6話 死守護者
本部の中はなかなか未来的な感じで設備も充実している。優斗が抱いた理想世界そのものであり、期待に胸が踊った。
「まずはデッドガーディアンズのリーダーと会うぞ。登録をしなければ戦いには参加できないからな」
アリアがカードをかざすと扉が開いた。部屋の中では一人の男が座っていた。
50歳ぐらいだろうか。灰色の髪はオールバックで、顔にはシワがいくつか刻まれている。しかし体つきはよく、見た目は歴戦の格闘家といった感じだった。
彼は優斗の姿を確認するといきなり立ち上がり、歩み寄ってきた。
「君が優斗君だね? 私は剛力一馬だ。デッドガーディアンズのリーダーを務めている」
見た目とは違い丁寧な対応だ。差し出され手を握り返し上下に振る。満足げにうなずいた彼は再び話し始めた。
「まず君には戦闘訓練を行ってもらいたい。実力はあらかた把握しているが、実際にデータがあった方が作戦を練るときにやりやすいだろう」
「すいませんリーダー」
「なんだいアリア? 今は話の途中なんだがね」
「彼にはまだデッドガーディアンズに所属するかを聞いていません」
「なんだ、そんなことか。彼の目を見ればわかるだろう」
アリアは優斗の目を見つめると納得したように頷いた。
知らないうちに話が進んでいるみたいだが、優斗としてもこの組織に所属して戦うのは賛成だった。自分の力を正しく使えるように導いてくれる存在はありがたいし、何より今は咲を守らなければならないので彼らの助けが必要だろう。
「アリア、彼の戦闘訓練を見てもらってもいいかね?」
「わかりましたリーダー」
そういうとアリアは優斗についてくるように言い、歩き出した。
「ここが戦闘訓練所だ」
アリアに連れられて到着した場所は、四角い部屋だった。特にこれというものもない。
「優斗にはここで訓練をしてもらう。準備に多少時間がかかるから、ストレッチでもしてるといいだろう」
そう言うと、アリアは優斗一人だけを戦闘訓練所に残して去っていった。
仕方がないのでストレッチを始める。腕からもも、ふくらはぎまで念入りにストレッチを行う。一通り終えた辺りでアリアの声が聞こえた。
「今から訓練を始める。こちらが危険だと判断した場合は強制終了させるから、心配は要らないぞ」
アリアが「訓練プログラム起動」と言うと、優斗の目の前に人形のような何かが出てきた。
白色のそれの見た目は鎧のような感じで、ロボットに近い感じだった。
ロボットはこちらを視認すると敵と捉えたようだ。右手を振り上げながら走ってくる。速さはたいしたことないようだ。
イメージトレーニングを思い出す。体に雷を宿して殴りかかる感覚だ。拳に力を入れるが、何も起こらない。
「あれ……?」
言葉を発すると同時に腹を殴り付けられて吹き飛ぶ。痛みをこらえつつ再び立ち上がると、すでにロボットは攻撃の構えをとっていた。
「くそっ! 何で出てこないんだよ」
体に力が溢れてくるが、まだ足りない。雷を宿すにはまだ難しいのかもしれないと弱気に考えてしまう。
敵の攻撃を交わしながら、雷が宿るようにイメージする。荒れ狂う雷は他を圧倒する。邪魔をするものを蹴散らして、情けの欠片も持たずに破壊の限りを尽くす。これが俺の理想。
イメージがうまくいったのか、両手両足に雷が宿る。身体中に力がわいてきて、気分が高まっていくのがわかる。
再びロボットが手を振り上げて迫ってくる。しかし、雷を宿した優斗に追い付けるはずもなく、空振りをしてしまう。
その隙を待っていたと言わんばかりに、優斗は攻撃を仕掛ける。華麗にステップを刻みながらロボットの背後に回りこみ、背中に拳を叩きつける。轟音を上げながら雷が炸裂すると、ロボットはポリゴンになって消えていった。
「初めてにしては上出来だ。まだ続けるか?」
「もちろん!」
再び構えると今度は2体のロボットが現れた。片方は棒を持っており、もう片方は大きな盾を持っている。
コンビネーションが厄介だと考えて、優斗は大盾を持つほうにタックルを決めて弾き飛ばすと、棒を持った方に殴りかかる。素手で戦うメリットは、武器を装備するより手数が多いことだ。しかしリーチが短いというデメリットも同時に発生してしまうため、相当うまく立ち回らなければならない。
横に凪ぎ払われた棒を左手を犠牲にすることで防ぐ。左手には、鈍い衝撃が走るが、痛みを気にする暇は無い。そのまま間合いを詰めて、脇腹に拳を叩き込むと、雷が爆散した。
棒を持った方がポリゴンになって四散したので、大盾を持つ方に向き直る。すでに体勢を整えているようで、こちらに向かって突進してきた。
右手に全集中力を注ぎ込むと、それに反応するかのように轟音を上げる。それを大盾持ちに叩きつけようとすると、盾で防がれた。しかし、優斗の拳はその盾をまるで無かったかのように貫き、ロボットを貫いて爆散させた。
はじめて味わう戦闘の快感に、優斗はすでに虜になっていた。
「今日はもうこれくらいでいいだろう。次は本部内を案内しよう」
アリアに言われ、訓練室を出る。戦闘の余韻に浸りながら、優斗はアリアについていくのだった。
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