最終目標(1)
東京より少し東に行ったところに大規模の埋め立て島が存在する。
名前は『祈伝島』。
さまざまな研究が進められたのち、この島で大規模な実験が行われていた。
『ネットワークシステム一体化計画』。通称『NSUP』。
簡単に説明すると、人間の脳にネットワークシステムを構築させることで人間の新たなる可能性や発展を生み出そうと言う
計画である。
全世界からの注目が日に日に高まっていくホットな国である。
基本的に注目度を集めるために安全な環境であることを売りにした街作りになっており、観光名所としても有名になるほどにもなっていた。
そして気軽に旅行できる為の格安のホテルの一室に一人の女はいた。
普段あまり使い慣れていないパソコンに悪戦苦闘しながら黙々と作業をしていた。
途中音声チャットの連絡が来るのに気付いて慌ててチャットを開く。
『調べものはすんだのかい?』
「今あんたのせいでせっかく作りかけたファイルが消え去った」
『それは八つ当たりでもしたいのかい?今のは完全に君のせいなんだと思うのだかね』
女はダルそうな顔をしていた。
「だいたいなんでこんな古いパソコンを使わなければならないのさ、祈伝島製のパソコンを使えばこんなファイルごとき5分もかからないってのによー」
長時間作業していた為かついつい愚痴を言ってしまったが、チャット相手はそんな質問予想の範疇だぞ的な雰囲気で返してくる。
『確かに祈伝島製は誰もがとても優秀すぎると言いたくなる代物だからな、言いたくなる気持ちはわからなくもないんだけど、ある噂として祈伝島製の電化製品なんかはデータをハッキングするウイルスが仕込まれているっていうのがあるらしくてハッキングされた情報が祈伝島のある機関に送り込まれているみたいなことを聞いたことがある』
「あくまで噂の話なんだろ?」
『たかが噂でも可能性の話だ、疑わしいものは使わないのが正しい、だいたいお前が後々やることは祈伝島には知らないほうが得なんだろ?』
話をしているうちにメールの受信ボックスが光っているのに女は気付き開いてみる。
『何か届いたみたいだね?』
「ただの資料写真よ、これにあんたの調べてきた資料を組み合わせてできあがりってわけさ」
『まったく感謝してほしいね、この資料をつくるのに何日徹夜したんだろうか、今度会ったらこれと同等の内容をもったものをおごってもらわないと』
その言葉に対して女は面倒くさそうにしながら、
「自主的に私の計画に頭を突っ込んできて何言ってるの、あんたにはぼろ雑巾になるまでこき使ってやるよ」
女はメールに送られてきた画像をファイルに移行しながらたんたんとと作業を進めていく。
「それに次に直接会うときは墓場の中かも知れないしね」
『ああ、じゃあこのあとは任せたぞ』
「任せておきなって、私たちの魔術の力ってやつを見せつけてあげるから」
ひっそりとしたホテルの一室で一人の女はゆっくりと始動し始めた。
◇
祈伝島は人工島としては世界最大規模の大きさを誇っている。
面積は琵琶湖丸々一個分といったところであり、五つの区画に分かれている。
その中で第三区画は『教育』を中心とした街づくりになっていて、平日の昼間は一番人工密度が高い場所とされる。
多くの住民は第三区画にある学校で『NSUP』に関する知識を得て社会で活躍していたりする。
そんな第三区画の端に建設されている学校に一人の少年が授業を受けていた。
「いいですか~?今回ダウンロードさせていくのは『自己修復機能』というものなんけれど、簡単に説明すると転んでケガしちゃったよ~っていうところがあっという間に治してしまうという素晴らしい機能だということですよ、そもそも『自己修復機能』は第二機能の分類に別れていて……っていつまで寝ているんですよー!登坂くん!」
先生が投げた電子モニターが勢いよく登坂と言う少年の頭にガンッ!と音を立てて直撃する。
「ぐああああ!今この瞬間どっかの生物が滅びた!」
「ほら寝ぼけないでしっかり授業を聞いてくださいよ~、『完全記憶機能』がついているとはいっても寝ていたら意味がないのですよ」
