出会いの季節 9.5 (幕間)
夕暮れ。はるか達が居なくなった室内は静寂を取り戻していた。
外がだんだんと暗くなり始める中、昴は昨日と同じく、由貴、圭一と向かい合う。
本当は、解散時に寮へ戻りたかった。しかし二人の視線が「残れ」と告げていたので、渋々残ったのだった。
「はるかちゃん達もやりますね。こんなに早く、昴と仲良くなるなんて」
最初に口を開いたのは、やはり由貴だった。
普段から笑顔の絶えない彼女だが、今日はより一層、楽しそうにしている。
何故か、とは聞かない。大体の返答は予想できたし、藪を突いても蛇が出るだけだ。
「そうだね。昴、どういう心境の変化だい?」
「……別に何も。あなた達には関係ありません」
それが虚勢だと自覚しつつも、昴は強いてぶっきらぼうな態度で由貴達に答える。
もちろん、旧知の二人を相手に突っぱねたところで何の効果もなかったが。
「そうですか。それで?」
短く問い返され、意味がわからず首を傾げる。
「それで、とは?」
「どうするんですか? 名前で呼んで欲しい、って自分から言いますか?」
からかうような調子を含んだ声に、昴は僅かに苛立ちを感じた。
「はるかちゃん達はとても良い子達ですけど、何も言わずに察して貰うのは難しいですよ」
けれど、由貴の指摘が正しいと理解もしていたので、何も言えなかった。
だから、敢えて答えず、拒絶の言葉を繰り返す。
「別に、あなた達には関係ありません」
「意地っ張り」
由貴がくすりと笑みをこぼし、圭一が苦笑する。
「まあ、それもいいさ。なるようになるよ、きっと」
それでも不思議と、昨日よりは三人での会話が楽になったように感じた。
それは、新しくできた『友達』のおかげなのか。
素直になれない少女には、良くわからなかった。




