表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/75

5話 平行世界

やっと物語が始まった気がします

 寒気が引いてくると、体が自由になった。体の動きを確認していると不意に声をかけられた。

 「ようやく起きたか」

 声の主を見る。青い髪は腰ぐらいまで伸びており、不敵な表情を浮かべるその目は軽くつり上がっている。何より気にするべき点は、その格好だ。体にぴったりと張り付いた服に所々装甲がついている。まるで戦闘服のようだ。

 「ここは……」

 体を起き上がらせるとすぐに異変に気づいた。腕から手にかけて金属製の装甲がついている。特に手の装甲は丈夫そうで、軽く床を叩くとアスファルトが砕ける。

 「驚いてるようだな」

 「そりゃあ驚くだろ! 死んだと思ってたらいつの間にかこんな服装になって生き返ってるし、第一、ここはどこなんだ?」

 「それは全て説明しよう。だがその前に場所を変えるぞ」

 そう言って女は歩き出した。優斗も歩こうとしたが、体がどうも軽い。歩く度にバランスを崩してしまい、うまく歩けない。

 それを見ていた女が笑いながら近づいてきた。

 「初期設定が狂っているな。どれ、見てやろう」

 優斗の前に立ったかと思うと、顔を近づけてきた。急な接近に戸惑っているが、動けない。妖艶な眼差しで見つめられて動けないのだ。

 彼女は優斗の首に手を回し、優斗の額に自分の額を重ねる。

 「オート操作にしては固いな。パワー制御の主導権をこいつに移すか」

 彼女の吐息がかかる。今まで生きてきたが、こんなラノベみたいな体験ははじめてだ。髪からは甘い香りが漂ってくる。

 「これで大丈夫だろう。少し動いてみろ」

 歩いてみると、体は軽いままだが動きやすくなった。歩いているうちに体のバランス操作に慣れてきて、歩くくらいの動作は平気になった。

 「大丈夫そうだな。そろそろ行くぞ」

 再び歩き出す。よく見てみると、辺りは廃墟だった。しかも、見覚えのある景色だからこそ不気味に感じる。

 「なあ、ここはどこなんだ?」

 「ここはな、お前たちが住んでいた世界の平行世界だ」

 「平行世界?」

 「ああ、この世界と向こうの世界は繋がっていてな。こちらの世界から一方的に向こうの世界に干渉できるんだ」

 世界に干渉できるということは、運命を変えることが出来るのだろうか。生物の生死を操作するようなことも……

 「そして、こちらの世界から悪いように干渉をしようとする組織がある。彼らはイーターと呼ばれている」

 「悪いように干渉ってことは、そいつらが及ぼした影響が向こうの世界にすでにあるのか?」

 「ああ、そうだ。そして、お前もそのせいで死んだ」

 俺の運命が書き換えられたのか。おそらくあの寒気がそれだったのだろう。

 「ちょっと待ってくれ、じゃあなんで俺は生きてるんだ? 死んだなら消えてなくなるはずだろう」

 「私の勝手ながら、君の実力を見込んでこちらの世界に引き込ませてもらった」

 「俺を見込んで……?」

 ということは、優斗に戦う才能があるということだろうか。しかし、戦闘に近いものを行った記憶はない。喧嘩すらほとんどしない優斗からどうやって実力を見込むことが出来るのだろうか。

 「君はイメージトレーニングをよく行っていただろう。その戦い方が実に魅力的だったんだ」

 確かにイメージトレーニングはよくやっていた。通学中、授業中、帰宅中、睡眠前と暇なときは全てイメージトレーニングに使っていた気がする。

 「てことは、俺はイメージトレーニングのときみたいに戦えるのか?」

 「もちろんだ。ある程度力を制御するために練習は必要かもしれないがな」

 夢にまで見た戦いの世界。浩介が聞いたら何て言うだろうか。咲にも俺の勇姿を見せてやりたいな。

 「そうだ、あの後俺が死んだ場所ではどうなったんだ?」

 「君の友達のことが心配なようだな。確かに今の状態だと危ないかもしれないな」

 「咲が危ないってどういうことなんだ? もしかして咲も狙われているのか?」

 「ああ、今はかなり狙われやすい状態にあるな」

 狙われやすい状態っていうのはどういうことなんだろうか。

 「今の彼女は君を失ったことで絶望している。その絶望がイーターは大好物なんだ」

 「そんな……」

 咲の絶望は計り知れないだろう。目の前で死ぬ姿を見せつけられたらどれだけ辛いことか。もし逆の立場だったら、俺は耐えられないだろう。

 「安心しろ、だからこそ我々がいるんだ」

 彼女は自信満々に言う。

 「そういえば、お前たちは何者なんだ?」

 「私たちか? 私たちはデッドガーディアンズと呼ばれている。主にイーターの殲滅活動をしているのだ」

 「デッドガーディアンズ……」




 その後も色々と説明を受けて、優斗なりに解釈をしてみた。

 この世界には二つの勢力があり、片方はデッドガーディアンズと呼ばれる組織で、主にこの世界の監視をしている。

 デッドガーディアンズは優斗のもといた世界を守り、イーターをこの世界から殲滅するために活動をしている。向こうの世界を守る理由は単純で、イーターの勢力を押さえるためだ。人の魂を食べたイーターは成長しより強力な力を得る。しかし、弱いうちのイーターは絶望している人でなければ食べることはできない。

 デッドガーディアンズは双方の世界を自由に行き来できるが、向こうの世界にいる間だけ時間が制限される。故にイーターが確認されない限りはこちらの平行世界に身を置くのだ。

 こちらの世界にもイーターはいるが、よほどのことがない限り攻撃を仕掛けては来ない。今のところはこちらの世界での目立った戦闘は無いようだ。

 そして、デッドガーディアンズにはそれぞれ力が与えられる。彼らが生前に欲していた力がそのまま反映され、コンバットスーツとして形になるのだ。

 スーツの形状はさまざまで、その装備者の戦闘スタイルに合わせられるのだ。優斗の場合は近接格闘のために手足に装甲がついており、他は急所を守るような最低限の装甲しかない。




 「着いたぞ」

 声をかけられ顔を上げると、そこには扉があった。自動で開いたかと思うとエレベーターだった。

 「そういえば自己紹介がまだだったな。私はアリア・ルーインだ。気軽にアリアと呼んでくれ」

 アリアは笑顔でこちらに自己紹介をした。

 「そしてここが、デッドガーディアンズの本部だ」

 優斗は驚いた。なぜならそこには、優斗やアリアと同じようなスーツを身につけた人たちがたくさんいたからだ。


感想などありましたらお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