「俺には『睡眠学習機能』がついているので大丈夫だから」
と一人の少年、登坂落下は目を少しこすり再び寝ようとするが、
「先生はそんな機能が登坂くんについてないことはご存知なんですよピストル!」
先生が投げたチョークが登坂の脳天にぶち当たり登坂は再び叫び声をあげてしまう。
「先生は『射的補正機能』がついているからこれぐらい朝飯前なのですよ、さあ!先生の目の前で堂々と寝てた理由を10文字以内で答えるのですよ!」
「無理です!」
「じゃあ30文字以内で」
「それよりなんでクラスに俺一人しかいないんですか?」
「24文字だから許すよ!」
登坂は一瞬なんでこの先生はクラスの担任なのか疑問に思った 。
「それよりなんでこのクラスに俺一人しかいないんですかと聞いているんですけど?」
それを聞いた先生がフッと小鼻で笑いながら言う。
「だって登坂くんこの島の中ではかなりカスのほうなのですよ?当たり前ですよ?」
「え?もう少し分かりやすく説明おねがいします」
「登坂くんはこの島に来てまだあまり時期がたってないのだからわからないのかも知れませんが、登坂くんはかなりバージョンが古いソフトをインストールしたいるんですよ、今の時代古いソフトなんか誰もインストールなんかしませんよ」
さらに先生は続けて、
「この学校の存在目的はですね、最新バージョンができたときに新しくできた機能を教える場所なんですよ、登坂くんみたいに基礎機能をダウンロードする個数が大量にあるっていう人は普段いないので今回は特別扱いという意味でこんな形をとっているのですよ」
それを聞いた登坂は少し疑問に思うことがあった。
「このソフトってどのくらい古いんですか?」
「かなりですよ」
「かなりっていうとどのくらいっていうのを例えてみれば?」
「そうですね~、5年前の一発屋のネタを絶対にウケると思ってやってしまうレベルですよ」
「じゃあこの島に来る前このソフトを薦めてきた人たちって…」
「やられちゃいまいたね、それは昔流行りの『ソフトソフト詐欺』ですよ、最新型のバージョンだと言って古いバージョンを高額に押し付ける手口ですよ、今の時代に引っ掛かる人がいたんですね~って登坂くんはどこ行くのですよ~!?まだ授業は終わってないのですよー!?」
登坂はせっせ学校の荷物をカバンにまとめて教室から出ようとしていた。
「とりあえず騙した奴らをしばき倒してやろうと思いまして、」
「そんなのは全然理由になっていませんよ、授業を抜け出してまでなんで行く必要があるんですよ~!」
「いざ気になったらすぐ行動に出る性格なもので、なので早退しまーす!」
先生の言葉もさておき登坂は教室を出ようとしたが、突然右手が急に重くなって動かなくなる。
「えーと…先生なぜか右手が重くなったような気がするのですけど」
先生はにっこりスマイルをしながら言う。
「へぇーそうなんですのー」
「あと手首に手錠っぽいのが繋がっているんですけど」
「確かに手錠に見えそうで見えなくもないですよ」
すると先生の袖口から大量の手錠がじゃらりという音とともに出てきた。
先生が複数の手錠を投げると登坂の残り手足にガッチリとかかった。
先生は未だスマイルをし続けながら言う。
「私の授業を途中で抜け出そうなんて何考えているんですよ、しっかり最後まで付き合いするのですよ」
登坂は完全に手錠によって拘束されたため完全に動揺していた。
「あれ?何だか先生はキャラが崩壊しているような気がするのだけれど?」
「先生は語尾に『ですよ』がつくことでそれなりにキャラができているのですよ、その程度のことでぶれるはずがないのですよ」 「先生は語尾に『ですよ』がつくことでそれなりにキャラができているのですよ、その程度のことでぶれるはずがないのですよ」
さらに先生は続けて、
「私がロリータ系38歳独身でも全然キャラがぶれてないですよ」
「いやもう『ですよ』でカバーできる範囲を等の昔に越えちゃってるううううう!!」
その言葉のあと、学校中に叫び声が響き渡ったという、