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4話 これが現実

再び本日投稿です

 いつもどおりの帰り道。しかし、いつもと違うところもある。それは、咲と一緒に帰っていることである。

 いつもなら咲は部活があるために一緒に帰ることはないのだが、今日は何故か部活がなくなったらしい。

 「ねえ優斗、今日はちょっと寄り道していかない?」

 「そうだな。俺も暇だし、付き合うよ」

 家に帰っても誰もいないし、たまには咲に付き合ってもいいだろう。

 「じゃあさ、行きたいところがあるんだけど、いいかな?」

 「ああ、場所は咲に任せるよ」

 特にいい場所も思い付かなかったので咲に任せる。買い物かなんかにでも行くのだろう。

 安易にそう考えた優斗は、後で後悔することになる。




 「ここってまさか……」

 予想だにしない場所に戸惑う。なぜならここは……

 「そう、鯉公園だよ」

 鯉公園とは、優斗の住む町ではかなり有名なデートスポットである。あたりを見回してもカップルしか居らず、人前だというのに普通にキスまでしている。

 なぜこうなったのか考えてみた。確か、二人でどこかに遊びに行く話になった。しかし、二人はあまり小遣いを持っていなかったためにお金がかかるところは無理だと言う結論に至った。歩きながら考えていると、いつの間にかこの公園に着いてしまい、咲とここでジュースを飲みながら話すことになったのだ。

 横では咲が、「やっぱこれだよね!」と言いながらメロンソーダを飲んでいる。

 「なあ、咲」

 「ん、なに?」

 「この場所だとさすがに気まずいんだけど……」

 「私は別に平気だよ? 優斗が意識しすぎなんだけだよ」

 痛いところを突いてくる。浩介と学校で話したこともあり、いつも以上に異性として意識してしまう。

 咲は容姿もよく性格もいいため、普通にモテる部類に入るだろう。成績が悪いと言う欠点はあるが、彼女の性格を考えると納得してしまう。

 気まずい空気を払いたいが、まるで誘っているかのように咲は話を振ってくる。

 今浩介に聞かれたら、間違いなくフラグだらけだと答える自信がある。それぐらい、今日の咲は積極的だった。

 「ねえ優斗。私たちもカップルに見えるかな?」

 「ぶはっ! ごほごほっ」

 「ちょ、優斗。ジュースがもったいないよ」

 拷問のように続く咲の言葉を必死に避けているといつの間にか日が赤く染まっていた。

 「そろそろ帰るか」

 「うん、そうだね」

 公園から出て家に向かう。思えば、こんなに長く咲と話したのは久しぶりな気がする。

 「手を繋いでも、いいかな?」

 咲が手を差し出しながら尋ねてくる。夕日しのせいかもしれないが、咲の頬が赤く染まっているような気がした。

 「別に、いいよ」

 ぎこちなく手を差し出し、咲の手を握る。細くて頼りない手だが、心地よい暖かさで優斗の手を握り返してくる。

 久々に二人で帰る道はすぐに終わってしまいそうな気がした。




 二人は横断歩道を渡っていた。突然の轟音と共に、いくつもの鉄パイプが飛んでくる。トラックの積荷の鉄パイプらしい。止め具が外れてしまったせいで二台から転がり落ちてくる。

 そんな状況において、優斗のやるべきことはひとつだった。

 「ちょ、優……」

 咲の手を繋いでいたのが幸いだった。力を込めて咲を投げ飛ばすと、優斗は運命を受け入れた。目の前には死が迫っている。

 いくつもの音が優斗を貫いては去っていく。景色は赤く染まり、苦痛を感じつつもそれ以上に満足感があった。


――超能力じゃないけど、アニメみたいな活躍は出来るもんだな。


 今までイメージトレーニングをしてきたおかげで、咲を助けることが出来たのだ。これほどの活躍をしたのだから、悔いは無かった。

 咲が走り寄ってきて泣き叫ぶ。必死に俺の手を握ってくるが、すでに感覚が麻痺している手は、もうその暖かみを感じることは出来なかった。

 体が冷たくなってくるという表現はよく聞くが、正しいかもしれない。しかし、少しだけ違った。冷えたと思っていた体がポリゴン状になって消えていく。

 弾けて舞っては消えていく。ゲームじゃあるまいし、なんでこんなことが。

 しかし、思考を完了する前に体は消え去ってしまった。意識だけが残り、どこかへ飛ばされていく感じがする。

 優斗が消え去った後、咲はただひたすら泣き続けていた。


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