった殺人事件を解き明かす小説、あれの書き口が好きでお前に勧めたんだよ。
まぁ今回の事については俺の言い方が悪かったな・・・俺は基本的に推理小説を率先して読もうとは思わない。けどタイトルだけ見て興味を持てば手に取るときもあるし、読み始めてから推理小説だと知ったけどそれまでの流れが面白ければ普通に読む。
けど、推理するほど面白いのかどうかは別の話で、ストーリーが面白いか・推理も込みで面白いか。もしそこまで推理の証拠が上手く隠されていて面白いと思える内容なら推理するな。
もし答えが出た時に読者が知らなかった証拠が出てきたら冷めるだろうけど、僅かに証拠が散り散りに隠されていると分かれば正解見るまで犯人想像したりするぞ。
まぁそこまで考える事は稀だ。ゆえに率先して読むほど好きではないって意味なのだが」
「基本的に推理小説だと知って読まないって所か。まぁ、自分もそこまで読むわけでもないんだけどな・・・
でも、推理物の中には怪盗Xからの予告状で、その状況からどうやって盗むか!みたいな、アクション系もある作品もあるだろ?」
「犯人は数学か」
「怪盗X・Yは数学の擬人化ネタ…いや、それは関係無い。
そういったので、犯行予告が届いた!みたいなのがあるけど、現実に物を盗む際に出す奴っているのかな?」
「自らを泥棒では無く怪盗、怪しい盗人と名乗る地点で相当な自信家ナルシストだろうな。
物語の犯行予告の意味としては、盗みを働いた先に毎度高度なセキュリティーシステムを導入しているとか強い用心棒を雇っているから大丈夫よりも、警察と言う有象無象を出した方が動きが増える。
その怪盗専用の名物警察や特殊な能力を持つ使い捨て刑事の方がカッコいい怪盗だけより面白くなる。何より成功した時の凄さが際立つから。
そうした事情から出すのであって、現実でやる奴は滅多にいない。もし現実にいてもどうせすぐに捕まる、だから出さないのが普通。マスクや帽子で特定されない程甘くない…と思っているが、お前の意見は?」
「いや…もう、俺からは何も言えないわ」
「…なら、俺からの質問。殺された人が犯人が誰か伝えるためのタイイングメッセージの異常性って凄いと思わないか?」
「…いや、普通犯人の名前を書いたりイニシャル残したらバレた時にすぐに消される。だから暗号化して残すのであって異常では」
「じゃあ、今から俺はお前を殺す!そのあと俺はすぐに部屋を出て、二・三分後に死んだか確認に戻ってくる。それまでの間にダイイングメッセージを考えて、俺にメッセージを書いたことがバレず、問題の難易度としては幾つもの事件の犯人を暴いてきた奴がパッとみただけでは分からない程度のヤツを頼む」
「えっ、いや、無理!多分不意打ちで無く、殺される理由を言われながら刃物を向けられていたとしても、その間ずっと頭がパニックになってそんな問題考える余裕もないし、そんな問題、通常状態でも浮かばない!
…よっぽど頭良くて、殺されることを分かっている奴なら事前に仕込んでいるかもしれないけど、自分だけしか分からないのは持ってのほか。誰にでも分かると犯人がすぐに逃げ出してしまうから推理物にならない。
だから、変なメッセージがあった。でもこれがどうやって自分だと分からせる証拠になるのか悟らせない暗号を考えるより、真っ先に走馬灯が浮かぶな。」
「無駄に理解が早いな、手のひら返しも」
「でも…お前ならすぐに考えられる気もするけどな」
「まぁ…『山阿も』、とか?」
「…せめて俺の本名にしろ!答えわかんないけど、何となくそんな気がする!」
「お前の勘は凄いな。解読のヒントは…まぁ、言わなくて良いか」
自分が出されてもピンとこないし、答えを聞いてもピンとこないし、多分納得しない問題です。ちなみに二人のどちらかの名前が「山阿」でも、この先の登場人物予定が山阿でもありません。今後もこのふたり以外出ません。