序章 狂乱少女の末路の前
-12月10日-
(またやってしまった…)
胸の辺りの熱が急激に圧縮されて息ができなくなりそうになる。
自分では望んでいたものが手に入ったと確信したつもりだった。けど、今目にしてしまったそれを見てしまうと、本当は違うのではないかと自分を疑ってしまう。
少し考えてみれば気づく筈だろう、しかしできない。
いつしか左手についていた生暖かい感触なんか気にしなくなっていた。
(…寒いなぁ)
12月に入ってから初めてそう思ったかもしれない。汗をかいたからだろう、あんなに楽しかったんだ、少しはしゃぎ過ぎたんだ。そう本心から思ったのに違ってしまった。きっと、もっと別の意味だ。
空を見るとなんだか全てを忘れてしまってもいいような気がした。
二年前のこと、半年前のこと、一ヶ月前のこと、そして今日のこと。
「なんであんなこと願ったりしたんだろうな。」
つい口に出してしまった一言。
そして気付く。
-私はこの手で愛する人を殺した-